増田勇一のライヴ日記 年末七番勝負(3)2007年12月26日(水)JACK IN THE BOX 2007@東京・日本武道館

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「盆と正月がいっぺんに来たような」という日本特有の言い回しがあるが、まさかクリスマスの翌日がそんな騒ぎになろうとは。しかも、従来の<天嘉>から<JACK IN THE BOX>に呼称の変わった今回のイベントは、単なるお祭りの域を超えた実に意義深いものとなった。

すでにそこで何が起こったかについては、あちこちで語られ始めていることだろう。15時の開演から約6時間半の間にステージ上に登場したのは、9組のバンドと、6組の“その夜かぎり”のセッション・ユニット。しかもそのセッションには、掟破りと言ったほうが相応しいほどにアソビゴコロが満載だった。

なにしろhydeの音頭取りで実現したのは、GLAYからTERUとTAKUROを迎えての“持ち歌交換”的ステージ。ある意味、歌謡番組全盛の時代を思わせる趣向だったが、TVでは観られないものを味わえるのがライヴなのだと改めて感じさせられた。同様に、EARTHSHAKERのSHARAと44 MAGNUMのJIMMYという信じられない顔合わせのツイン・ギターを従えて、あのkenがホワイトスネイクとフォール・アウト・ボーイのカヴァーを披露したステージも強烈だったし、最後の最後、出演者総登場のステージ上、yukihiroのドラミングで44 MAGNUMの名曲「I JUST CAN’T TAKE ANYMORE」が演奏された場面では、楽しいのに涙が溢れてきた。歌うのはもちろん44 MAGNUMのPAUL。終盤には彼とhydeがひとつのマイクで歌う場面も見られた。

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だが僕は、そうした「貴重なものが観られた」という次元での興奮について「意義深い」と感じたわけではない。ジャンルも世代も異なるアーティストたちがひとつのイベントのなかで共存し、化学反応どころではないマジックを起こしてしまった事実に感銘を受けたのだ。前述のようなさまざまな“顔合わせ”も奇跡的だが、それ以前に、たとえばムックとシドが同じステージに立つこと自体がもはや“普通”ではないし、ギルガメッシュとEARTHSHAKERとacid androidが一度に観られるなんて、あり得ないことだ。

結局、越境参戦したGLAYの2人も含め、すべての出演者に共通しているのは、誰もが“今”を生きているということ。そんなシンプルな現実に、僕は、ようやく日本でも本当にロックが根づいてきたのかもしれない、と感じた。普段から、「エアロスミスもレディオヘッドもアヴェンジド・セヴンフォールドも、みんなひとつの“ロック”でいいじゃん」と考えている僕としては、それと同次元のことが目の前で実証されているのを観ているような気分だった。ぶっちゃけ、基本的には“祭り”であるはずのこのイベントにそこまでの濃密な意味性など期待していなかったから、なおさらその事実に重みを感じさせられることになった。

忘年会を兼ねた打ち上げの席では、そんな異世代アーティストたちが膝を突き合わせながら話し込んでいた。なんだかとてもいい風景だった。これからもっとアタリマエのようにこんな光景を目にしたい、と思った。

増田勇一
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