KOTOKO、ダークでヘヴィな映画主題歌「リアル鬼ごっこ」インタビュー

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――まず、映画「リアル鬼ごっこ」の主題歌を歌うことが決まったときの感想から、教えてもらえますか?

KOTOKO:本当に嬉しかったです! 元々かなりの映画好きなので、“いつか映画に関わりたいな”っていう夢は、ずっと抱いてたんですよ。しかも、このタイプの映画は割と好きなジャンルだし、もう先走って原作の小説を買いに本屋さんへ走りました(笑)。

――“自分以外の佐藤姓はいらない”と言って王が放った鬼に、全国の“佐藤”姓の人々が命を狙われる、という物語ですよね。

KOTOKO:はい。着眼点が面白くてインパクトが凄い話だな、って思いました。ただ、映画主題歌ということで早目に制作しなくてはならず、この曲も実は1年以上前に出来上がっていたんですよ。

――え、そんなに早く!

KOTOKO:だから、まだシナリオも無い状態での制作だったんですけど、高瀬さんの曲に何かが迫ってくる怖さみたいなものがバッチリ出ていて。“これで良い歌詞を書けば絶対OKだ”っていう手応えが、曲を貰った時点であったんですよ。最初は鬼に対して逃げ惑う……っていう人間の弱い面を描いているけれど、何かのキッカケで立ち向かうほうへと意識が変わっていく。そんな物語と、負の心理から攻めの心理へと動く劇的なサビを持った曲を、上手くリンクさせられたなと思いますね。

――じゃあ、KOTOKOさんが描こうと思った歌詞世界も心理的なもの?

KOTOKO:迫り来るものへの恐怖、そして欲望から生まれる“人間の怖さ”ですね。結局“リアル鬼ごっこ”っていうのは、王様の強欲を満たすためだけの企画じゃないですか。そのためにいわれのない暴力を受けた者たちが、一体どういうふうに感じて、どういうふうに心境が変化していくのか? そこがキーになっていくところだと思ったんですよ。独裁国家で王様がいて……なんていう設定は、ちょっと突飛で現実離れしてますけど、同じようなことって私たちの日常にも結構あるような気がするんですね。人の欲求っていうのは留まるところを知らないし、傷つけるつもりは無くても傷つけてしまうこともある。あと、“リアル鬼ごっこ”に対する佐藤姓以外の人たちの反応って、やっぱり他人事じゃないですか。そういった人間の怖さ、ハッキリ形の見えないものへの恐怖みたいなものを、映画と曲の両方から体験してほしかったんです。

――単なるホラー・エンタテインメントではなく、何か人間に対する教訓的なものは私も感じましたね。そこで気になるのが、歌っているKOTOKOさんの視点はどこにあるのか? っていうところなんですよ。主人公である“佐藤くん”なのか、それとも……。

KOTOKO:実は誰でもなくて、私は器になりたかったんです。黒い影のような器から声が聴こえてきて“なんだろう?”って覗きに行く……みたいな。そういう怖さだったり面白さは、ホラー映画にも共通してると思うんですね。映画館に足を運ぶことで、実際には存在しえない恐怖の世界に一瞬にして身を置くことができる。そんな効果を曲でも味わってもらいたかったので、断片的に英単語や難しい漢字の言葉を使って何を言ってるのかわからないムードを作ったり、感情的だけど人形のように無表情で歌おうと心がけたんです。

――ああ、わかります。特にAメロの抑揚ないロング・トーンは非常に無機質な感じがして、童謡のような怖さがあるし。だからこそ、サビに進んで地の底から隆起するような力強さを発したときのインパクトも大きい。

KOTOKO:なんかもう、あそこの部分は人ではなくて魂ですね。佐藤さんでもないし、王でもないし、行き場を無くした魂みたいなものがワーッと声になってる感じをイメージしてもらえると一番近いかな? ただ、ここに到るまでには結構時間がかかったんですよ。普段通りに地声で歌うと人間臭くなっちゃうから、わざとファルセットを使って妖しい雰囲気を作ってみたり。ホント黒い影のようなものになりたかったので、あまり私自体が出てしまっては良くないと思ったんですよ。

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