クレイグ・デイヴィッド、 『TRUST ME』インタビュー
クレイグ・デイヴィッド(以下、クレイグ):Kanoとは共通の友人フレイザー・T・スミスを通じで知り合ったんだ。彼はKanoのトラック、それに僕のアルバムもプロデュースしてる。Kanoとはいつも“何かやろう”って言ってたんだけど、くだらないことを話すだけでなかなか実現しなかった。でもある日、セッションの合間に2時間あって“いまやってみようか”ってことになったんだ。そのとき書いたのが「This Is The Girl」と「Bad Boy」だ。両方とも彼のアルバムに収録されてる。正直言って、これを“カムバック・トラック”だって言う人もいるけど、ま、いいよ、いろんな意見があるからね。でも自分としては、シーンにはいつも注目してたし、そこから離れていたとも思ってない……。このトラックは僕を象徴するものだと思ってる。描写? 象徴? どっちだ? どっちかだ(笑)。等身大の自分がうまく表現されてると思ってるよ。最近の僕の音楽にはそれが欠けてた。
クレイグ:それって、今回は本気で恋に落ちたって意味だろ? 前は“ちょっといいかも”くらいだったのが、いまは本当に好きになった(笑)。
クレイグ:この曲はラップとコーラスのバランスがうまく取れてる。ヒップホップ・ファンには“クレイグ、いいな”って思ってもらえただろうし、Kanoもクロスオーバーなミュージックが好きな人たちに名が知られるようになった。
クレイグ:僕のルーツでもあるクラブ・シーンに復帰してたんだ。どんなDJがいて、どんな曲をかけてどんなリアクションがあるのか、実際にクラブへ足を運んで見てた。昔はみんなが知らないような曲もいっぱい知ってて、“これがいい”って教えるような立場だったんだ。それがこの何年かはツアーに忙しくて、レコードを買う時間さえなかった。自分が好きなシーンだけに、何が起きてるのかわからないのは欲求不満だったよ。だから、昔のようになりたいって思ったんだ。アルバムもいっぱい買ったよ。ハングリーな気持ちでスタジオへ戻りたかったんだ。
クレイグ:80年代のものだな。このアルバムはデヴィッド・ボウイの「Let's Dance」からスタートするけど、実はこの曲のことよく知らなかったんだ。曲がヒットしたのは'83年だろ。僕は'81年の生まれだからね。それにアース・ウィンド&ファイアーやホイットニー・ヒューストン。彼女の全盛期はすごかったね。シンプルな曲を歌い、みんなに愛された。僕も今回ソウルフルなアルバムを作りたいって思ったよ。
クレイグ:ずっとキューバに憧れてたんだ。実際この目で共産主義の政権や生活を見てみたいって思ってた。音楽的にもキューバのミュージシャンは素晴らしいしね。(プロデューサーの)マーティン・テレフェが以前、キューバでレコーディングしたことがあって、行ってみないかって言われたんだ。ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのオリジナル・メンバーを知ってるっていうし、彼のプレイを見るだけでも行く価値があるって思ったよ。実際行ってみて、社会が2分されているのがわかった。年取った世代は、カストロの政権に満足してる。でも、若い世代はインターネットやテレビで新しいファッションやテクノロジーを目にしてるだろ。でも、それを手にできなくて不満に思ってるわけだ。社会の中に変な緊張感があった。それを実際に見て、キューバに対する理解が深まったよ。それに、素晴らしいサウンドのアルバムが出来上がった。
クレイグ:ロンドンで基本となるヴァイブを作ってたけど、キューバでそこに命を吹き込むことができた。“まあまあかな”って思ってたものが、エネルギーを持つようになったんだ。結局、僕のヴォーカルも録り直したよ。みんなが素晴らしいパフォーマンスしてるっていうに、座ってるだけなんて馬鹿らしいって思ったんだ。すごくエネルギッシュになったよ。キューバに行ったことない人は絶対、行った方がいい。
クレイグ:僕は、父親の影響でレゲエやラバーズ・ロックを聴いて育ったんだ。だから、このアルバムでレゲエ風の曲が出てきたとき“自分で歌える”って言ったんだよ。“誰が歌ってるんだ? ダミアン・マーリーか?”とか訊かれたけど、僕だよ。「She's On Fire」ではラップもしてる。“クレイグ・デイヴィッドはこんな歌い方しない”って思ってる人たちが、それを発見して驚く。楽しいね。このアルバムではヴォーカルやサウンドをいじって遊んでる。いつもの調子でいくのは簡単だよ。でも自信を持って新しいことに挑戦してみると、思いがけず素晴らしい結果を得られるものさ。
クレイグ:今回は誰の意見にも左右されず“これが自分だ”っていうアルバムを作りたかったんだ。正直言って、誰のために作るのか、どんな人が僕の音楽を聴くのかってことはどうでもよかった。でも、僕はすごくクリエイティヴになってたし、アルバムを作ることにエキサイティングしてた。だからいいものができないわけがない。“自分のやりたいようにやる、でも僕を信じろ”って思ったんだ。
クレイグ:リタ・オーラっていう女の子だよ。マーティンが、すごいヴォーカルだからバックに参加させたいって連れてきたんだ。16歳のすごくきれいな子だ。ヤング・ホイットニー・ヒューストンって感じさ。実際に声を聴いてみたら、あまりにもいいから、バックじゃなくてもっと歌ってくれって頼んだんだ。彼女は大物になるよ。才能豊かだし、まだ若い。いま一緒に曲を書いてるんだ。
クレイグ:来年、世界ツアーをやる。楽しみだよ。ブレイクダンスのほかには…ウソだよ(笑)。正直言ってプレッシャーはある。今回はいろんなバック・ヴォーカルを入れてるし、すごくソウルフルだからね。自分のヴォーカルの力量を試すことになる。“クレイグのライヴはすごい、彼の歌は本物だ”って言われたいんだ。
クレイグ:みんなには本当に感謝してるよ。いつもサポート、ありがとう。日本へ行ってライヴをやるのが楽しみだ。1stシングル「Hot Stuff」それにニュー・アルバム『Trust Me』を気に入ってくれることを願ってる。またすぐに会おう。楽しんでくれ。ピース!