・全体のサウンドは? - 周波数分布を調べてみる こうした音色を重ねた全体像は、いったいどんなサウンドになっているのだろうか。今回はそれを周波数分布の側面から調べてみた。周波数とは簡単に言えば音の高さのこと。そして周波数分布はどんな音域がどれくらい強く含まれているかを示すものだ。つまりこれを調べれば全体の音の構成がわかるのだ。 周波数分布はもちろん曲によって少しずつ違うし、曲の中でも刻々と変化するものだ。しかしI'veの楽曲の周波数分布をグラフで見てみると、その多くが似たような形になっている。まずグラフを見てわかるのは、全体にフラットな形になっていること。これは高域から低域まで、どの音域の音もまんべんなく同じような強さで含まれているということだ。I've以外の様々なジャンルの楽曲の場合はこれほどフラットではなく、どこかに大きな山や谷が現れたりするのが普通なので、これは大きな特徴といえる。様々な音域をカバーする音色を巧みに使い、音域を偏らせないようにうまくバランスをとって作られているのだろう。 また、グラフはなだらかに右肩下がりになっている。これは他のジャンルでもよくあるパターンだが、もっとも低い音域に注目すると、100Hz付近に小さいピークがある。これはベースやドラムの低域に迫力を増す効果がある音域だ。これによってパンチのあるサウンドに仕上がっているのだ。 さらに、通常はサビやイントロといった曲中のセクションが変わればこのグラフの形は変化するのだが、I'veサウンドの場合はそれも大きく変化しないことが多い。つまり1曲を通じてサウンドが一定していて、極端に変化しないのだ。この安定感も、I'veサウンドの特徴のひとつといってもいいだろう。 text by 田澤 仁 | |
DAW(デジタルオーディオワークステーション)ソフトSamplitudeのFFTフィルターで周波数分布を調べた。グラフは横軸が音域(右側が高域、左側が低域)で、縦軸がレベルを示している。I'veサウンドの多くは、このように大きな山や谷がないフラットなグラフになる。これがI'veサウンドの特徴のひとつだ。
低域側を拡大した表示に切り替えてみてみると、100Hz以下の超低域が盛り上がっていることがわかる。つまり、低音に迫力があるサウンドになっているわけだ。 |