女性ジャズ・ヴォーカリスト特集 インガー・マリエ

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『バイ・マイセルフ』
COCB-53582 \2,520(tax in) 2006年11月22日発売

【収録曲】  ♪試聴できます
01.ホエア・ワー・ユー ♪
02.アイ・ドント・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・イット ♪
03.バイ・マイセルフ
04.サッド・ソング
05.ワン
06.ドント・レット・ミー・ビー・ロンリー・トゥナイト ♪
07.イフ・ユー・ゴー・アウェイ
08.アイ・ウィル ♪
09.ドント・エクスプレイン
10.ア・テイスト・オブ・ハニー
11.ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ
12.ザ・マン・アイ・ラヴ

 

 PV視聴 アイ・ドント・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・イット
ノルウェーから来た歌姫インガー・マリエの2ndアルバム。いま流行の女性ジャズシンガーのなかでもピカ一の実力と雰囲気を持つ彼女。しっとりと落ち着いたジャージーな歌をたっぷり聴かせてくれる。このアルバムも前作同様、ジャズやロックのスタンダードナンバーを多くカバーしており、EBTGの「I don't wanna talk about it」やU2の「One」でのアンニュイな空気、ビートルズの「I Will」での男性歌手とのデュエットの豊かな感情表現など、聴きどころ満載のアルバムに仕上がった。目をつむって音に集中しながら聴きたいアルバムだ。


  

●映画とジャズヴォーカルの深い関係
意外かもしれないが、ジャズヴォーカルと深い関係にあるのが映画。とくに40年代から50年代は挿入歌にジャズがよく使われ、大ヒットが多数生まれた。たとえば『ティファニーで朝食を』で、主演のオードリー・ヘップバーンが歌った『ムーン・リバー』などはその代表だ。その後サラ・ヴォーン、ルイ・アームストロングにシナトラ、ジュディ・ガーランドなどの大物ジャズシンガーを初め、ポップス界にまで多くのカヴァーが生まれている。またフランク・シナトラやビング・クロスビーのように、大物シンガーが自ら映画に主演して俳優業でも成功した例も多い。1937年にクロスビーが主演した『ブルー・ハワイ』からは同名の挿入歌がヒットしたし、プレスリーは後年この映画も挿入歌もリメイクして大成功している。そのほか、以前のミュージカルナンバーを映画『二人でお茶を』でドリス・デイが歌った『Tea for Two』や、映画のテーマ曲をナット・キング・コールが10年後に歌って改めてヒットさせた『It's Only A Paper Moon』のようなパターンもある。映画がジャズをヒットさせ、ジャズが映画を後押しする。そんな切っても切れない深い関係が、映画とジャズにはあったのだ。

●女性ジャズ・ヴォーカリストの巨匠
ビッグネームとされる女性ジャズ・ヴォーカリストはたくさんいるが、女王と呼ばれたのがエラ・フィッツジェラルド。そのヴォーカルスタイルは軽やかで優雅、高速スキャットも得意ワザ、様々なタイプの歌を歌いこなす達人だ。60年にベルリンでライヴ録音された『マック・ザ・ナイフ』はそんなエラのヴォーカルを堪能できる1枚だ。また、張りのある明瞭な歌声を武器に、恵まれない環境からスターダムにのし上がった苦労人がビリー・ホリデイ。その卓越した表現力は、ビリーの代名詞ともなった『奇妙な果実』で聴ける。差別をテーマにしたナンバーで、重苦しさが胸に迫ってくる名演となっている。声量や声域が凄かったのがサラ・ヴォーン。歌声には深みもたっぷりで、フェイクやスキャットのテクニックも抜群。ジャズファン以外からも幅広く支持されたシンガーだ。78年の『枯葉』には、原曲がわからないほどの壮絶なスキャットが聴けるタイトル曲や、情感たっぷりのバラードなど、サラの魅力がぎっしり詰まっている。

 
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