――この曲のビデオ・クリップはアニメーション作品になっていますよね? Dir en grey史上初ということになると思いますが。
薫:ええ。そもそもはToshiyaの発案で、その監督(=黒坂圭太氏)の作品に触れたのがきっかけで……。
Toshiya:たまたま日本のMTVを見ていた中で、面白いなと感じたのがこの監督さんの手掛けていた作品でした。とにかく感覚が普通じゃないんですよ。ものすごく観る側を惹きつけるパワーがある。目を逸らすことができないというか、一回見たら忘れられないインパクトがあるというか。で、調べて、コンタクトを取ってもらって。
――僕はまだ実際に見させてもらっていないんですけど、かなりヤバい映像だという噂が……。
Toshiya:楽曲と同様、きわめて攻撃的ですね。監督さん自身のなかでは、映像と歌詞と曲調が完璧に合致したらしくて。
Die:まさに“maggots(=うじ虫)”な感じですね(笑)。やっぱり普通じゃない。実際、監督自身にも会ったんですけど、そういう人だからこういう映像になるんだなと思ったし、だからこそ任せてみたくなったというのもあるし。
薫:実際、この曲には合ってると思いますね。
――でもきっと、通常のテレビ番組とかでは流れにくいですよね?
薫:そういうつもりで作ってないんですよ。プロモーションのための素材というよりも、自分たちの作品という意識のほうが強いですね。さらに言えば、シングルというもの自体についても、そういうふうにとらえているところがあるんで。
Toshiya:確かに強烈な映像だから、妙な先入観を持たれたり誤解されたりすることもあるかもしれない。ただ、自分たちでも気に入っているこの映像で誤解されるんであれば、それは構わないな、と。そういうことを言い始めたらキリがないと思うし、そういった意識に縛られずに何事にも臨みたいですね。
――今年の夏、皆さんはほとんどの時間をアメリカで過ごすことになったわけですよね? <FAMILY VALUES TOUR>の模様については何度かこの場でも報告してきましたけど、僕自身、あそこまで“ファミリー”な雰囲気のツアーになるとは思ってもみませんでした。
薫:そうですね。Kornやデフトーンズ、ストーン・サワーをはじめ、“みんなと一緒にツアーしてる”という感覚が強かった。毎日みんなと顔を合わせて、お互いのステージを観て、終わった後はいろいろ話をしたり、飲んだり……。変な言い方ですけど、バンドをやってるんだ、ツアーをやってるんだという実感がすごくありましたね。しっかり毎日をバンドらしく生きている、という感触が。
自分たちだけのツアーというのももちろんいいんですけど、ああいう環境だからこそ得られるものというのも確実にあるし、仮に何かネガティヴなことがあったとしても、すぐ意識を翌日に向けられるような空気感があるというか。
Shinya:日々、吸収すべきものがありましたね。ドラムの面でもいくつか新たな発見があったし、実際それをこれから具体的に試そうとしてるところだったりもするし。
Die:これまでのヨーロッパでの経験とも全然違いましたね。ドイツのフェスでKornが一緒だったとき、マンキィ(G)がバーベキュー・パーティーに招いてくれて“アメリカ・ツアーは毎晩こんな感じだから”って言ってたんですけど、実際ホントにそうだった(笑)。今までの自分たちの生活スタイルからはまったくかけ離れてるのに、それが現実でもあったという感じで。
Toshiya:ライヴをやってるかツアー・バスに乗ってるか、という毎日だったし、移動距離がやたらと長い日とかもありましたけど、そういった困難さも含めて、すべてを楽しめた気がしますね。
薫:実はツアー後半、バスのなかで曲作りもしたんですよ。次のアルバムにはアメリカでできた曲もいくつか入ることになります。
――楽しみですね。実際、そのニュー・アルバムは完成に近付いているんでしょうか? 前回のインタヴューでは"アルバムは、できたときに出るもの"という名言がありましたけど(笑)。
薫:もうすぐ完成します。まだ若干作業は残ってますけど、すでに山頂は見えてます。現時点で言えるのは、『Withering to death.』とはまったく違う作品になるってことですね。
――その言葉の真意、アルバム完成時にまた改めて聞かせてください!
取材・文●増田勇一
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