【佐伯 明の音漬日記】風味堂のニュー・アルバムを聴く

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2006.10.□

風味堂のニュー・アルバム『風味堂2』を聴く。

ヴァイオリンなどは音を出すまでに何年もかかる
難易度の高い楽器であるし、ギターも“自分の音”を
出すまでには長い期間を要するが、
鍵盤楽器は、指を鍵盤に落とせばすぐに音が出る。

そのことに加え、特にバンドの中に鍵盤がいれば、
全体を見渡せる役がいることに匹敵する。
そして、ピアノは半ば“打楽器”と言っていい構造を持つ楽器である。

風味堂はギターのいない、リズム隊とピアノから成るバンドである。
ヴォーカルとピアノを担当する渡和久は、練習スタジオで
メンバー募集の張り紙を張っていたドラムスの中富雄也と意気投合して
さらにメンバーを探し、ベースの鳥口マサヤに出会っている。

打楽器の構造を持つピアノを弾く者が、
打楽器の集合体であるドラムス奏者と意気投合し、
その後、“和音も出る”ベース・プレイヤーに到達する
という道のりは、一見偶然のように見えて
実は偶然ではないという気がする。

そのことが、風味堂の音楽を聴いているとわかってくるようだ。
ピアノはドラムスと実は仲がよく、
ベースの単音を加えて成立する和音をピアノは望んでいる。
ピアノで出す単音はより強い単音であるホーンを呼び込み、
より重層的なストリングスを想定内とする。
その結果、ヴォーカルがトレースするメロディは、よりクリアに聞こえ、
何度聴いても飽きのこない印象をもたらすのではないかというのが、
僕が風味堂に与える見解である。

本作ではホーンやストリングスとの適材適所の融合以上に、
ベース&ドラムスとピアノ&ヴォーカルの爽やかな密着が
耳に残る快作であろう。


風味堂のニュー・アルバム
『風味堂2』
2006年10月25日発売

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