新作「Have a nice day!」に見る“全部自然”なKREVAスタイル【インタヴュー後半】

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――海に囲まれた場所で作ったからなのか、私は山下達郎の曲の持つ感触に近いものを感じましたよ。

KREVA:ああ、さっきも言われたんですよ。やっぱりそうなのかなあ。でも、嬉しいすけどね、単純に。達郎さん、すごい好きだから。

――しかも、“展開がある”じゃないですけど、かつての歌謡曲的なスピード感ありますよね。そういうポップ・ミュージックはかつて聴いていたのですか?

KREVA:聴いてましたよ。南野陽子のベスト盤とか。TMネットワークとか小室哲哉のソロとかも好きだったな。あと、バービー・ボーイズとかは今聴いてもカッコいいと思いますよね。今、この時代ではありえない歌詞の世界だしね。

――KREVAさんは、やっていることはヒップホップですが、しっかりとチャートの1位になっているように全国区で受け入れられているし武道館でコンサートもやれる。そういう存在自体が新たなポップ・ミュージックの在り方かなという気がしますね。ちゃんとメロディ・ラインを歌える人だし。

KREVA:なるほどなるほど。そうですね、確かに。まあ、俺のルーツってヒップホップだけじゃないからなあ。ちゃんといい歌がある音楽が好きなんですよね。ミスチルとかも好きですしね。

――そういう意味では「今夜はブギー・バック」をカヴァーしているのはすごく納得できますよ。あの曲も90年代のあの時期の“ポップ・ミュージック”ですから。

KREVA:そうですね。やっぱり俺はメロディ・メイカーってことなんだろうな。いいメロディをキャッチしたり作ったりという。ただ、それを自分が全部歌うのか?というと今の段階では何ともいえないですけど、そういうものに反応できる感覚があるのは間違いないですね。
 曲を自分で作る時は、やっぱりまずはラップのフロウが出てきちゃうんですよ。そこらへんは最初に浮かんで出てきたまんま自然に作っているって感じです。最初からあれこれ考えては作らないですね。全部自然。それが俺の作る曲の個性になってるんじゃないかな。歌詞も紙に一気に書いていくしね。

――手書きなんですか??

KREVA:そうです、昔から。しかも、東京じゃないと絶対に書けない。今回も歌詞だけは東京で書いたんです。向こうでの出来事を思い出して。

――へえ。今回のような曲だと歌詞も一気に向こうの雰囲気の中で書き切るという流れもアリだったんじゃないですか?

KREVA:いや、やっぱりね、歌詞だけは情報が周囲にいっぱいあった中で書いた方が絶対イイんですよ。だって、宮古島にいても“スゲエ”とか“ヤベエ”とか“ウマイ”とかって言葉しか出てこないもん(笑)。だって、同じ景色を見ていても毎日“スゲエ!”だけなんですよ。どこもかしこも、宮古島はスーパー・ナチュラルだから。
 逆に東京だといろんな情報が入ってくる。そこでいろいろな思いが入っていくんですよ。 そうすると言葉がたくさん出てくる。もし宮古島で歌詞まで書いてたら、ただの“南の島楽しいソング”になってましたよ。

――なるほどね。

KREVA:そんなの絶対自分じゃ聴かないですからね。単にファンタジーなら宮古島で一気に書けばいいんです。でも、俺は自分の曲を長く聴いてほしいし自分でも長く聴きたい。この“後に長く聴くか/聴かないか”というのが、自分の曲を客観的にみられるかどうかのポイントでしょうね。少なくとも、仲間と一緒に作る曲はワーッと楽しく作ってもいいけど、自分自身の作品の場合は、そのあたり、結構冷静に歌詞を書きますよ


取材・文●岡村詩野

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