ブルーのダンカンが満を持してソロ・デビュー! 特集INTERVIEW編

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――アルバムの話を聞かせてもらう前に、ブルーの活動停止についてまず教えてもらえますか?

ダンカン:5年間一緒に活動する中で、4人がそれぞれに新しい目標を求め始めた。それが活動停止の一番の理由さ。

――ということは、解散ではないのよね。

ダンカン:将来的なことはわからないし、決めていない。その時が来れば、また一緒にやることになると思うよ。

――では、ソロ・アルバムの話に移りましょう。出発点においてテーマやビジョンはあった?

ダンカン:いい曲を書くことに専念したいと思った。ブルー時代も曲は書いていたけれど、共作だったし、数も多くなかった。だから、自分がソングライターとしてどこまで通用するのか、それを知りたいという気持ちがあったんだ。最終的には30曲を書いたけれど、ソングライティングの作業は、クリエイティヴな発見の連続で、僕は毎日興奮していたよ(笑)。

――作曲のインスピレーションはどこから?

ダンカン:自分の体験とか、周囲に起きたこと、そこから生まれた感情など、僕の肉体に宿っていた記憶を解放させることで、曲は生まれていったんだ。そういう意味では作曲の過程は、僕のセラピーにもなったね。

――共作している人達は自分で人選したの?

ダンカン:主に3人と共作しているけれど、いずれもレコード会社から推薦された人。おもしろいことに3人ともタイプが違うんだ。まずエッグ・ホワイトは、オーガニックな曲作りが得意で、紅茶を飲みながら、人生や愛について語るなかで曲が生まれていった。マジカルな経験をさせてもらったよ。それとは対照的だったのがアンドレアス・カールソン。彼はコマーシャルな仕事を得意としていて、方向性さえ決まれば、短時間で曲を書き上げることが出来る。一方、ピーター・ベテッシは音楽の天才だし、素晴しいピアニスト。彼がメロディを生み、僕がそこに歌詞を書いていった。全てが新鮮な経験になったよ。

――カヴァーもあるよね。例えば、シールの「キャント・ストップ・ア・リヴァー」。

ダンカン:これはカヴァーではなくて、シールの新曲。A&Rの推薦でデモを録音したところ、シールも気に入ってくれて、それで正式にこの曲を提供してくれたんだ。

――他に「アメイズド」もカヴァーですよね。

ダンカン:この曲がなかったら、今の僕はなかった、というくらい想い出深い曲さ。

――どういうこと?

ダンカン:レコード会社からソロ契約の話を持ちかけられた時、迷ったんだ。娘が生まれて、自分自身の変化を感じていた時だったから、生存競争の激しい音楽業界にもう一度戻る自信がなくて。すでに司会など、他の仕事を始めていたしね。僕は何をすべきなのか、考える必要があると思った。そんな躊躇している僕にレコード会社から、とにかくデモを作ってみないかという提案があって、試しにレコーディングしたのがこの「アメイズド」だった。歌ってみて、自分でもその出来に驚いたし、レコード会社も歓んでくれた。それで一気に迷いも吹っ飛んだのさ。

――娘さんの誕生は人生を変えた?

ダンカン:すごくね。正直に言うと、ハプニングで生まれた子供だったけれど、彼女が僕の人生に与えた影響力は想像以上。こんなに自分が変わるとは思ってもみなかった。

――それも関係しているのかな。作品全体としてオーガニックなサウンドになっているけれど、これは意外だった。

ダンカン:ブルー時代は、エレクトロニックを駆使したヒップホップ風のサウンドだったけれど、それは本来の自分ではない音楽。僕は、子供の頃から音楽の先生だった祖父のピアノを聴いて育った。その原点に戻って、ソロ・アルバムではオーガニックなサウンドにするのが自然なことだと思ったんだ。

――それは制作当初からあった思い?

ダンカン:そうだね。本当の自分を反映させることが一番の目標だったから。

――でも、噂ではアメリカのヒット・メーカー、ダイアン・ウォーレンが曲を提供している、という話があったけれど……。

ダンカン:ダイアンに曲を依頼したのは本当さ。でも、アルバムがオーガニックな方向へ向かったことで、彼女の曲が浮いてしまうことになって。それで仕方なく諦めたんだ。

――ヴォーカルもナチュラルですよね。レコーディングではどんなことにこだわったの。

ダンカン:僕のヴォーカル・レコーディングはスピーディーなんだ。3テイクくらいでほとんどが終わってしまう。僕は絶対音感に恵まれているから、ピッチとか、音程に関しては自信があるんだ。だから、うまく歌うということより、ナチュラルで、聴いた人が温かな気持ちになれるようなトーンにこだわって歌っている。あと大切にしているのは歌詞の表現かな。

――なるほどね。ところで、アルバム・タイトルの『フューチャー・パスト』だけれど、ここにはどんな気持ちが込められているの?

ダンカン:『フューチャー・パスト』とはイギリス特有の言い回しで、“過去があるからこそ、未来がある。将来にばかり眼を向けていないで、過去も振り返る必要がある”という言葉なんだ。タイトルを考えた時に、単に収録曲をそのまま持ってくるのは嫌だった。何か今の自分を象徴するようなタイトルが必要だった。それで考えたのが『フューチャー・パスト』というわけ。今の僕がいるのもブルーがあったからで、ブルーで培った経験があるからこそ、将来に向かって進み出すことができた。ブルーでの経験に感謝している気持ちも、ここには込められているんだよ。

――いろいろ話を聞いていて感じたのは、ソロになったことで、自分らしく振舞えるようになったのでは、ということなんだけれど。

ダンカン:そうだね。自分らしくいられるようになったのは確か。でも、そうすることで、難しい面もあると思う。グループだからこそ成し得たことってあるから。ただ、そういう現実もしっかり受け止めながら、ソロ活動を楽しんでいきたいと思っているんだ。

取材・文●服部のり子

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