――アートの他にも、『LEVEL 27』というファッションブランドも手がけてますよね。早くからファッションへの興味はあったの?
ビリー:いつもファッションのことばかりで、自然に身の回りにある感じだね。高校生の頃、ドレッドロックにメイクをして登校してたんだよ。シャツにネクタイもつけて。でも、その頃は特にファッションといった意識はなかったな。ちょっとヘンだとは思ったけど、爽やかなスポーツ選手って感じにもなりたくなかったんだ。ただ、他とは違うと思ってた。
――個性的な感じだね。
ビリー:そうかもね。それがある意味でのファッションだったかもしれないね。でも、ファッション関係の仕事が天職だとは思ってないよ。アートは人生の中で自分を駆り立てるものだけど、ファッションは、人生の「はけ口」なんだ。
――はけ口?
ビリー:そう。でも、コレクションとかを行なうつもりはないんだ。イラストを描くのも、クール、あるいはホットなことだけど、ファッションについても“ジャケットがクール”とか“シャツがクール”といった観点から手がけてる。でも、LEVEL 27があるから、アートワークも生きてくるんだよね。
――『LEVEL 27』では今後どのようなことをしたい?
ビリー:1日中イラストを描いてるけど、誰にでも分かる既製のプロジェクトがほしいと思ったときに、そっちのほうにも時間を注げればいいな。できれば、LEVEL 27を長く続けたい。それに、もっとハイエンドなファッションを手がけていきたい。洋服は好きだし、自分が着たい物を作りたいんだ。
――『LEVEL 27』は、バンドの中での表現とはまた別の、個人の表現になってるのかな?
ビリー:うん、そうだね。音楽とは別。曲作りのときも、ベンジーが思い通りに行なったり、ポールやジョエル、または僕が好き勝手にするというわけではないんだ。バンドでは、“この部分はこうする”と決まれば、自分もそれに合わせるし、お互いに協力して、ギブ・アンド・テイクで進めなければならないよね。それも楽しんだけど、時には、誰からも何も言われず、自分のやりたいことをやって楽しみたい。誰の意見も入れずに、自分自身を表現したかったんだ。グッド・シャーロットというバンドは、まったく異なった人間が集まって構成されてるよね。それぞれの性格も違うし、興味の対象も違う。LEVEL 27はまさに自分自身を表現したもので、グッド・シャーロットは集団としての表現なんだ。
――アルバムのタイトルにもなってるけど、ビリーにとって「生きること」と「死ぬこと」ってどんなこと?
ビリー:う~ん、最初にレコード契約を結んだのが17歳だったんだ。まだ高校生で、学校に通ってたけど、契約を得た。メジャーレーベルの契約だった。これはとんでもないことなんだ。高校の頃は、誰もそんなこと考えないだろ。宿題のことや、友達と遊んだり、金曜日の夜に何をするか、とかを考えてるよね。20年後のことを思って、キャリアを積み、人生は一度限りだ、といったことを考えるかなあ?
――あまり深くは考えないかも。
ビリー:だよね。でも、いずれは職業を選ばなければいけないよね。僕の場合は、昨日まで数学の授業を受けてたと思ったら、次の日にはハリウッドでレコーディングしていたんだ。その1ヶ月後にはツアーだったしね。あっという間だった。突然、もう子供ではいられなくなったよね。大切なのは、どの時点で決断するかだよ。“俺は今、18歳だけど、本格的な人生を歩み出す。一大決心をしたんだ”って。それで、お金を貯めて、正しいことに使わなければならなかったんだ。
――10代で本格的な人生を歩み出すって、本当に大変なことだよね。
ビリー:今回の作品では、ジョエルと一緒に何について書くか話し合ったんだ。ジョエルは“生きること、「生」そのものを書く”と言ったんだ。そうすれば、必然的に“死”も出てくるよね。僕はこの前、24歳になったばかりだけど、同年齢の人たちの多くは「生」と「死」をあまり考えたりしないだろうね。学生もいるだろうし、週末の飲み会とか、そういったことを思ってるよね。
――大抵はそうかもね。
ビリー:でも、僕は大局を描きたいんだ。目指すものがたくさんあるし、さらに向上したい。音楽でやりたいこともたくさんあるよ。アートでもそうだしね。難しいかもしれないけど、最終的には踏み出さないといけないんだ。それだったら、今すぐのほうがいい。さもないと、うまくいかなくなる。バンドは人生の嵐の中を駆け巡った感じだな。
――17歳でメジャーレーベルと契約して、成功して。
ビリー:田舎から出て、世界を廻り、人々と出会って、今こうした成功を手にしている。それで、人生で何をするかといったことを考えてる。次の瞬間、すべてが過去になるんだ。時間は待ってくれない。「生」と「死」とは、人生は一度で、好きなことをやり、大望を持って、目標を決めること。また、望んだ地にたどり着くための努力をすべきだ。なぜって?人生はあっという間だからさ。それに、誰にだって死が訪れる。それまでに望んだことがすべて出来るといいんだけどね。
取材・文●Takashi Kimura photo by Yoshika Horita
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