| ――でもアーティストとして成功した今、チャリティ・コンサートに積極的に参加するなどして、やっぱり政治的なことにも興味を持っているのではないですか?
ケイティ:そうね。今年2月に日本に来た後、南アフリカとスリランカに行ったわ。南アフリカは<46664>というネルソン・マンデラが主催したチャリティ・コンサートで、エイズに感染した女性を救うものだった。最初は私が8歳から大ファンだったクイーンから参加の誘いを受けたから引き受けて、あとから意義のあるイベントだとわかったの。
――スリランカは?
ケイティ:以前から関心があったNGO“セイヴ・ザ・チルドレン”の一環よ。スリランカには反政府であり、北部の分離独立を掲げるLTTE(Liberation Tiger of Tamil Ealam。通称タミール・タイガー)が、もう20年以上も前から8歳ほどの子を拉致して兵隊にしている。私たちは子供を救出して社会復帰させるために、そして子供らしさを取り戻すために、キッズ・センターで歌を聞かせたりダンスを踊ったりしたの。親善大使として訪れて自分の目で実態を確認できたけれど、政府と反政府が戦っている場所が去年津波のあった地域だったのがかわいそうだったわ。
――そういえばケイティの歌は、二重の意味や、反対の意味合いを歌詞に持たせて歌っているものが多いですよね?
ケイティ:ええ。矛盾に満ちた複雑な気持ちを一つの行で要約しているのが好きなの。二面性を歌に持たせて、現実をどこかクールに見詰めた感じとかね。ランディ・ニューマンのカヴァー曲「I Think It's Going To Rain Today」をアルバムに収録しているんだけど、“貧困に苦しむ人を助けましょう”と人類愛を歌いながらも、ラストでは“これから雨になりそうね”と現実的に終わらせている部分を気に入っているの。プロデューサーであるマイク・バットの影響もあると思うわ。
――このように南アフリカやスリランカを訪れた経験は、今後の曲作りにどう影響すると思いますか?
ケイティ:スリランカの問題も、突き詰めていくとハリウッド映画のように善と悪がハッキリすることではないのね。世の中にはいろいろな要素が絡まっていている出来事が多い。そういった二面性について確認できたし、今後もそういった内容を突き詰めて歌っていきたい。
――政治家にならなくても、音楽でできることで世の中に貢献していくんですね?
ケイティ:そうできれば嬉しい。今後もチャリティ・イベントには積極的に参加していきたいと思っている。
――もう次のアルバムの制作は進んでいるのですか?
ケイティ:半分くらいね。次はぜひともグルジア聖歌隊の歌を収録したいわ。八声に分かれていて声の層が厚くて、しっかり低音部を保ちながら、中音はコードを抑えて、高音の人がメロディを歌っているから、歌が重なり合っていて聴いていると息継ぎをしていないみたいで美しいのよ。
――6月には待望の初来日公演がありますね。
ケイティ:ザ・キュアーの「ラヴキャッツ」を歌ったり、ライヴで盛り上がる曲を中心に演奏するので、楽しみにしていて欲しいわ。
取材・文●伊藤なつみ |
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