クリスティーナ・ミリアン、来日公演レポート

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「ホッとした」。これが今回のミリアンのライヴを見終わった後の僕の率直な感想だ。2002年のデビュー曲「AM To PM」は日本やヨーロッパでは大ウケしたものの、アメリカではもう一つ。そのことを踏まえてか、新作『イッツ・アバウト・タイム』でミリアンは大変身。黒髪を金髪に染め、セクシー路線へ方向転換。これが功を奏してか、アルバムは全米チャートでも初登場14位を記録。女優業の方も軌道に乗っており、本国アメリカでのショービズ界においても本格的に認知される方向には進んではいる。

だが、僕はこの軌道修正にどうも抵抗があった。たしかに結果的に成功かもしれない。しかし、それがために彼女が本来持っていた、良い意味で無邪気な子供っぽさを殺してしまっていないか。あのタレ目のベイビーフェイスに元気一杯でキュートな甲高い声。こうした魅力はティーン・アイドル全盛の昨今においてでさえも唯一無二な存在だっただけに、そこの部分が光らなくなるのでは何か惜しいような気がしていたのだ。

だが、ライヴだと、そんな彼女の個性は決して殺されてはいなかった。DJとドラマー、4人のセクシーな女性ダンサーを従えたステージは007風のオープニングでスタートし、いきなり代表曲「AM To PM」へ。ミリアンはブルーのレザー・コートで登場して来たが、風貌がデビュー時の彼女と変わってなくひと安心。今作のプロモーションの写真はモノによってはかなり厚めのセクシー系のメイクを施していたので「どうかな?」と思っていたが、どうやら無理矢理な背伸びはなさそう。

そして、彼女得意のマイケル・ジャクソンばりの「Ho!」という甲高いシャウトも随所に効果的にキメてオーディエンスをホットに湧かしてもくれた。そして、さらに安心したのはMCでの一幕。笑い声まじりの子供っぽい喋り声が可愛らしい彼女であるが、一旦話し出すとその魅力を発揮。「ミンナニ、アエテ、ウレシイヨ。ニホンゴ、ヘタダケド、ガンバッテシャベッテミタカッタヨ!」。キャーキャーと照れながらデレデレと喋るその仕草。これが決してイヤ味にならずにキュートにアピールできるのがミリアンの真骨頂。こういう要素が消えてなくて良かったと素直に思う。

ステージの進行は当然のごとく衣装チェンジが行われ、後半はビキニにショート・パンツといった露出多めのファッションも披露していたが、これも無理をした感じがなく上品で好感が持てた。DJから流れるトラックがヴォーカル・パート付のものがほとんどで、彼女の生声が聴こえにくい瞬間が目立ったのが気にはなったが、ショウとしては純粋に楽しめるものであった。そしてショウは最新ヒット・シングル「ディップ・イット・ロウ」、そしてアンコール・ラストの「ピーナッツ・バター&ジェリー」まで、オーディエンスも終始ホットなまま幕を閉じた。

この日のオーディエンスの姿を見ると、予想通り彼女と同世代のハイティーンから20代前半の女のコが多かったが、Bガール率はせいぜい2割程度と低く、大半がブリトニーやアギレラを聴いていそうなティーン・アイドルのファン層とかぶっていた。ミリアンがどういう層にアピールしているのかは、この事実でも明らか。この日のライヴで失われていなかった彼女らしい美点をキープしながら、成長を続けて欲しいものである。(7/15(木)東京 渋谷O-East)

取材・文●沢田太陽
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