【インタビュー】工藤大輝、初のセルフカバーアルバム発売「いま自分がどういう人なのかをわかってもらう」

2025.06.29 17:00

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◼︎思ったことや感じたこと、好きなものや歩んできた人生を自然と作品としてアウトプット

──『Otowonous』で最も古い楽曲は2016年リリースの「ハプニング」で、工藤さんが楽曲提供を始めた頃のものですが、9年越しに工藤さんはどうアプローチしたいと思われたのでしょう?

工藤大輝:まず、原曲のイメージや雰囲気から乖離させたくないという気持ちが大前提にありました。「ハプニング」を書いた頃はNissyがソロをやり始めたばかりでチーム編成もままならず、僕も少し手助けをしたりと手弁当で頑張ってた時期だったので、この曲を聴くと当時のことを思い出すんです。だからこそあの頃のNissyのファンの人たちも聴いてぐっとくるアレンジにしたかったんですよね。それで編曲はAORやブラックミュージックが得意な、きなみうみさんにお声掛けしました。20代の方のエッセンスを入れたら化学反応的に面白そうだと思ったんですよね。

──確かにどの楽曲も楽曲のカラーとアレンジャーさんの特性がしっかりと合致していますよね。BLUE ENCOUNTの田邊駿一さんとコライトしたDa-iCEの「Revolver」はロックバンド出身でポップスにも造詣が深い江口 亮さんがアレンジをし、ボーカルは『Otowonous』で唯一のツインボーカルで、田邊さんをフィーチャリングしています。

工藤大輝:「Revolver」のセルフカバーをやると決めた時点で、駿ちゃんにすぐ連絡しましたね。ブルエンの皆さんがブルエンらしさ全開でアレンジしてくれた原曲に対して、セルフカバーでは江口さんが独特のストリングスのセンスで新たなスパイスを加えてくれました。江口さんの手掛ける音は昔から大好きで、やっとご一緒できてうれしいです。

──工藤さんのボーカルから田邊さんのテイストを感じるのも面白かったです。

工藤大輝:完全に寄せましたね(笑)。僕が先に録って、その後に駿ちゃんが録ったんですけど、駿ちゃんの力強いボーカルと並ぶと、僕の柔らかくてスルッとしたボーカルは浮いちゃったんです。それですぐに録り直しました。そういうのもフィーチャリングの良さだし、駿ちゃんも「BLUE ENCOUNTじゃない曲歌うのめっちゃ久々だ」と言ってくれたので楽しかったですね。

──今回最もどんなセルフカバーになるのか想像がつかなかったのが、恋ステバンド・Lilacの3曲「Hello」「テレパシー」「よくばり」でしたが、高校生の恋愛ソングも工藤さんの声とアレンジの力でこんなふうに変貌を遂げるのかと驚きました。

工藤大輝:僕が歌うならあの頃を振り返るようなノスタルジックな雰囲気にしたかった……というかそうしないと僕が歌ってて恥ずかしいので(笑)。同年代の人とかが「学生時代にそういうこともあったよね」と思い出して胸がキュッとなるような曲になればなと思いました。やっぱり自分の等身大で表現したほうが絶対に説得力が出るので、この3曲はアレンジも一新しましたね。

──そして「スターマイン」のアレンジは本間昭光さんが手掛けていることにも目を丸くしました。ほんと『Otowonous』は驚きと面白いの連続です。

工藤大輝:そもそも原曲の「スターマイン」は、本間さんがプロデュースしたポルノグラフィティさんの「アゲハ蝶」をモデルにしてるんですよ。夏曲を作るにあたり、EDMや四つ打ちよりはラテン要素のほうが日本人には馴染みがいいんじゃないかなと思って、ラテンとJ-POPを掛け合わせた「アゲハ蝶」の楽器構成をとにかく調べ尽くしたんです。だから本間さんに「スターマイン」をアレンジしてもらえたらすごく面白いんじゃないかな……とダメもとでお願いしたら快諾していただけました。「Love&Loud」のアレンジをしてくださったCHOKKAKUさんもそうですけど、やっぱり自分は90年代のJ-POPを作っている人たちの音作りが好きなんだなとあらためて実感しましたね。

──工藤さんの原点である90年代J-POPは、黄金期とも言われる時期でもあります。

工藤大輝:日本でファンクを取り入れたサウンドが浸透したのはCHOKKAKUさんがSMAPさんの楽曲に取り入れたからだと思うんですよね。本間さんもつねにいろんなジャンルの音楽をJ-POPに昇華なさっていて、今回の「スターマイン」も生楽器が多くて、ダンスミュージックのトラックメイカーさんはなかなかやらない音作りなんです。それらのコントロールはJ-POPを突き詰めている人でなければ絶対できない。それを間近で見ることができてすごく勉強になりました。

──『Otowonous』は「Departure」で締めくくられるのも趣があるなと感じます。《どこに向かうのかなんて/ずっと分からないままもがいてく》という歌詞は、明確な目標に向かって突き進むというよりは、ゴールにとらわれずに「面白いことをしたい」という美学を追い求める工藤さんの生き方ともつながるのではないでしょうか。

工藤大輝:この曲はすべてにおいて結果的にそうなった、というほうが正しいんですよね。FAKYの解散を描いているように見えるかもしれないけど、お願いされたのはその前だったんです。ならばなぜこういう内容になったかというと、僕が女性グループに思っていたことなんですよね。女性グループは男性グループよりも脱退と加入が多いし、活動期間も短い。FAKYも残る子、離れた子、新しく入った子がいて、それらも含めて応援してほしいなという思いからああいう曲にしたんですけど、完成してみると自分自身にも置き換えられるものになった。だからこそ『Otowonous』でも最後に置くとドラマチックになるだろうなって。

──工藤さんは「楽曲提供曲は“提供”という意識を持って書いている」とおっしゃっていますが、それでも工藤さんの中にある信念や哲学、熱い感情や歩んだ道のりはどうしたってにじみ出るんだろうなと『Otowonous』を聴きながら思いました。

工藤大輝:思ったことや感じたこと、好きなものや歩んできた人生が自然と作品としてアウトプットできるのがいちばん健全かなとは思っていますね。あと『Otowonous』の楽曲はclaquepotとのツーマンライブを開催することを前提として選曲したんです。自分がライブでやるうえで整合性が取れるように作り直すことを決めていたのと、セルフカバーアルバムは今後も出していけたらいいなと思っているので、それも見越した1作目です。

──ひとつのもので完結せず、いろんな要素をつなぎ合わせる。やはり工藤大輝はアイデアマンですね。

工藤大輝:ありがとうございます(笑)。やっぱりね、常に面白いことをしていたいですよね。

取材・文◎沖さやこ

リリース情報
◾︎「SFST」配信
https://Taiki-Kudo.lnk.to/SFST

◾︎セルフカバーアルバム『Otowonous』
2025年6月25日(水)
https://taiki.lnk.to/Otowonous

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