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| ▲BLACK2000オリジナルユニフォームを着た長身のDEGO。実はサッカーで足を骨折し、松葉杖をつきながらの来日、DJツアーを敢行。それでももちろん、W杯は観戦に行ったとか…。 |
――レーベル名、2000BLACKの由来は?
DEGO: 2000BLACKは’98年に始まったんだけれど、ロイ・エアーズの「2000BLACK」という曲からとったんだ。この曲の歌詞に<Think About Future, Think About Change(未来を考えよ、変化について考えよ)>というフレーズがあって、それがすごく気に入っているんだ。過去から学んだものを踏まえて、新しいものを作り出すっていう態度を表わしていると思う。
俺はこのレーベルを通じて、’60年代~’90年代の過去の音楽からベストの部分を抽出して、未来へ向かって次のレベルに押し上げていきたいんだ。あと俺はソウルのこもったトラック、新しい要素の感じられるトラック、もしくは新しくなくてもハイスタンダードなトラックをこのレーベルからリリースしていこうと思っている。ただ単純にトラックができたからそれを出そうというわけではないんだ。
――“Think About Future, Think About Change”というのは、既成概念を打ち破って新しいものを作り出していくという、アヴァンギャルドの概念と通じるものがあると思うのですが、あなたにとってアヴァンギャルドとはどういうことですか?
DEGO: もともと俺がドラムンベースに興味をもったのは、ヒップホップやレゲエ…色んな要素を混ぜることができて、自由だっていうところに惹かれたんだ。でも、時間が経つにつれてドラムンベースはみんな同じようなビートになってつまらなくなってしまった。自分にとって人と同じことをやるのは違うと感じたから、自分でそういう音楽を創ることはできなくなったんだ。ドラムンベースだけじゃない他のことを自分と意識の近い世界中の人たちと一緒にやってみようと思ったんだ。IGカルチャーはヒップホップのバックグラウンドを持つ人だし、フィル・アッシャーはハウス…といったようにバックグラウンドは違うんだけれど、彼らのように新しいことをやることに恐れを感じない人たちが集まった。音楽にルールは必要ないと俺は考えているし、水のように形がないようなものであるべきだと思うんだ。 ――そういった点で“新しさの勢い”を感じます。
DEGO: 俺は新しいリズムを作ったりしているけれど、それは新しいものを提示してリスナーに挑戦していくことも必要だと思うからなんだ。曲の頭を聴いて何が起こるかわかってしまったらつまらないと思う。最高のレコードっていうのは、ピンク・フロイドでもそうなんだけれど、何が起こるのか全く予想がつかない。でもそういう旅に連れていかれるような感覚が好きなんだ。 それとさ、人間は様々な感情が湧き起こるだろ? 悲しみや怒り、喜び、愛とか。音楽はそういうものを表現できるのが素晴らしいことだと思うんだ。俺は感情を表現する手段に音楽のことを考えているんだ。だから、いつもより巧くそういった感情を表現できるようになりたいと思っている。 ――あなたがいろんな音楽を聴いて、影響を受けてきた中で、デトロイトテクノも好きだというのは聞いています。前回の『Good Good』コンピレーションもPlanet Eからライセンス盤が出てましたが、カール・クレイグ(PlanetE主宰)と仲がいいみたいですね。でも、彼はサッカーあまり好きじゃないでしょ(笑)。
DEGO: そう、それは本当にもったいない話だよ(笑)。いいのか悪いのか分からないけれど、俺たちが似ているところは・・・・一つのことやプロジェクト(例えばPaperclip People名義とか)にこだわらないってことかもね。それから、離れたところの可能性を探ってしまうんだよ。やっぱり頭の中からいろんなアイディアが溢れてしまっているんだろうね。あとは…それがいいものだと思えば、たとえ500枚しか売れなかったとしても、そのレコードをリリースするような姿勢だったりとか。それが似てるところだろうな。あとは、’80年代のニューロマンティックスの話でいつも盛り上がるよ(笑)!
――なるほど、あなたもTek9などいろんな名義で作品を発表していますよね。近い将来にソロ・アルバムがリリースされるとかは?
DEGO: ソロ・アルバムっていうよりはコンセプト・アルバムみたいな感じだよ。パヴェル・コスティック名義(左一番下のディスク)でリリースするんだ。黒人のポーランド人という設定で架空のキャラクターを作って…、彼はアルコール中毒でどうしようもない奴みたいな感じなんだよね(笑)。この作品はもっとアヴァンギャルドなものになると思うし、映画のサントラみたいな感じにしたい。ヴォーカルなしで、インストだけでやろうと思ってるんだ。インストは自分を表現する手法の中でまた別の実験的な方法だと思うから。今回のアルバムはまさにマッドネスだよ。今まで作った作品の中で一番作るのが楽しかった。
――そのアルバムも含めて、やっぱりこれからの2000BLACKに期待しているのですが、若手でおすすめのアーティストは?
DEGO: 今回一緒にプレイしたティトントンはコロンバスにいたから、注目を浴びることはなかったけれど、ずーっとやっていたんだよ。ダン・カーティンやモーガン・ガイストのレーベルからも出している。 ――リキッドルームでの彼のプレイはガンガンに盛り上げて本当にすごかった。ある人はジェフ・ミルズの再来だとも言ってました。
DEGO: うん、それくらいのDJだと思うよ。彼もここ数年でだいぶ、注目を浴びるようになってきたから、これからも期待するべきだよ。すごいDJだから、見る価値があると思う。今回日本でやることができてよかったと思うよ。また近いうちに日本でやれるといいよね。その他には今回の『GOOD GOOD Vol2』の2曲目にも楽曲を収録している新しいグループでアサシノ・ダニーナやベンベ・セグエ(『GOOD GOOD Vol2』M5のヴォーカリスト)のリリースも控えている。俺の周りにいる奴らが、どんどん成長してきている。だから数年後にはIGカルチャーや俺はもう一歩引いたスタンスをとって、もっと新しいアーティストが活躍してくれることを期待しているよ。そうなればいいなと思ってレーベルをやっているんだから。
――ありがとうございました。早く足を治して、サッカーできるようになるといいですね。
DEGO: まったくだ(笑)。
取材/文●門井隆盛
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