【インタビュー】文藝天国、オルタナ的藝術徒党の初フルアルバムに日常と非日常が交差する瞬間「美しいと感じてきたもの」

■ある作品を通して実世界の見方が変わる
■現実世界を美しく見るためのフィルターになれたら
──そして、『プールサイド・コア』展という企画に繋がるわけですが、展示会というアイデアはどういうふうに出てきたんですか。
ko:もともと、フルアルバムをリリースしたタイミングで写真展をやりたいと思っていたんです。すみが作ってきたミュージックフィルムやジャケット写真、それ以外にもデザインワークやクリエイティブワークがたくさんあるので、そういうものと音楽を合わせて展示したら面白いんじゃないか?とすみに提案したんです。そうしたら、普通すぎると思ったのか、「うーん…」みたいな微妙な反応で(笑)。そのあとに、いろんなクリエイターさんを巻き込んで作品を作るというかたちになりました。
すみ:“プールサイド・コア”という概念をいろんなものに宿したいと思ったんです。そもそもバンドグッズについて考えていた時に、グッズとして作れるものって、クオリティにしても種類にしても、どこかで限界があるなと感じていて。別にTシャツを作るのも楽しいし、これからも作るんですけど、それだけにとどまってしまうのはちょっと惜しい気がしていたんですよ。その時にヒントになったのが、ウィリアム・モリスというイギリスのデザイナーであり社会主義者だった人で。
──“近代デザインの父”と称される芸術家であり思想家ですね。
すみ:ウィリアム・モリスは産業革命を経て同じようなものが大量生産される時代に、日々使う日用品にこそ美を宿すべきだと主張して、そこからアーツ・アンド・クラフト運動という社会改革に繋がっていくんですね。ただ、職人の手作業にこだわるあまり、結果的に富裕層しか買えないものになってしまった。そのあとに出てきたのがバウハウスで、機械で大量生産するものにも美の意識を灯せばいいんじゃないかという発想になるんです。文藝天国では、そのふたつの考え方を両軸でやればいいのかなと思って。だから、職人の手作業という部分で作家さんの作品と、大量生産という部分でグッズのTシャツ。両方の展示を考えています。


──なるほど。
すみ:作家さんに文藝天国の美学や“プールサイド・コア”という概念を伝えるために、私がガイドラインを全部作りました。モチーフや色のイメージなどをお伝えしたうえで、それぞれご自身の“プールサイド・コア”を解釈して作ってくださいとお願いしています。ガイドラインでコントロールできる部分もあるけど、絶対に100%私の思うようになるわけではないので。どう広がっていくのかを期待しながら待っていたら、どの作家さんもすごく気合いを入れて作ってくださいました。私が景色とかから汲み取っていた美が洋服に宿るとこうなるんだとか、器に宿るとこうなるんだとか……それぞれの“プールサイド・コア”が違うし、同時に一貫してる部分もあって面白かったです。お客さんにも、いろんな感覚で楽しんでもらいたいですね。
──同時開催の『水色のネグリジェコレクション』というのは?
すみ:昔からヴィンテージネグリジェが好きで、個人的に集めていたんです。古い時代にお嬢さまが着ていたような服なんですけど、アメリカやフランスからのものなどいろいろあって。私がコレクションしていたものに加えて、今回の展示のために水色のネグリジェを集めたので、なかなか迫力のある景色になるんじゃないかなと思っています。
──「ブルーミング」の歌詞に《水色のネグリジェ》という言葉が出てきますが、もともとずっと好きなアイテムだったんですね。
ko:プールサイドと同じで、ネグリジェも文藝天国の世界を構成するもののひとつとしてあったから、自然と繋がっていった感じですね。
すみ:今までのミュージックフィルムの衣装にもホワイトネグリジェを使ってたりしているので、そういう部分から繋がったのかな。
ko:常にお互いが影響し合っているから。すみが作った映像に音楽が影響されたり、逆のパターンもあるんだと思う。

──はい。
ko:展示するネグリジェは、ヴィンテージのものを再構築していたり、全部一点物なので、見応えのある展示になりそうです。作家さんの作品も含めて、すごく文藝天国らしい空間ができるんじゃないかなと思っています。
──そこに、音楽も加わるイメージですか。
ko:そうなんですけど、会場にフルアルバムの曲はかけないつもりです。文藝天国という空間に入ってもらいたいから、そこで文藝天国の曲が流れているのは違うかなって。フルアルバムは主題歌でBGMではないというか……アニメの本編にアニメの主題歌は流れないじゃないですか。フルアルバムはあくまで『プールサイド・コア』展を開幕させるものであり、その中で流れるものではないと思っているので、また別途、空間を作る楽曲を準備しています。
──グッズ以外の作品も実際に購入できたりするんですか?
すみ:展示作品はすべて販売します。展示品ではあるんですけど、ただ展示するためのものではなく、かといって売買のためだけの商品でもない。その両方を兼ね備えさせたいし、作品を皆さんの日常に持って帰ってもらいたいんです。

──ひとつの集大成的な展示会になりそうですね。フルアルバムが完成し、展示会を経て、その先のビジョンみたいなものは見えていますか?
ko:まだ言えないですけど、考えています。『プールサイド・コア』という作品を作ったあと、ここから文藝天国がどうなっていくのかも含めて、みんなに楽しんでもらいたいですね。たぶん僕らの音楽と活動を好きでいてくださっている方は、いつも文藝天国が何か新しいことをやろうとしている、ということをわかってくださっているから。この先も期待していただきたいです。
すみ:私は、たとえばモネの絵を見て水面のゆらめきの美しさに気づくみたいに、ある作品を通して自分の実世界の見方が変わることがあると信じていて。文藝天国の音楽や作品が現実世界を美しく見るためのフィルターみたいなものになれたらいいなと思っているので、今後もその幅をもっと拡張していきたいです。
取材・文◎後藤寛子
撮影◎淵上裕太

■1stフルアルバム『プールサイド・コア』
2026年10月28日(水)発売
CD全10曲 ¥3,500 (税込 送料込)
詳細:https://www.bungeitengoku.com/product-page
◯オンラインショップ限定特典 : 音楽作家 ko shinonome によるセルフライナーノーツ
・全16ページ リリックブック
・音源ダウンロードリンク付き
配信リンク:https://nex-tone.link/poolsidecore
▼収録曲
01.かがやき
02.ゼン・スペース・シックス・フレア
03.スクールゾーン (MOD)
04.雲海
05.ジ・アース (MOD)
06.ふたごのたましい
07.μεταμορπηοςε
08.初恋 (MOD)
09.プールサイド・ヴィラ (文藝天国 / TEMPLIME)
10.ブルーミング

■キュレーション型ポップアップショップ『プールサイド・コア』展
11月7日(土) 11:30-19:00
11月8日(日) 11:30-17:30
会場:東京・幡ヶ谷 FORMEI
展示内容:10組の作家がそれぞれの領域から作品を制作。服飾、ジュエリー、陶芸、イラスト、ガラス、スイーツなど、異なる素材・手法による作品を文藝天国がひとつの空間としてキュレーション。
参加領域:ビーズジュエリー / 陶芸 / イラスト / 服飾 / 陶器ジュエリー / 菓子 / シルバージュエリー / ガラス ほか。
参加作家:Maison hymnus, Shunta ceramics, beco+81, SHINPIN, nood, 喫茶閃光, Sano Teruyuki, barrack room, mutsumi hagiwara, AMSUR.
特別展示販売:すみあいか“水色のネグリジェコレクション”
主催・キュレーション・制作:文藝天国 / 株式会社文藝
▶『プールサイド・コア』とは?
文藝天国の1stフルアルバムのタイトル。音楽を起点に、映像・香り・味覚・そしてプロダクトへ。文藝天国がこれまで断片として提示してきた美学“プールサイド・コア”を実空間へと拡張する。






