【インタビュー】文藝天国、オルタナ的藝術徒党の初フルアルバムに日常と非日常が交差する瞬間「美しいと感じてきたもの」

■アルバムをひと続きの作品として聴いてもらいたい
■10曲がまとまってひとつになった達成感がある
──結成初期はkoさんがひとりきりで作り上げているという印象でしたが、だんだん他の人に委ねる部分が増えたり、まさに拡張していっていますね。
ko:最初のインタビューの頃は、部屋でずっとひとりで作ってると言ってましたよね(笑)。曲作りに関しては、変わった面と変わってない面があって。ギターやベースは今も自分で録音していますけど、ドラムはドラマーさんにお願いしてスタジオで録っているし、Track2の「ゼン・スペース・シックス・フレア」はchef’sの高田真路くんがベースで弾いてくれています。ベースを人にお願いするのは今回が初めてでした。
──たしかに、ベースがすごく前に出ていて、ベースソロを含めいいアクセントになっていますね。
ko:ゴリゴリに弾いてくれました。
──イントロからクラシックのフレーズを取り入れていたり、ガラッとテンポ変わったり、楽曲アレンジもプログレッシヴで面白いです。
ko:ヴィットリオ・モンティの曲「チャールダッシュ」のフレーズを引用しているんです。戦いに行く兵士を送り出す曲で、この「ゼン・スペース・シックス・フレア」も戦いのイメージで作っていたので引用してみました。ヴァイオリンがメインの楽曲をどうバンドサウンドに落とし込むかを考えて、前奏と後奏に入れて。テンポが変わる構成もクラシックっぽさを意識したので、クラシックとロックを融合させたイメージですね。2番以降はガッとスピードが上がるんですけど、しっかり音を聴かせたいと思って、ドラムはあえて生で録らずに電子ドラムで叩いています。絶対に音を潰したくないから、MIDIデータで録音したものをパラで出すという。


──だから個々の音が立っているんですね。メロディもキャッチーですが、koさんのギターが素晴らしくて。クラシックのヴァイオリンフレーズをギターで弾きこなすあたりはさすがです。
ko:やりたい放題(笑)。難しかったのでかなり練習しましたけど、気持ちよく弾けました。
──新しい挑戦もある中で、すみさんから見てkoさんの曲作りに変化を感じますか?
すみ:前よりも自由に泳いでる感じがします。「ゼン・スペース・シックス・フレア」で古典から引用したり、電子音楽を取り入れたり、6月にはインストアルバムも出しましたし、どんどん自分の音楽の可能性を模索していますよね。勝手な想像なんですけど、これから年齢を重ねるわけで、その後のことを考えてるんじゃないかなと思っていて。いつまでもギターをワーッと弾くだけじゃなく、別の形でも音楽を続けられるように、楽しめるようにするにはどうしたらいいかを考えている印象があるんですよ。最初に音楽に目覚めたときのスタイルにこだわり続けるのもひとつのやり方だけど、大切なのは音楽を続けていくことなんじゃないか?と考える過渡期というか、ちょっと落ち着いてきた自分が次になにできるか確かめているような。
──そう言われると、koさんご本人としては?
ko:たしかに、少し前まではそういうことをずっと考えていました。でも、そこからちょっと変わってきて……このアルバムを作ったからかもしれないけど、“やっぱりギター大好きだな”って思ったんですよ(笑)。

──1周回って戻ってきたと(笑)。
ko:さっき言ったとおり「ゼン・スペース・シックス・フレア」のギターがめちゃくちゃ難しくて。高校生みたいに「よし、今日もギターの練習するぞ!」みたいな感じで向き合っていたら、すごく楽しかったんです。昔からやってきましたけど、ギターの音をよりカッコよくするためにどうしたらいいんだろう?っていうDIY的な工夫をするのも、やっぱり面白い。このフルアルバムを作ってみて、改めてギターが大好きだし、たぶんおじいちゃんになっても弾いてるだろうなっていう未来が見えました(笑)。ここからまた何周もするとは思いますけど。
すみ:結果、生粋のギター好きだった(笑)。固執して突き詰めるんじゃなく、自然とそういう答えに辿り着くというのはいいですね。

──少し前は、もっと幅を広げたほうがいいんじゃないか、とかいう考えが芽生えていたわけですか?
ko:はい。同じようなものを作りすぎている感覚になって、新しいものを作りたいというふうに考えていたんだと思います。ギター、ベース、ドラムにボーカルというバンドサウンドの型の中でやれることには限界がある……と思い込んでいたけど、アルバム制作を通して“全然まだまだあるな!”と感じられました。
──始動から5~6年経って、いったん自問自答が発生するタイミングだったかもしれないですね。
ko:そうですね。いろいろ挑戦した結果、硬派なアルバムにはなっていると思います。しっかりイントロもあるし、ギターソロも長いし(笑)。
──フルアルバムの最後には10分の長尺曲「ブルーミング」もありますし、聴き流させないという意志を感じます。
ko:別に逆張りしたいわけじゃないんですけどね。でも、1曲をどうバズらせるかみたいな時代だからこそ、10曲通して『プールサイド・コア』の世界をしっかり味わってもらいたいという気持ちです。これまでいろんなロックアルバムを1枚通して聴いて満足感を得てきたからこそ、自分でもそういう作品を作りたいと思っていたので。
──曲間の空白がほとんどないのは、そのためですか?
ko:そうです。ひと続きの作品として見てもらいたいから、アウトロの余韻はぶったぎって、なんなら重ねて始まるくらいにしました。いつもアルバムのマスタリングをお願いしている中村宗一郎さんが、すごくシビアに調整してくれて。
──すごく長い1曲と言えるくらいの仕上がりですよね、このフルアルバムは。
ko:まさに。今回シングルごとにミックスのエンジニアさんがいて、合計4人が関わっていたので、曲ごとにキャラクターが違ったんですよ。でも、中村さんがマスタリングですべてを調和させて、さらに魅力を引き出してくれて。僕自身、初めてアルバムを10曲通して聴いたのがマスタリングのタイミングだったんですけど、その時に“完成した!”と思いました。10曲がまとまってひとつの作品になったという達成感がありました。






