【インタビュー】Psycho le Cémuのseek、ソロプロジェクトという聖域とギャップを語る「自分の深層世界まで確実に聴いてもらえるアルバム」

2026.10.07 12:00

Share

■この5年間で自分が形にしてきたものを
■今のメンバーで現在の環境で作品にしたい

──で、まだ詳しくお聞きできていないのが6曲目「夢みる心臓」、8曲目「相食む」。この2曲についても掘り下げたいのですが。「夢みる心臓」は始まりのくぐもったピアノが印象的です。プツッと途切れた瞬間、違う世界に切り替わるようなイメージが沸きました。

seek:あれ面白いですよね。レコーディングをしているときの偶然の産物で、奇跡なんです。ファンクラブ限定で、レコーディングの様子を定点で撮った配信をしているんですけど、ファンの人から「いつもと音が違います?」というコメントが流れてきて。後で聴き返してみたらたしかにそうで、“何が原因やろ?”といろいろ調べたら……あれはピアノフレーズの確認をしてた時なのかな。ピアノが流れている状態で、通常だったらスマフォのマイクで拾われた音が配信に乗るはずなんですけど、その時僕がBluetoothのイヤホンを付けていて、そのイヤフォンがどうやらマイクとして勝手に音を拾ってしまっていたようで。”配信に乗った音を、さらにイヤフォンが拾った”みたいな音が、フィードバックを起こしたのか、ウワ~ッと鳴った音が配信に乗ってしまったみたいなんです。レコーディングエンジニアの楠本さんに話したら、「それ面白いじゃん」となりまして。アナログレコードを流してるみたいな感じに聴こえたので、配信の音をそのままコンデンサーマイクでその場で録ったんですよ。普通にラインで録ればいいんですけど、それをあえて空気感を含めてマイクで拾うのもまた面白いなと。

──あえてローファイに加工したような、独特の風合いがいいですよね。

seek:ちょっとノスタルジックな感じにできたので良かったなと。初めはドラムの頭のフレーズももう少し長くする予定だったんですけど、おっしゃったようにパチンと世界が変わったほうが面白いかなって。ライブの時はもう少し長いバージョンなんですが、レコーディング音源バージョンだけ今回のあの短い尺のアレンジにしました。

──歌詞はシュールレアリズムの世界観に思えます。

seek:どの行も、それ1本で物語が作れそうな、自分の中の頭に浮かんでいる景色を言葉にして並べていった感じですかね。「夢みる心臓」の歌詞はどちらかというと統一感は無く、“脈を打つのか打たないのか”ということだけで締め括っています。

──イメージの断片がコラージュされた“眠っている時に見る夢のよう”と言いますか……この曲に限らずですが。

seek:まさに映画の『夢』(黒澤明監督)もそうですよね。特にこの曲は、時代とか置かれてる場所とかがどんどん変わっていくイメージです。

──「相食む」はギターのメロディアスなフレーズも印象的です。

seek:この曲ができたのは比較的最近で、2024年ぐらいかな? aieさんとガラ(メリー)さんとの弾き語りツアー<さすらいのニコチン野郎達>を回る前にはもうできていました。aieさんによるアレンジの化学反応が一番起きたパターンで、僕のアコギで弾いたバージョンとは全く違います。レコーディングをした時、aieさんが一番不可思議なあのフレーズをバーッと弾いて「めちゃくちゃいいですね!」となりまして。レコーディングが終わって小雨さんにデータを送ったら「「相食む」、化けましたね」と返ってきたんです。「aieさんのギターアプローチがカッコいい。私も変えていいですか?」ということで、小雨さんもご自分のピアノアプローチを変えました。

──触発し合っていたんですね。深いリバーブの掛かったピアノも魅力的です。

seek:初めは小雨さんが入れていたピアノのフレーズに対して、僕がエフェクトでディレイを足していたんですけど、小雨さんが手弾きのディレイに変えてくれています。

──手弾きなんですね。

seek:はい。バンドで揃ってスタジオに入ってのやり取りはないんですけど、フレーズ感も「aieさんがこう来たから小雨さんはこう来て」みたいなのも含めて、化学反応が起きていましたね。あと、「相食む」に限らず晁直さんのドラムがすごくタイトで気持ちよくて。「ドラマーを誰にしようか、今考えてるんすよ」とaieさんに相談した時に、「晁直どう?」って。aieさんと晁直さんはdeadmanで一緒にやっているから、というのもあるんですけど、いろいろなドラマーがaieさんの周りにいる中で、晁直さんを勧めてくれたんです。その話をステージでもしたら、「たまたま目の前にいたから」ってaieさんは言っていましたが(笑)。晁直さんのイメージとしては新しい、lynch.でのアプローチとも違う面白い部分をseekソロでは見せられているんじゃないかなと思っています。

──「相食む」のボーカルは、ラップやポエトリーリーディングでしょうか。これもseekさんにとって新しい試みでしたか?

seek:作っている段階から、詩を朗読するようなものが1曲ほしいなと思っていました。特に「相食む」という、総じて二人がキーワードになる曲だったので、ツインボーカルだったMix Speaker’s,Inc.時代にも手法として採り入れていたボーカルの歌い分けをやってみたいなと。もちろんハーモニーもあるんですけど、言葉を交互に読んでいくのがすごく面白かったので、今回それをポエトリーリーディングの中でやってみたくて。ヘッドフォンで聴いていただくと音像がどんどん変わっていくのを感じられるような、面白いアプローチで作れるかなと。

──左右交互に、二人の声が聴こえてくるような効果がありますね。さて、総じて今回お訊きしたかったのが、seekさんの世界観、思想の根底にあるものは何だろう?ということで。例えば、人間が何かを求めて今いるところを脱出するとして、ここからあそこへという場所の移動ではなく、seekさんの創作世界では人間という枠組みすら超え、魚や鳥への転生、果てには森羅万象の中に自分を置いて考えているようなイメージがあります。

seek:ありがとうございます。ただ、そこまで自分で意識しては作ってはいないんです。このアルバムを作るにあたって世界観を統一する作業までは行けていなくて。とにかく自分がこの5年間ぐらいで形にしてきたものを、今のこのメンバーで、自分の現在の環境で作品にしたいということで作ったので。まだ自分自身“こういう思想のもとに作ったんです”とは言えないかなと。もう少し積み重ねたり、願わくば2枚目、3枚目みたいになってきた時に、よりトータルで見たら“seekってこういう世界で、こういう言葉を扱いたい人間なんだな”というのが、僕自身もより見えてくる気はします。

──2作目、3作目というお言葉も今出ましたが、今後もソロとしてどんどん活動されていくということですね? 

seek:そうですね。もちろん自分がやっているバンドが軸ではありますが、やっぱり欲はあります。今作を作り終わった後に、大事なタイミングでできた新曲も既にあるし、今の弾き語りワンマンのトリになれるような曲もできたから、どんどん自分の個性を作っていけそうな気がするので、作る作業は止めないと思う。去年のワンマンも、その前年の誕生日に「1年後にバンドスタイルでワンマンをやります」と宣言して、「それまでの十一ヶ月間を”この人はすごい、ヤバい”と自分が思う弾き語りをされている方と2マンスタイルで、連続でやります」と発表して、ワンマンに辿り着きました。バンドでもソロでも、僕はそういう“ここに向かっていくぞ”みたいなものを作るのが好きなんです。

──目標を掲げて、有言実行で進んでいくんですね。

seek:このアルバムを出すタイミングも、実はいろいろと迷っていたんです。音源をいろいろな方に送らせていただくんですけど、KOHTA (PIERROT / Angelo / GUMMY)さんにお会いした時に、「家でもちょこちょこ聴いてる」と言ってくださったのがうれしくて。 過去に4曲シングルをリリースしたんですけど、会うたびにKOHTAさんは、「この曲はこうだったね」みたいな言葉を掛けてくれていて。それで「2マンを絶対にやりたい」と思ってお声掛けさせていただいたらOKをくださり、2027年5月〜6月にはKOHTAさんと、ベース&ボーカルとしての2マンツアー<生鳴ノ共命>をさせていただけることになったんです。そのツアーに向けて10月から2マン企画<相食む>を6ヶ月連続で行ないます。

──このアルバム『白日をたゆたう雨虎、水に溶ける数列』を携えてですね。

seek:アコースティックって面白くて、皆さん本当に身ひとつで、それぞれに手法が全く違っているんです。ヴィジュアル系に限らず他ジャンルの方にも出演していただけているので、皆さんの戦い方というか、アプローチの仕方がすごく千差万別で。一緒に旅を回っていても、その人の個性が剝き出しになるんですよね。アコースティックをやるようになって、“その空間の中でどう盛り上げるか”もそうだし、逆に言えば引っ張られることも多くて。俯いてる方がいらっしゃったら“なんでこの人俯いてんねやろ? そんなに面白くないんかな? はたまためっちゃ世界に入り込んでんのかな? 眠たいんかな?”みたいな(笑)。バンドの時ももちろんありますけど、アコースティックの時は特に、“今どこで誰が何をしているか”に影響されるし、バーカウンターでグラスがチンと鳴っただけで空気変わっちゃったりもするわけで。そういった、より研ぎ澄まされたものを経験させてもらって、それを含めてやっと楽しみながらできるようになってきています。アコースティックスタイルとバンドスタイルとを含めて、自分の表現方法は広げていけていると思うので、今回はまずこのアルバムを作ることができたということが一番うれしいですね。

──反響が楽しみですね。

seek:そうですね。やっぱりバンドのイメージを持ってくださっている方がいればいるほど、そのイメージが大きければ大きいほど、めちゃくちゃギャップがあると思うので。27年、奇抜なバンドスタイルでやってきたこのseekというやつが“こんなことを考えてたり、こんな作品を作ろうとしてたりするんだ”と、中身をぜひ聴いて知ってみていただけるとうれしいです。

取材・文◎大前多恵
撮影◎小松陽祐 (ODD JOB)/インテツ(LIVE)

 

■アルバム『白日をたゆたう雨虎、水に溶ける数列』
2026年10月7日(水)発売
【CD】SWIM-0007 4,000円(税込)
ライブ会場 / 通信販売:https://mimizuq.shop-pro.jp
配信リンク:https://nex-tone.link/A00227850
発売元:凡思社
01.dot
02.不透明人間
03.稀代の鼠
04.白濁に酩酊、泥濘の睡蓮
05.永遠の微熱
06.夢みる心臓
07.夜掴奇譚
08.相食む
09.月と黒猫
10.not a spell
11.行雲流水

▼RECORDING MEMBER
Vocal & Bass:seek
Guitar:aie
Piano & Clavinet & Accordion:西山小雨
Drums:晁直
▷M-5 / 永遠の微熱
Drums:楠瀬タクヤ
▷M-11 / 行雲流水
Electric Guitar:AYA
Acoustic Guitar:Kotaro Shibatani
Drums:Daisuke Miki
▼RECORDING STAFF / STUDIO
Guitar & Drums Rec Engineer:Takayuki Sasaki
Rec Studio:MUTEC STUDIO
Vocal & Accordion Rec & Mixing Engineer:Junichiro Kusumoto
Rec Studio:STUDIO SONGS
M-5, 11 Rec Studio:POWER HOUSE STUDIO
Mastering Engineer:Takayoshi Manabe
Mastering Studio:Crown Mastering Studio
Jacket Design & Art Direction:Ryo Misaki
Photographer:Yosuke Komatsu (ODD JOB)
Hair&Make:Miki Sato
STAFF:Kaori Yoshihara
Executive Producer:Takuma Shiramizu(polka dot creative)
▼Special Thanks
Psycho le Cému
Mix Speaker’s,Inc.
MIMIZUQ

 

■<seek弾き語り2MANシリーズ「相食む」>
▼2026年
10月11日(日) 東京・下北沢演家
 w/ 松永天馬(アーバンギャルド)
11月14日(土) 東京・下北沢演家
 w/ マヤママユ(DaizyStripper / the god and death stars)
12月12日(土) 東京・下北沢演家
 w/ 天野攸紀(kein)
▼2027年
1月09日(土) 東京・下北沢演家
 w/ IKUO (BULL ZEICHEN 88 / Rayflower)
2月13日(土) 東京・下北沢演家
 w/ MASASHI(CASCADE)
3月13日(土) 東京・下北沢演家
 w/ Kiyoshi freeman (hide with Spread Beaver / MADBEAVERS / machine / Lucy)
open17:30 / start18:00 ※全公演
●チケット
前売¥5,000-(tax in / D別)

 

■<seek弾き語りワンマン「水槽のたゆたう」>
▼2026年
12月13日(日) 東京・下北沢演家
・第九十六回 魚ノ眼会員限定
 昼公演:open12:30 / start13:00
・第九十七回
 夜公演:open17:00 / start17:30
▼2027年
2月14日(日) 東京・下北沢演家
・第九十八回 魚ノ眼会員限定
 昼公演:open12:30 / start13:00
・第九十九回
 夜公演:open17:00 / start17:30

4月9日(金)〜11日(日) 沖縄
・第百回
※詳細後日発表

 

■<凡思社企画「生鳴ノ共命」>
出演:KOHTA (PIERROT / Angelo / GUMMY)、seek(Psycho le Cému)
※ベース&ボーカルによるソロバンドの東名阪2MANツアー
▼2027年
5月29日(土) 大阪・心斎橋CLAPPER
open16:30 / start17:00
5月30日(日) 愛知・名古屋Heart Land
open16:30 / start17:00
6月12日(土) 東京・渋谷Star Lounge
open17:00 / start17:30
●チケット
前売6000円(D別)
・大阪公演:https://tiget.net/events/521930
・名古屋公演:https://tiget.net/events/521931
・東京公演:https://tiget.net/events/521933

 

 

4 / 4
続きを読む