「M-SPOT」Vol.066「今後も増える?今までなかったメンバー構成のバンド」

2026.09.29 20:00

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時代を重ね音楽文化も醸成が進むと、これまでなかったような思想や価値観も自然と生まれてくる。昨日までの非常識が常識となり、これからの常識もいつしか色褪せた非常識になるものだ。

今回紹介するバンドは、ボーカルとトランペットという2人組。現時点では稀有なメンバー構成だが、これぞまさしく多様性というものだろう。その音楽と活動スタイルを紐解いてみよう。コメンテーターはTuneCore Japanの野邊拓実、そして進行役はいつもの烏丸哲也(BARKS)である。

  ◆   ◆   ◆

──アンブロワジーと読むのかな?Ambroisieという二人組のバンドがいるんですが、ちょっと変わっていまして、メンバーが歌い手とトランペッターなんですよ。

野邊拓実(TuneCore Japan):そんな編成あるんだ。

──歌い手とトランペットは不変で、楽曲作成時に集まったメンバーセッションにより音楽制作をするというスタイルなんだそうです。どの曲を聴いても当然ながらトランペットが入ってくるんですね。個性という点では抜群ですが、曲によっては悪目立ちしてしまうトランペットを恒常的に登場させるスタイルって、なかなかのチャレンジャーですよね。

野邊拓実(TuneCore Japan):メンバー編成って難しいですよね。どこまでをパーマネントメンバーにして、どこまでをサポートメンバーにするのかみたいな。そう言えば、くるりも正式メンバーにトランペットがいたことがありますよね。トランペットの人がパーマネントでいると、毎回絶対にトランペットを使わなきゃいけないっていう制約が出てしまいますよね。

──正式メンバーであれば、自ずとそうなるでしょうね。

野邊拓実(TuneCore Japan):バンドとしてトランペットを必ず使うって結構難しいぞって思いますよね。2~3曲なら全然いいんですけれど、全曲入ってなきゃいけないっていう制約で、かつアプローチも変えていかなきゃいけないわけじゃないですか。それに比べればギターって便利で、いろんな音色があって飛び道具みたいな使い方もできるし、そもそもクリーン/クランチ/オーバードライブ/ディストーション/ファズみたいな段階をつけられたりとかもするし。

──演奏スタイルも様々で、カッティングもできるしソロプレイもできるし、多彩ですよね。

野邊拓実(TuneCore Japan):汎用性が高い楽器…キーボードとかギターがいるのは分かるんですけど、トランペットって難くね?って普通に思います。

──和音も出せないので、単音メロを奏でるだけですし。

野邊拓実(TuneCore Japan):そうなんですよね。ま、たまにエフェクターで和音を出される方とかもいらっしゃったりしますけど。

──レコーディングでは多重録音すればどうにでもなりますけれど。

野邊拓実(TuneCore Japan):サックスが常駐しているバンドのことを考えると、曲ごとにサックスの入れどころっていろいろですし、後ろに回ることも前に出てソロをやることもできるので、もしかしたらトランペットでも結構できるのかな…僕にはどうやって成立させたらいいかちょっとわからないれど。曲を聞いた感じだと、ベースとなる楽曲にボーカルとトランペットが載っているという状態なので、トラックで曲ごとの違いを出して、ボーカルとトランペットは同じスタイルで載せていくというやり方もありなのかな。

──なるほど。トランペットの音色とフレージングは場合によって「悪目立ちする」と言ってしまったけど、必ずトランペットの音があるというアイデンティティの強さは強力なので、トランペットの音を聞くだけで「なんかAmbroisieみたい」と思わせたらこっちのもんですね。

野邊拓実(TuneCore Japan):最強ですね。

──そういう意味では、まだ誰も踏み入れたことのない部分で勝負に出ているのかも。

野邊拓実(TuneCore Japan):そうですね。5月にお台場で開催された<CHIMERA GAMES Vol.11>に出演していたZIW × Yuka Kawabataもトランペットとラッパーの2人組ですけど、トラックごとに曲調に変化がありつつ、トランペットが前に出てたり、あるいは後ろの方でちょっとメロなことやったり…という使い分けがあって、中心にはZIWのラップがあるので、全曲2人きりでも「ずっとトランペットが入ってて、うるさいな」みたいなことは全く無いですよね。

──確かに。

野邊拓実(TuneCore Japan):その楽器の必殺技みたいな、特性の出し方にもよるのかな。

──そうですね、その固定されたイメージに我々がとらわれすぎちゃってるのかもしれない。

野邊拓実(TuneCore Japan):必殺技以外の持ち玉をいかに持っているかによっても、成立具合は変わってくるのかもしれない。そもそもギターとかピアノっていう楽器が便利すぎるというか、汎用性が高すぎるだけで、ギターでも前に出すぎちゃってうるさい事ってありますもんね。

──新しい感覚に刷新されていくんですね。それこそ1990年代当初はT.M.RevolutionもB’zもなかなか理解されなかったですからね。「ひとりなのにユニット?何なの?」「2人?バンドじゃないじゃん」みたいな(笑)。

野邊拓実(TuneCore Japan):要は珍しいってだけなんですよね。単純に珍しかったり、前例のない編成だから「変なの」って思っちゃっただけで、否定的に見る要素は何もない。特にバンドを演っている側からすると、どうやって成立させんの?それ…みたいな観点が入ってしまうから「変なの」って思ってしまうのであってね。

──確かに、バンドマンより普通のリスナーの方が引っかからないかもしれない。

野邊拓実(TuneCore Japan):「へえ」で終わるかも。

──「いつもトランペットの響きが入ってて素敵ね」ってだけ。

野邊拓実(TuneCore Japan):なんかこの中級者特有のうがった見方ってありますよね。こういうものを完全に排除できた時、僕はリスナーとしても表現者としても上級になれると思っているんで、中途半端な観点が入ってしまうのはよくないなって反省します(笑)。

──固定観念や先入観は罪ですね。

野邊拓実(TuneCore Japan):そうですね。ちょっと和声とかがわかるようになってきたりすると、「なんかここは、もうちょっといい感じのクリシェとか入れた方がいいんじゃないの?」みたいなことを思いがちで、そんなのは良ければいいんだという立場にも立てないまま、その過程にこだわってしまうんですよね。

──そこに行き着く過程にはとても重要な意味があるけれど、リスナーには関係ないという(笑)。

野邊拓実(TuneCore Japan):そう、そこは一生悩んでいくことと思っていますけど、今回もその1側面に触れられたな気がしました。勉強になります。

──ありがとうございました。

Ambroisie

歌い手とトランペットは不変で楽曲作成時に集まったメンバーセッションによりAMBROISIEの世界観で愛を歌い奏でます
https://www.tunecore.co.jp/artists/ambroisie

協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.

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