【インタビュー】百戦錬磨の男たちによるガールズバンドGUMMY、型破りで刺激的な初EP完成「この4人が楽しめてるってことが大事。まだまだ飽きそうにない」

■音楽にサビは必ずしも不可欠ではないし
■イントロギターこそサビな曲もある
──ライヴでも毎回違うソロが聴けるということですね。ここで改めて訊いておきたいんですけど、GUMMYというバンド名はどんな経緯で決まったんでしょうか?
マッド:女子になることが決まった段階で「じゃあ可愛い名前にしよう」ということになって、いろいろと探し始めて。ただ、POCKYはすでに登録されてる商品名だったし……
Lotty:まずお菓子しばりで考えてたんですよね。
マッド:さすがに商品名をそのまま使うわけにはいかないし、キャンディとかクッキーとかいろいろ考えてた時に「そういえばグミって何なの?」という話になって。そもそもあれはあの形状のもののことなのか、特定の商品名なのかとか、いろいろと調べてもらって。その結果「これ、イケるんじゃない?」ということになったんです。
康太:響きが可愛いし、覚えやすいし。
マッド:「これでいいじゃん!」ということになってからカタカナにするか英語表記にするかを考えて、あのロゴを考えて……。名前自体は可愛いけどちょっと大人っぽいほうがいいよね、ということであのロゴができたんです。シザー・シスターズのハサミのロゴがちょっとヒントになりましたね。そうしたら今度は、マドンナの新譜が俺たちの影響を受けたものになっていて(註:『コンフェッションズ II』のアートワークなどに、GUMMYのシンボルマークに印象の通ずる画像が含まれている)。
──いわゆる“M字”ですよね?
マッド:そうです。でもあれは、俺らのほうが先なんで。逆にマドンナのほうが先に出ていたら、あのロゴを使うことはなかったと思う。

──逆にマドンナの側がGUMMYのロゴを見つけて「あら、いいじゃない。一緒に何かやらない?」とか言ってきたら面白いんですけど。
Gara:最高ですね、それ。
マッド:XのDMとかで連絡が来たりしたらすごいよね。まさにジャスティン・ビーバーがピコ太郎を取り上げて売れた時みたいに(笑)。
──今の世の中、それはあり得ない話じゃないですからね。話を戻しますけど、いずれにせよGUMMYという名前は“可愛くて憶えやすいもの”という意図から見つけたものだったんですね? 読み方は“グミー”じゃなくて“グミ”でいいんですよね?
マッド:はい、グミです。我々が小汚くて品のない女子だからこそ名前ぐらいは可愛くしたいっていうところです。もしもこれで本当に可愛かったりしたら違う名前にしたでしょうけど、“名前だけが可愛い”っていうギャップを狙いましたね。
──しかもグミってどこか人工的なところがあるし、食べ過ぎるのは身体に良くなさそうなイメージもありますよね。
マッド:そこも含めてイメージ通りですね。
Lotty:食べ過ぎると良くないんだけど、なんか癖になるみたいな。
──食べ過ぎると身体に良くないもののひとつに、賞味期限切れのプリンがあると思います。
マッド:おっ、話が繋がった!

──というわけで3曲目に入っているのが「プリンとスプーン」です。康太さんのベースから始まる曲ですが、最初からそういう曲として作られていたんですか?
康太:いや、あれは最後に付けたのかな。
マッド:最初はベース始まりじゃなかったですね。結構ギターで始まる曲ばかりになりそうだったから、「これはベース始まりがいいんじゃないか」ということになって。
康太:うん。その流れで決まったことだったと思います。
Gara:歌メロについては、みんなが想定してるような“イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ”みたいなのを無視して付けていくことが多いんですけど、それでも同じような終わり方になっちゃうことが多くなってしまいがちで。そういう意味でも康太さんのベースで始まり、ベースで終わるっていう流れになったことで、他の曲とは違う感じになりましたね。
──ちょっとポップで意味不明なタイトルではありますが、歌詞にはちょっとした終末感があります。テーマとしてはめずらしいものじゃないですけど、Garaさんにとっては新鮮な題材だったのでは?
Gara:そうですね。aie君と呑んでた時に「もしも世界が終わる日が来たら」みたいな話になって、「もしそうなったら僕、何してるんだろう?」みたいなことを言った時に、「歌詞、それで行ってみよう!」と言われて。確かにこれまであんまり書いたことなかったですね、こういうのは。

──「死神は赤いハイヒールを履いて、首輪を残す」の歌詞にも“愛は戦争”という言葉がありますけど、昨今の世界情勢なども歌詞を書くうえでのモードには影響が少なからずあったのかな、などと思わされました。
Gara:意識のどこかにはあったかもしれない。今回の作品に入ってない曲にも、そういった今の世界情勢みたいなことについてちょっと歌ってるものがあったりするし。ただ、僕がそういうことを歌うことで何かが変わるとかじゃなく、この状況下、こんな見た目の僕が一生懸命“自分にできるのはこれだ!”って歌ってる姿が頭に浮かんできたので……。あと、この歌詞についてはLottyもアイデアをくれて。
Lotty:元々は“賞味期限の切れたプリンにスプーン刺した”だったのかな。それを“ぶっ刺した”にしたほうがアクセントがいい感じになるんじゃないかって提案したんです。濁音を入れたほうがいいフックになるんじゃないかって。
Gara:そうやってレコーディング中にも細かくいろいろと変化していって。この曲には“Woo!(ウー!)”っていうコーラスが入ってますけど、あれもレコーディング当日の思い付きでやったことなんです。なかなかいないですよね、いまどき“Woo!”なんてコーラスをやるバンド(笑)。
──確かにそうですね。“Woo!”ではなく“Spoon!”にしても面白かったかもしれませんが。
Gara:なるほど(笑)!
──あと、可愛くてわかりやすいという意味ではプリンもバンド名候補になり得たのかも。
マッド:確かにそれもアリだったかも(笑)。

──それはともかく、次は「無色サーカス」について。いきなり“Fuckin’”と“Darlin’”で韻を踏もうとする歌詞の強引さがすごいです。
Gara:確かに強引ですよね。なんかこの曲でもコーラスみたいなのをやろうということになって、そこでぶち込んでみたのがこの言葉でした。
Lotty:そうそう、それもレコーディング当日に出てきたアイデアでした。「プリンにスプーン」で“Woo!”というのを録った流れで、この曲にもパワーコーラスみたいなのを入れようかということになって。なんかパーティ感みたいなものを出していったほうがいいのかな、と。
Gara:そこで出てきた言葉が“Fuckin’”だったというのが、いかにも幼稚というか。
マッド:俺ら、IQ低そうだよね(笑)。
──サーカスというのも歌詞のモチーフとしてはよくあるものです。ただ、ありがちなサーカスの世界観とは少し違っているようにも感じられます。
Gara:もうちょっと場末感とうか、寂しげな空気感というか。この曲自体にもそういう印象がすごくあったので。しかもそこにメロディをつけたらより一層退廃感が出てきたというか、廃れてしまったサーカスというイメージが膨らんできて……そうやってまとめていった歌詞ですね。
Lotty:ちなみに3人でやってた段階での仮タイトルは「ミッシェル」でした。
マッド:そうだね。確かこれは、3人で作り始めてた段階での3曲目くらいだったと思う。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTみたいなやつをやろうと思って(笑)。この曲に限らず、そういう理由で仮タイトルを付けていくことが多いんですよ。「ミッシェル」とか「ニルヴァーナ」とか「レッチリ」とか。結局、バンドを始めた段階でいろんなアプローチを試そうとしてた中で、とりあえずいろんなスタイルの曲を作ってみて自分たちに合うのを選んでいけばいいという考えだったんだけど、意外とどの曲もそのまま生き残っていて、なくなった曲というのはひとつもないんです。
──要するに最初の頃は、自分たちの振れ幅みたいなものを見極めようとしていたわけですよね。速い曲をひとつ作ってみたら次は違うものを、というふうに。
マッド:しかも曲が揃ってきてライヴが決まってくると、足りないものを埋めようとし始めるものだし。ただ、面白いことに、そうやってきた中で“使わなくなった曲”というのはないんですよ。作り替えたり再利用したりすることはあっても。
Gara:そう、ボツ曲というのはないよね。

康太:確かにそうだね。そんな中、これはわりと最初の頃に作ったある意味シンプルな曲なんだけど、コード進行が面白いんですよ。
マッド:この曲を作った時点からすでに2年以上経っちゃってるから、当時の感覚を正確に思い出すことはできないですけど、僕のアレンジの癖……半音の使い方とか小節の削り方とか、そういうのがみんなにも伝わっていって、共通言語が増えつつあった頃にできた曲ってことになると思うんです。
康太:半音ずつ上がったり、半音ずつ下がったり。クリシェ進行は、そんなに特殊というわけじゃないんだけど、あんまり普通はやらないようなアイデアを、わりとサラッと投げてくるんですよ、aie君は。それを実際に形にしてみると面白くなるし、Gara君についても“よくそこに歌を乗せられるな”って感心させられるんです。
Gara:aie君ならではのコード進行っていうのがあるんです。“なんでここからそう行くの?”みたいなのが。正直、僕としては苦手とする展開が多いですね、半音で上下させるとかも結構不得意だし(笑)。だけどaie君と一緒にやるってことはこういうことだよな、と自分を納得させてます(笑)。
康太:“あ、そこに行くんだ?”というコード進行は確かにあるよね。しかもaie君の場合、それを狙うんじゃなくてごく自然にそこに行こうとするので。
──自然体でありながら普通じゃないということですね?
マッド:要するに、静かに狂ってるんです(笑)。
Gara:曲に歌メロを付ける時でも、コードと僕の歌が合ってないように聴こえちゃいそうなことがたまにあって。そういう時は「これはどうなの?」って訊くんですけど、「音楽理論的には間違ってるかもしれないけど僕的にはアリ」と言ってくれるんで、僕もそこは気にせず進めていくようにしてます。僕の場合、aie君よりもJ-POPや歌謡曲寄りなので、aie君が好むような、大概の人が普段使わないようなダークな感じのコードに僕の歌が合わさると、意外なくらいポップでキャッチ―に聴こえたりする場合もある。そういうのも発見でしたね。
──面白いですよね。かつては音源制作の現場で大人たちから「音がぶつかってる」とか「そのメロディはコード感に合ってない」とか散々言われてきたわけじゃないですか。今は逆にその真逆のところで独自のものを作ろうとしているわけで。
マッド:でも僕は前から“音がぶつかってて何がいけないの?”と思ってたんで。“それで誰かに迷惑がかかるの”って話ですよね。
康太:僕も昔からそれはずっと思っていて。やっぱり若い頃はいろいろ言われてきたんですよ、音楽理論的な間違いを指摘されたり。でも実のところ、メンバー側としてはそんなことどうでもよくて。音が外れてようが何かが間違っていようが、カッコ良く聴こえてればそれでいい。理論に沿って当てはめていくと正解がひとつになってしまうから、結局みんな同じになっちゃう。その考え方って僕は今も昔も好きじゃないし、どうでもいいことなんですよ。
──プロデューサー不在の環境を楽しめているわけですよね、今は。
康太:そういう立場の人がいると、どうしても理論という物差しどおりに“ちゃんとしよう”ってことになってきますからね。
マッド:うん。でも、たとえば我々がこの先、何枚目かの作品で誰かプロデューサーを立てようってことになれば、それはそれで楽しめる気がします。それこそさっきの“半音遣い”の癖とかを直されちゃったりしたら、逆に新しいものが生まれるかもしれない。若い時はどうしても反発しちゃいますけど、“白鍵しか叩きません”とかそういうルールに則ってやることも、今の自分だったら嫌じゃないかもしれない。

──確かに。そして5曲目に収録されているのが「天国少女」です。これも初期に作られた曲なんでしょうか?
マッド:これは仮題が「ザ・クロマニヨンズ」、いや「ザ・ハイロウズ」だったのかな(笑)。当初、サビがなかなかしっくりこなくて、危うくボツになりかけてたんです。だけどそこで、“サビどうしようかな?”と考えた時に“サビなんか要らなくね?”と思って。それで「ザ・ハイロウズみたいな感じで」って相談したらこうなってきたんです。サビは無しで、そこはドラムだけで、繰り返しのワードだけ乗ってる感じにして。
──確かに、“サビってどうしても必要なものなのか?”という疑問はありますよね。
マッド:そうなんですよ。それが、ここ10年間ぐらいの俺のテーマのひとつだったりもするんです。ニルヴァーナもガンズ・アンド・ローゼズもメタリカの曲も、口ずさむのってサビじゃなくてイントロのギターメロだったりするじゃないですか。カッコいいのはそこだったりする。であれば、音楽にサビは必ずしも不可欠ではないし、挙げた例でいえばイントロギターこそサビなわけで。
Lotty:洋楽ってそうですよね。サビのための音楽じゃなくて、イントロとAメロがずっとループしてるみたいな気怠い展開の音楽が人気だったりする。そこで“サビを作らなきゃ”っていうのはJ-POPの発想だと思うんですよ。要するにサビのためのAメロやBメロになっちゃってる。そうではなくて、イントロとかリフがメインになってるという意味では、洋楽っぽい作り方なのかもしれないですね。
康太:本来ならサビがくるであろうあのドラムパートにしても、「言葉がなくてもいいんじゃないか」というのがあったし。ライヴでやった場合でも、そこで歌うんじゃなくて煽るとか、わりと自由な感じでいいんじゃないかって。結果、Gara君が歌詞を乗せてくれましたけど。
Gara:確かに自由でしたね。しかもAメロにあたる部分が何度か繰り返されるんですけど、そのメロが全部違うんですよ。同じメロが二度と出て来ない。
──サビ不在だからこそ、そうした自由度も高まってくるわけですかね。ルールを知っているからこそルールを壊せるというか。
Gara:かもしれないですね。で、「この曲にはみんなで騒ぐような感じがほしいね」って話をしてて、レコーディングを済ませた日にaie君が「よし、今日も呑みに行くぞ!」と言って、みんなで熟女キャバクラに行ったんですよ。
マッド:その熟女キャバクラに結構いい声の熟女が何人かいたんで、実際使えるかどうかはわからなかったけど、俺、2時間ぐらいずっと会話を録音してたんです。後からそれを“使えるところないかな”って聞きながら探して。だからあれは、俺らの声がないところだけを繋いだものなんです。「ごちそうさまでした」みたいな言葉が入ってるのは、俺らが奢ったからで(笑)。
Gara:べつにそれを録るために行ったわけじゃないんですよ。そもそもはガールズバンドとして、レコーディングの打ち上げも兼ねて、女性の所作を学びに行こうって名目で熟女キャバクラに行ったんです(笑)。
マッド:熟女とか言っておきながらどうせ年下の女の子が付くんじゃないかと思ってたら、ちゃんと目上のお姉さんたちがきて。ちゃんと熟女だった(笑)。「チェッカーズをデビュー当時から追っかけてた」とか言ってたし(笑)。
康太:間違いなく先輩方だったね(笑)。
Lotty:しかもその店、“微熟女”を謳ってるんですよ、“美熟女”じゃなくて(笑)。
