【ライブレポート】yonige、Hump Backを迎えた東名阪ツアー最終公演で「今日は本当に大事な日です」

2026.04.17 20:05

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yonigeの東名阪ツアー<yonige presents「Make up my mind」>が4月14日の東京・渋谷Spotify O-EAST公演にて幕を閉じた。名古屋はハルカミライ、大阪はAge Factory、東京はHump Backをゲストに迎えて行われた同ツアーの最終日は、新曲「芽吹くとき」のInstagramライブがゲリラ的に行われるなど、当日会場に足を運ぶことができなかったファンも会場の熱を感じることができた。8年ぶりとなるHump Backとのツーマンであり、決意の東名阪ツアーで見出した遠回りの意味が証明されたファイナル公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

yonige、覚悟の3連戦。それが4月14日に東京・渋谷Spotify O-EASTにて最終公演を迎えた東名阪ツアー<Make up my mind>だった。まず、その邦訳からして“決心する”である。加えて、名古屋にはハルカミライ、大阪にはAge Factory、そして東京にはHump Backという、好敵手と書いて友と呼ぶような関係値のロックバンドを迎撃する姿勢。どの要素をいかに抽出しても導き出される結論は、ソニー・ミュージックレーベルズとタッグを組み、再びオーバーグラウンドへ駆け出したyonigeが絶好調であることだけだ。

振り返ってみると、一度目のメジャーデビューにおけるハレの舞台となったZepp Tokyoでのフリーライブ<女の子の逆襲>然り、もはやお馴染みとなった4人体制へ変貌を遂げた武道館公演<一本>然り、彼女たちはターニングポイントで要求される高難易度の技を涼しげな顔でクリアしてきたように思う。決して無愛想なわけではなく、ただひたすらに眼前の壁と向き合い、ひとつひとつ着実に歩みを進めてきた。ラブソングばかりが取り沙汰されていたパブリックイメージとの乖離の中でもがきながら、なんでもない日常を少しだけスペシャルに変え、落ち込んだ日をニュートラルに戻してきた。着飾らない。偽らない。隠さない。こんなスローガンがよく似合うyonigeがこのタイミングで、ここまで真紅の情熱を滾らせている事実に価値があるし、それだけの自信がバンドに満ちているということだろう。

【Hump Back】

そんなベストコンディションのyonigeを最大級の愛情で祝いにやってきたHump Backは、彼らと付かず離れずの距離感で歩んできた軌跡を振り返るみたいに、オールタイムベストなセットリストを繰り広げてみせた。林萌々子(Vo, G)がギターを爪弾き出すと、スポットライトに縁取られ、“もう一歩足りてなかった”と口火が切って落とされる。開幕曲は「月まで」だ。消え入りそうな歌唱から次第にボリュームを上げていった林の顔立ちからは、微かに寂しげな香りが漂っており、彼女たちの血液に流れる孤独感と焦燥を否応なしに覗いてしまう。

「yonigeは昔からの友達なんで、懐かしい曲をやります」とドロップした「嫌になる」、「牛丸が好きって言ってくれた曲」と届けた「十七歳と坂道と」、美咲(Dr, Cho)が牽引する3拍子と単音で構成されたフレーズが揺らめく「サーカス」。Hump Backのディスコグラフィーの中でも長い歴史を備えた楽曲群が束ねられていくわけだが、これらに通底しているのは“どこかへ行きたいのにどこにも行けない”という雁字搦めの苦しさと言えよう。空を飛んで、クジラに乗って、夢のステージへ連れ去られてしまいたい。こうした情けなくも身に迫る夢想を吐露していたのが、当時のHump Backだったのだ。

しかし、言わずもがな3人を取り巻く環境は変わった。愛する人ができて、オカンになって、涎の匂いすらも抱きしめたい存在が生まれた。となれば、「あの頃に意味があったんだって言える未来を作るのは、今の僕たちしかいないね」と突入した後半戦は、徹頭徹尾この瞬間の話。相も変わらず飛び跳ねまくるぴか(B, Cho)のに負けじと大熱唱が生じた「番狂わせ」も、どこかキュートなハミングを惜しげもなく注ぐ「オーマイラブ」も、「死んだらめちゃくちゃパーティーして見送ってくれって曲!」とラストを飾った「明るい葬式」だって、大人になった今が最高だと力強く断言していた。

「今日はどうしようもないことばかりだったあの日々に、意味があるって歌いにきた!」──林萌々子

ライブ中盤、林が叫んだこんな発言を見事に実現してみせたHump Backの45分。そして、このカチコミ宣言は、そのままyonigeのステージへ引き継がれることとなる。

【yonige】

「対岸の彼女」で開幕を告げた瞬間、今宵の至上命題は、間違えすぎたかもしれない過去の全てを受け入れることなのだと確信した。なんせ“正しく選ぶことが全てじゃないとしてもさ、今まで間違えすぎたな”だ。メジャーデビュー時のコメントに牛丸ありさ(Vo, G)が「過去の自分を肯定するために、自分に挑戦し続けます」と寄せていた通り、そしてこの日の随所で語られていたように、yonigeは決して最短ルートを選び通してきたわけではなかった。そんな彼らが移りゆく季節を感じながら、どうにか夜を明かす様を投写したこの楽曲は、“この耐えられない寂寞と焦りをどうやって乗り越えるのか?”という大きな課題を投じていく。

このテーゼに対する解決策のひとつが提示されたのが、大阪の公園で騒ぎ回る人々を鋭利な筆使いで描いた「最終回」を経た、「顔で虫が死ぬ」だった。ごっきん(B, Cho)と土器大洋(G)、ホリエマム(Dr)がトライアングルを生成する中、牛丸がふと3人へ目をやる。その風姿にはフロントマンとしての自負が滲んでおり、昨年の47都道府県ツアーの真っ只中に「自然とグルーヴが出てきました」と口にしていたことを思い出す。要するに、現在のyonigeは研ぎ澄まされたアンサンブルによって、これまで手の届かなかった痒い部分までを表現できるバンドになったのだろう。そう考えると、ライブに対する苦手意識を露わにしていた牛丸にとって、全国へのどさ回りがどれほどまでのインパクトを与えたかは明らかだ。

研磨された演奏とyonigeの変わらぬ側面が同時に立ち現れた一幕が、「2月の水槽」から突入した「バッドエンド週末」。ビートを維持することでトラック間の連続性と緊張感を高める巧妙な繋ぎを決めたところで、牛丸が「めっちゃ歌詞飛んだ!」と溢す。あぁ、そうだ。一見無表情に見えるのに、口を開けば赤裸々な感情を氾濫させてくれるのが生来のyonigeじゃないか。「もう一回!」と再トライした末にフロアから発生したシンガロングは、2人のちょっぴり抜けた一面にオーディエンスが惹かれている裏付けでもあったし、両者の信頼関係を具象化したものに他ならない。

そんな観客からの親愛を受け取ったからか、いつになく牛丸も多弁。『girls like girls』のリリース付近で芽生えたポップミュージックに迎合するアティチュードへの違和感を解消し、yonigeを変革するために四苦八苦していた日々を「暗黒期だった」と吐き出した上で、およそ8年もの間、Hump Backとの直接対決を避けていた理由を「Hump Backが眩しかった。今の自分たちじゃ、一緒にやれないし、やっちゃいけないと思っていた」と開けっぴろげに話す。だからこそ、何の気なしに言い切った「今だったら(暗黒期たちの自分たちを)まるっと抱えて、突き進めるなって思った」という台詞は、yonigeの現在地を指し示していた。

「今日は本当に大事な日です。なので、大事な曲をやっていきます」と、ライブも折り返し地点へ。封印していた時期さえあった、いわば目の上のたんこぶ的な存在だった「アボカド」がすんなりとこのブロックに入ってきたことも感涙ものだったが、ホリエが刻むハイハットとリムショットに導かれ、土器のギターが遠方から飛来した「Without you」が白眉。白色のライトが4人の輪郭を克明に切り取る中、紡がれた“今さら「会わなきゃ良かった」なんて思わない”の1ラインは、先ほどのMCと重なり合い、集ったファンに、Hump Backに、そしてロックバンドそのものに向けた慈愛を捧げているかのようだった。

「みんなに届けたいと思った新曲を」とプレイされた「芽吹くとき」は、TVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』のオープニングを飾る曲ながら、隅から隅までバンドの自伝的な詩情で満たされたナンバー。“最初に望んだ未来とは違うけれど最後は何もいらない ただそばにいて”と今夜に込められた思いを濃縮したような一文を手渡し、「さよならプリズナー」から「春の嵐」でピリオドを打った。

アンコールは2曲。ガレージロックの血統を汲むジャズマスターの音色がシンボリックな新曲「Don’t」で“叫ぶ 平凡な日々の歌”とyonigeの本質をノンシャランな言葉であっさりと射抜いたことも驚きだったけれど、この旅路の終止符が「さよならアイデンティティー」や「our time city」といった要所を任されてきた必殺技ではなく、「恋と退屈」だったことに何よりグッときた。“好きなんだ君のことベッドにうずくまって叫ぶだけ”と憎悪に足を踏み入れるほどの恋心で胸を焦がしていたのが、気づけばありきたりな毎日を叫ぶようになっていたのかと。

オルタナティブロック的なアプローチへの第一歩を踏み出した『HOUSE』、ドラマティックな描写とキャッチーへの拘泥から脱却を果たした『健全な社会』、DAWを駆使したエスニカルな作風によって自由度を増した『三千世界』、そして『Empire』。もしかすると遠回りに思えるいくつもの作品を経て、書き殴ったラブソングだって、緻密に作り上げた暮らしの歌だって、街行く人々が抱え込む葛藤を紐解いたナンバーだって、全てがyonigeの構成要素となった。成功も失敗も全部を胸に秘め、さぁ花を咲かす時がやってきた。

取材・文◎横堀つばさ
撮影・toya(Hump Back)/Kazma Kobayashi(yonige)

 

■東名阪ツアー<yonige presents「Make up my mind」>4月14日(火)@東京・渋谷Spotify O-EAST セットリスト
【Hump Back】
01.月まで
02.LILLY
03.嫌になる
04.十七歳と坂道と
05.サーカス
06.番狂わせ
07.短編小説
08.クジラ
09.オーマイラブ
10.明るい葬式

【yonige】
01.対岸の彼女
02.Super Express
03.最終回
04.顔で虫が死ぬ
05.2月の水槽
06.バッドエンド週末
07.Wet
08.リボルバー
09.アボカド
10.しがないふたり
11.Without you
12.芽吹くとき
13.スクールカースト
14.さよならプリズナー
15.春の嵐
En1.Don’t
En2.恋と退屈

 

シングル「芽吹くとき」
2026年5月27日(水)発売
予約URL:https://VA.lnk.to/mebukutoki
【期間生産限定盤(CD+BD)】
ESCL-6249~6250 ¥2,500(tax in)
※初仕様はスリーブケース仕様
▼CD収録曲(初仕様/通常仕様共通)
1.芽吹くとき
2.Don’t
3.Wet
4.しがないふたり(re-arrange ver.)
▼Blu-ray収録内容(初仕様/通常仕様共通)
TVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』
ノンクレジットオープニングムービー

●店舗別購入特典
・yonige応援店:『芽吹くとき』オリジナルはがき
・Amazon.co.jp:メガジャケ
・楽天ブックス:オリジナル缶バッジ
・セブンネットショッピング:オリジナルアクリルカラビナ型
・TOWER RECORDS全店(オンライン含む/一部店舗除く):オリジナルスマホサイズステッカー
・アニメイト:オリジナルましかくブロマイド
※数に限りがありますので、なくなり次第終了となります。
※上記店舗以外での配布はございません。
※各オンラインショップにつきまして、カートが公開されるまでに時間がかかる場合がございます。
※Amazon.co.jp、楽天ブックス、その他一部オンラインショップでは「特典対象商品ページ」と「特典非対象商品ページ」がございます。予約の際は、希望される商品ページであることをご確認ください。

 

■<yonige one man tour 2026「夏の魔法にかかって壊れていくだけのふたり」>
8月06日(木) 東京・渋谷 CLUB QUATTRO
8月10日(月) 大阪 CLUB QUATTRO
8月11日(火) 愛知・名古屋 CLUB QUATTRO
▼チケット
オールスタンディング
adv¥5,000
U-22前売¥4,000
※ドリンク代別
【退屈倶楽部先行受付】
受付期間:4/26(日)23:59まで
https://yonige.net/contents/1064174