【速レポ】<CROSS ROAD Fest>Plastic Tree、変わることのないスタンスと存在の独自性「再会を祝しまして。あのとき一番よく歌ってた曲を」

彼らのライブではおなじみの「Only Shallow」(My Bloody Valentine)が気だるげなムードを振りまくなか、ゆっくりと登場したのはPlastic Treeの4人。長谷川正が野太いベース音を鳴らし、バンドインする瞬間に有村竜太朗が大きくジャンプした「イロゴト」で、本日5番手のステージは幕開けた。
そばにいるのに遠い──そんな切ない想いをギターを鳴らしながら歌う有村のボーカルは唯一無二のゆらぎを備えて、手を前に差し出して握るといった祈りのような仕草も。隙間まで緻密に計算されたバンドサウンドに乗せ、どこか寂しく、哀しく、けれど甘いさざ波を聞く者の心に引き起こして、独特の“プラトゥリワールド”を展開していく。だが、続く「恋は灰色」では一転、同じラブソングながらシニカルな目線の光るリリックに、ナカヤマアキラのエキセントリックなギタープレイも相性ピッタリ。間奏では全員で見合って音を鳴らし、マッシブなベースに続いて斬りこむようなギターソロでも場内をかき乱して、文学的な詞世界と即興的なロックプレイというPlastic Treeの音楽を構成する2つの醍醐味を、見事に両立させていく。


「やぁ! やぁ、やぁ。どうも、Plastic Treeです。<CROSS ROAD Fest>へようこそ。今日は、久しぶりに会えた人もいると思います。また会えて嬉しいです。素敵な1日にしましょう」
と、ここで有村から普段通りのユルいモードで挨拶が。この日の出演バンドは、実は以前すべて同じ事務所に所属しており、イベントでも頻繁に顔を合わせていた奇跡のラインナップでもある。そこで「今日はいろいろ懐かしい対バンということで、再会を祝しまして。あのとき一番よく歌ってた曲を、次、行こうかなと思います」と前置き、有村が1999年リリースの「Sink」をタイトルコールすると、場内には歓声が。ナカヤマの美しいギターアルペジオに始まり、ゆっくり夜へと沈んでいくような心地よさと、見知らぬ場所へと向かう心細さが共存するようなナンバーは、懐かしくも彼ら特有の不思議な感覚を味わわせ、最後に有村が告げる「バイバイ。」も余韻たっぷり。四半世紀を超えたトリップに、オーディエンスからは大きな拍手が贈られた。


後半戦では、よりオーディエンスと一体感を生むナンバーがセレクト。「幕張! もうあんまり時間ないよ。踊ろうか」と投下された「マイム」では、花が乱れる艶やかな景色の見えるリリックを、有村は時に声を荒げながら歌い上げ、お立ち台の上で大きく身体を揺らしたり、時に客席にマイクを向けることも。また、印象的なギターリフを弾くナカヤマに長谷川が近づいて、並んで演奏するという微笑ましい場面も見られた。
さらに「幕張! まだまだ遊んでくれますか!? それじゃあ、お化けごっこして遊びましょう」と「Ghost」をドロップ。レーザー光線が飛び交う下、佐藤ケンケンの正確なビートが牽引する重低音サウンドに乗って、会場中が身体と頭を大きく振り、曲中のブレイクでは客席からメンバーコールの嵐が。狂気をも彷彿させるアグレッシブな音を放ちながら、最後は“僕は強くなれる そんな気がするんだ”と歌い上げ、真にポジティブな姿勢で場内を沸かせた。霞のような儚さも、生気に満ちたたくましさも、同時に出力できるPlastic Treeとは、実に稀有なバンドである。

「今日は会えて良かったです。また、会えたらいいなと思います。Plastic Treeでした」とシンプルに挨拶した有村が再びギターを抱え、硬いギターリフからカウントアップで雪崩れ込んだラストチューンは、これも20年にわたり愛されている「メランコリック」。有村はギターをかき鳴らしながら、ストレートなボーカルで真正面から想いをぶつけ、オーディエンスと歌詞をコール&レスポンスする。胸を締めつけるような焦燥と切なさが交錯する疾走感たっぷりのナンバーで、35分のステージは終了。1993年の結成から32年、1997年のメジャーデビューから28年を経ても変わることのないスタンスと存在の独自性を、久しぶりのオーディエンスに向けても存分に示してみせた。
取材・文◎清水素子
撮影◎緒車寿一
■セットリスト
1. イロゴト
2. 恋は灰色
3. Sink
4. マイム
5. Ghost
6. メランコリック
■<CROSS ROAD Fest>
【DAY1】11⽉15⽇(土) 千葉・幕張メッセ 幕張イベントホール
open12:00 / start13:00
【DAY2】11⽉16⽇(日) 千葉・幕張メッセ 幕張イベントホール
open10:30 / start11:30
〒261-8550 千葉市美浜区中瀬2-1

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