【インタビュー】ストレイテナー、『Next Chapter EP』という名のバンド感とポップが共存する現在地「今の自分達に自信を持って」

2025.10.31 18:01

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■自分がここにいないと歌っている
■相手がここにいないと歌っている

──ところで、その「メタセコイアと月」は、さっきおっしゃっていた’90年代のオルタナを思わせるサウンドで。

ホリエ:自分達の根っこにある、その時代の最先端のロックというか。最近、新しい世代が「カッコいいじゃん」って再評価されたり、新鮮なものとして、また盛り上がってきた感じもあるんですよ。僕個人は新しいものも好きですし、リアルタイムの音楽から影響を受けることが多いので。シューゲイザーも今の若い人達がやっていることに興味があるんですけど、「メタセコイアと月」に関しては、エモとかグランジとか、俺達の中に元々あるんだから、たまにはやってみてもいいかなと思って、やってみた感じでした。

──バンドとしては得意とするところだ、と。

ホリエ:得意とするところかどうかは、ちょっとわからないですけど。そういえば、この曲をやるために僕は新しいエフェクターを導入したんですよ。マエストロのファズトーンなんですけど、

──ローリング・ストーンズの「サティスファクション」で使われたファズの名機だそうですね。

ホリエ:基本、僕はリズムギターだから、リードを弾くこともないし、コードバッキングを歪ませても、そこまで歪ませないし、コード感がちゃんとわかるぐらいの歪ませ方しかしてなかったんです。だけど、「メタセコイアと月」を作るにあたっては、音がもう全部潰れちゃうぐらいのエフェクターが欲しいと思って、ファズやシューゲイザー系のエフェクターを片っ端から集めて、いろいろ弾きまくった結果、一番良かったのがマエストロのファズトーン。っていうか、マエストロのファズトーンを繋げて、弾いた瞬間、“これだ!”って思いました。

──轟音で鳴っているバッキングのギターがそれですよね?

ホリエ:そうです。Aメロはクランチぐらいで弾いて、BメロとCメロは思いっきり歪ませてます。試しに「走る岩」でも使ってみたんですけど、元々の曲から変わり過ぎちゃったからやめました(笑)。

──「メタセコイアと月」は歌とピアノから入ったあと、ギターがジャキッ ジャキッと鳴るじゃないですか。あれ、レディオヘッドの「クリープ」を連想したんですけど、狙っているんですか?

ホリエ:いえ、自然と出ちゃいました。

──あ、自然と。

ホリエ:後から気づきました。これは「クリープ」だなって(笑)。ピアノの弾き語りからバンドがインして、がらっと場面が変わるという意識で作ったんですけど、ドラムとギターとベースが全員で一気にっていうのは、このアレンジしかないだろうってことでやってるんですよ。でも、よくよく考えたら、「クリープ」みたいだなって。

──でも、リスナーとしては、それも含め、おおっ!となると思うんですよ。

ホリエ:もはや忘れちゃってるぐらい地にあるものなんでしょうね。コード感も含め。

──なるほど。それともうひとつ、メタセコイアの花言葉が平和というところも興味深い。

ホリエ:それは後から知りました。

──あ、そうだったんですか。だから、「Next Chapter」と繋がっているのかなって思ったんですけど、それはたまたまだったんですね。なぜメタセコイアだったんですか?

ホリエ:散歩していたら、ほんとにメタセコイアと月が重なって見えたんですよ。それで、「メタセコイアと月」って曲を書こうと思って、書いたんです。

──そのメタセコイアと月が重なっている情景から、この歌詞をどんなふうに導き出していったんですか?

ホリエ:これはもう、本当にギターの手グセみたいなもので、自分の独り言をそのまま書いたような歌詞なんですよ。だから、何かはっきり言ってるわけでもないし、自分でもよくわからないし、自問自答を繰り返しているだけなんです。ただ、ここにとどまっているつもりはないっていう。誰かに対しての感情なのか、自分に対しての感情なのか、そこもはっきりしない曲ではありますね。

──サウンドのみならず、そういう歌詞もこの楽曲が持つ深みのある魅力に繋がっていると思うのですが、「My Rainy Valentine」も何かそういうことを歌っているような気が、今お話を聞きながらしてきました。

ホリエ:近いかもしれないですね。自分がここにいないと歌っている「メタセコイアと月」に対して、「My Rainy Valentine」は相手がここにいないと歌っているんです。はっきりとした人物像がないってところは共通しているかもしれないですね。

──「My Rainy Valentine」は疾走感のあるオルタナサウンドのポップなロックンロールという印象でした。

ホリエ:ストレイテナーが昔からやってきた、2000年代の日本のインディーズロックっぽい、インディパンクかな。日本ってゴリゴリの“これぞパンク”みたいなバンドもいたけど、パンクシーンはファッションのほうに流れていった気が僕はしていて。メジャー7thとか、おしゃれなコードを使ったバンドが盛り上がってたところに僕らもいたので、その頃からやり続けてきた僕らの持ち味というか。すぐに作れちゃうって感じの曲なんですけど、久しぶりかもしれないですね、こういう曲を作ったのは。『The Ordinary Road』で英語詞を復活させたんですけど、おもしろい曲ができたと思ったところもあったので、この曲も英語詞で書いてみました。メロディーを活かそうと思ったら、英語のほうが最初に作ろうと思った自分のイメージに近かったんですよ。