【インタビュー】植田真梨恵、3年ぶり独立後初アルバムに2025年現在の世界「結論は、やっぱり時間は止まりたがっているんです」

■私は歌に魅了され続けている人間なので
■歌を大事にしたアルバムにしたいと
──そういう意味で言うと、「恥ずかしい」のあと、“これでいいんだ”と最初に思えた曲は、どの曲になるんだろう。
植田:やっぱり「田んぼ・トライアル・パチンコ屋」と、「ロマンスを超えろ」です。この2曲は、MTRで作ったまんまの雰囲気を変えず、完コピでアレンジしていった感じです。超シンプルに作りました。
──「ロマンスを超えろ」は、どんな出来方をした曲ですか。
植田:デュエットソングを書いてみたくて作った曲です。本当は男性の声を入れたかったんですけど、男性にしては高いキーで書いちゃったので、なかなかキーが合う人がいなかったから。
──探してはみたんですね。
植田:探しました。でも、そんなに無理してやらなくていいかと思って、今作は私一人で男性と女性の声をやっています。なので歌詞カードも、クローバーとハートで、分けて歌っています。カラオケの画面に出ているやつが好きで、あれがやりたかったんです。
──歌詞のテーマ的には、何を歌いたかった曲ですか。
植田:これは、同じ町で、同じ時に同じ本を読んでいる、知らない男女の歌です。たまたま、同じ本を読んでいるんです。で、その人たちはすれ違ったりもするんですけど、あくまで知らない人同士なんですよ。男性は未来を見ていて、女性は過去を見ているから、男性は未来形で歌っていて、女性は過去形で歌っているんですけど、見ている景色は同じなんですね。という、すれ違う感じのデュエットってお洒落やん?と思って書きました。
──ソングライターとしてすごく技術の高い曲だと思います。
植田:やった! 曲を書いている時は純粋に、“こんなのやりたーい”ぐらいでしか書いていないんですけど、そういうのがやっぱり楽しいですね。生き生きしますね。
──過去と未来という、それもやっぱり“時間”という大きなテーマの中に入る曲ですよね。
植田:テーマとして、大きなことをやってみたかったんです。毎回アルバムごとにコンセプトはきっちりあって、それがないと、何を書いたらいいかわからないんですけど。今回は30代になって、テーマ的に、歴史、人間、時間、太陽、宇宙、科学とか…あと何だろう、言葉とか、そういう昔から当然にある決まりみたいなもので考えて、捉え直して、作ってみたいというのがありました。漠然としていたんですけど。

──なるほど。それで、何か出ましたか。結論は。
植田:結論? 結論ですか?
──『時間は止まりたがっている』というタイトルのアルバムを作り上げて、“時間って何だろう?”というテーマに、結論は出たのかどうか。
植田:結論は、やっぱり、“時間は止まりたがっている”んですよ。そこが私の結論でした、今作の。昔からの営みを考えた時に、今の人間の生活というものが、具体的に浮かび上がってきて。
──昔って、本当に昔、自分がいない時のこと?
植田:そうです、太古、古来(笑)。ホモ・サピエンスから考えた時に、それこそ宗教が生まれてとか、「恥ずかしい」という歌が、教会で歌うことをテーマに作っているから(※「恥ずかしい」の初演は<LAZWARD PIANO>教会ツアー)、誓いとか、結婚とか、そういう大きなテーマが今作に絡んだんだと思うんですけど、その中で…です。
──太古の昔から、時間は止まりたがっているのではなかろうか?と。
植田:はい。今の、2025年現在の人類の生活を見た時に、文化的な意味で、時間は止まりたがっているのかな?と思ったんです。

──確かに、時間が進めば進むほど、世の中が進歩して、いい時代が訪れるのではないか?という考え方は、今となっては幻想のように思えます。それが、懐古、ノスタルジーへの興味という形で、植田さんの歌に出てきているのなら、共感します。
植田:嬉しいです。
──その上で、歌を作ることって、その中に時間を閉じ込めることでもあるのかな、と思うんですね。歌にはそういう力があるし、そういう歌を作ることができる人って、素晴らしいなと思うんです。
植田:前にもお話した気がするんですけど、たとえば子守歌とか、歌って言葉とメロディだけで、口伝えで継いでいったものがあるじゃないですか。そうやって残ってきているものがたくさんあって、それはやっぱすごいと思うんですね。編曲とか録音とか、そういうことは置いておいて、母から子へ受け継がれていく言葉やメロディがあるということは、とても素敵だと思うし、私は歌に魅了され続けている人間なので、そういう意識で、歌を大事にしたアルバムにしたいと思っていました。
──そういうアルバムだと思います。中身については、聴いてくれる人の感性にゆだねたいですけど、たくさんの人に聴いてほしいと思います。そして、この先の活動がますます楽しみです。
植田:このアルバムを作っている時に、’70年代、’80年代の曲をいっぱい聴きながら制作していて、大好きな曲もできましたし、“もっとこんなこともやりたい”という部分も出てきたので、またすぐ作りたいなと思っています。

──いいですね。じゃんじゃん作ってください。その前に、アルバムのリリースツアー<LIVE TOUR 2025 [時間は止まりたがっている]>があるので、そっちを楽しみにしています。10月から11月にかけて、名古屋、久留米、東京、大阪を回る4本のツアー。どんなツアーにしたいですか。
植田:まず会場が、ライブハウス2ヵ所、歌舞伎座1ヵ所、ホール1ヵ所という、結構バラバラな場所なので、“こうしてああして、この曲でこう”とかいう決まりはなしで、見方も関係なく、ナチュラルに楽しんでもらえたらいいなと思います。今回は、バンドメンバーが全員変わって、歌えるメンバーを連れていけそうです。コーラスがいっぱい入っているアルバムなので、“とても歌うバンド”という感じでお届けします。
──楽しみです。
植田:それこそホールとライブハウスでは、また変わってくる気もしますし、みんなが座って見ているのか立って見るのかもちょっと想像つかないんですけど、楽器の準備はしっかりして、本番はもう好きにしていいかなと思ってます。あんまり緊張しないで、しっかり音楽をやりたいなと思います。
取材・文◎宮本英夫
撮影◎TOYO

■アルバム『時間は止まりたがっている』
2025年9月24日発売
UMPM-0002 / ¥3300(tax in)
PRIMARIE RECORDS
CD詳細:https://uedamarie.net/2025/07/31/umpm0002-2/
配信リンク:https://linkco.re/D7AdZGaQ
▼収録曲
01 暴走列車
02 アストロフォーインダストリアル
※2025.5.31 digital release
03 田んぼ・トライアル・パチンコ屋
※2025.6.28 digital release
04 SAD VACATION
※2025.7.31 digital release
05 恥ずかしい
※2024.8.6 digital release
06 Lady Frappuccino,
※Ranとのコラボ曲セルフカバー
07 バイオリンの見た夢
08 百獣の王
※下北沢SoundCruising2025コンピレーションAL収録
09 double STANDARD
10 ロマンスを超えろ
※2024年クリスマスにデモ音源をYouTubeに公開

■<LIVE TOUR 2025 [時間は止まりたがっている]>
【愛知公演】
10月19日(日) 名古屋 ElectricLadyLand
open17:00 / start17:30
(問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
【福岡公演】
10月25日(土) 久留米 シティプラザ 久留米座
open17:00 / start17:30
(問)キョードー西日本 0570-09-2424
【東京公演】
10月30日(木) 恵比寿 LIQUIDROOM
open17:45 / start18:30
(問)Production Makee
【大阪公演】
11月01日(土) 東京建物 Brillia HALL 箕面 小ホール
open17:00 / start17:30
(問)サウンドクリエーター 06-6357-4400
▼チケット
・LIVEHOUSE (愛知 / 東京):¥6000
※ドリンク代別途 / オールスタンディング / 整理番号付
・HALL (福岡 / 大阪):¥7200
※全指定席
・学生割引 (全公演):¥4000
※愛知、東京公演はドリンク代別途必要
詳細:https://uedamarie.net/2025/05/14/livetour2025/
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