【インタビュー】SARD UNDERGROUND、ソロ体制初のアルバムに葛藤とポジティヴな未来「宝物だと思っています」

2025.09.18 20:00

Share

■まっすぐな歌い方がSARDらしさになった
■あえて使わないというのが逆に気持ち良くて

──アルバムの中で一番先に配信された「I still believe」は、どんな思いで書いたものですか。

神野:「I still believe」は、二人がSARD UNDERGROUNDを脱退することになってから書き始めた曲なので、二人に向けての曲でもありますし、これから一人でやっていく自分への曲でもあるし、ファンのみなさんの心への曲でもあるし。ということで、あったかい曲になったんじゃないかなと思います。

──アルバムの中で一番あったかさ、優しさを感じる曲だと思います。と思ったら、「ダイナマイト サマーナイト」みたいな、思い切りハジけた明るいポップスもありますね。

神野:この曲もずっとやりたかったんですけど、歌詞を書くのが難しすぎて進まなかったんですよ。一人ではどうしても煮詰まりすぎちゃって、「もう無理!」となって、プロデューサーさんに相談しました。ABメロの歌詞しか出て来なくて、「サビで何かヒントありませんか?」と相談した時に、「ダイナマイトとか入れてみたら?」って。そして、この曲は冬の曲に聴こえるけど、「透明感あるサマーソングにしたほうがいいよ」というアドバイスもいただいて。

──確かに冬っぽい、クリスマスっぽいアレンジなんですよね。それがアドバイスによってガラッと世界観が変わった。この主人公の子、可愛いなと思いますよ。一目惚れの相手にぐいぐいアプローチしていく積極的な子。

神野:私はすごく恥ずかしい(笑)。でも、そう言ってもらえると嬉しいです。自分の中にはないイメージなので、挑戦でした。こういう子、モテますかね?

──モテるんじゃないですか(笑)。これだけ積極的に来てくれたら、男の子は嬉しいですよ。

神野:じゃあ、私はモテないです(笑)。この歌詞とは正反対なので。だからめっちゃ恥ずかしいんですよ。ライブで歌う時も、恥ずかしいだろうな。

▲<LIVE TOUR 2025 [FANTASY]>オリジナル楽曲 only day
9月10日(水)@東京国際フォーラム ホールC

──ライブで聴けるのを楽しみにしています(笑)。そして最初に話が出ていた、アルバムの裏テーマとも言える大事な曲の「全部自己責任」。どんなふうに作った曲ですか。

神野:この曲のデモがとても好きで、「やってみたい」とプロデューサーさんに話した時に、「ラップを入れてみたいよね」という話になって。デモにはラップゾーンがなかったので、作曲の大野(愛果)さんのもう一つのデモにあったラップ部分を持ってきて追加して、キーとテンポを合わせてできた曲です。大好きです。

──そしてこの歌詞は、「自分一人でなければ書けなかった」と。

神野:書けなかったですね。昔の自分を思い出す歌詞になりました。夢を追いかけていた自分の気持ちを、今も大切にしたいなというので、あらためて曲にして良かったなと思います。

──“第一印象で決めるのはやめよう”とか、“ゼロから積み上げる”とか。一行一行が自分への言葉というか、教訓のような。

神野:確かに。サビは、くどいぐらい叩き込み型です(笑)。

──歌声もとても力強く説得力があって。これは歌詞に引っ張られてこうなったというか、歌い方って、やっぱり歌詞によって自然に変わるんですかね。

神野:自然に変わっている感じはしますね。でも、変えているつもりなんですけど、最後に全部聴いたら、全部同じに聴こえるので(笑)。もうちょっと違いを出せるようになりたいです。

──そんなことはないと思いますよ。「故障した車」の大人びた歌、「I still believe」のあったかい歌、「全部自己責任」の力強い歌とか、全然違って聴こえます。

神野:そう言ってもらえると嬉しいです。確かに、「I still believe」はこのアルバムで一番明るい声で歌っていますね。

──ソロ体制になってから、歌い方や表現力について、特に意識していることはありますか。

神野:私はビブラートがめっちゃ苦手で、ビブラートを入れたいけどできないから入れられないみたいなのが、ずっと悩みだったんです。だけど、逆にそれがSARD UNDERGROUNDらしさになったと思っていて。まっすぐな歌い方が。今はビブラートもできるようになったんですけど、あえて使わないというのが逆に気持ち良くて。まっすぐ歌って、“SARD UNDERGROUNDやってるな”と思いながらレコーディングしました。

──それ、面白いです。

神野:だから、良かったなと思っていて。初期の頃に、無理にビブラートしなくて。

──そしてもう1曲、3人の頃には書けなかった歌詞だという「TO MY FREEDOM」。この曲については?

神野:この曲は恋愛ソングなんですけど、歌詞はすらっと書けました。曲を聴いた瞬間にイメージがパッと湧いて、主人公の二人の関係性とか、二人の日常を思い浮かべながら書いていったんですけど。今までも、パッと書けた曲って、全部SARD UNDERGROUNDっぽくない歌詞になっていたんですよ、私の中で。だから、“パッと書けたけど、やめておこう”みたいな、出さなかった歌詞が多かったんです。だけど、今回は一人になったし、思い切ってそのまま生まれた歌詞を出してみようと思いました。(マネージャーに)これ、相談したの、覚えてます?

──アドバイスを求めたんですか。

神野:“やっぱりこれ出さないほうがいいよな”と思いながら、SARD UNDERGROUNDっぽく書き直そうと思ってボツにしようとしたんですけど、「一回見てくれません?」とマネージャーさんに言って、歌詞を見せたんですよ。で、「歌ってみるから聴いてほしい」と言って、聴いてもらったら、「めっちゃいいじゃないですか!」という言葉をもらったんです。確か心斎橋の、焼き鳥屋さんみたいなところで(笑)。

──スタジオとかじゃなくて(笑)。

神野:「じゃあこれで出してみたい」と思い切って言った時に、「全部自己責任だから」みたいな話をしたんですよ。一人になったし、どんな印象を受けようが全部自己責任だから、という話をしているうちに、「じゃあ次の曲は「全部自己責任」という曲にしよう」ということになったんです。

──なんと。「TO MY FREEDOM」と「全部自己責任」には、そんな繋がりがあったとは。でも歌詞を読むと、すごく腑に落ちますね。“私らしさ取り戻して”とか、一人になったからこそ書ける歌詞。

神野:そうですね。だから、印象をガラッと変えてしまう曲になるんじゃないか?と心配している曲でもあります。でも「全部自己責任」と言ってから、次の曲が「TO MY FREEDOM」なので。もう任せます、ファンのみなさんに。

──きっと気に入ってくれると思いますよ。

神野:全部自己責任でお願いします(笑)。

──便利な言葉(笑)。でも本当に、どう思うかは聴き手の自由にゆだねられるというのは、とても自然なことだと思います。楽しみですね、どんな反応が返ってくるのか。

神野:楽しみです。特にこの2曲は。でも、どうしよう、“ついていけへん”みたいな感じになったら。

──大丈夫ですよ。

神野:はい。