【ライブレポート】いゔどっと、さらなる進化を予感させる<Live Tour 2025『GUIDE』>ファイナル公演

2025.07.31 20:00

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いゔどっとによる全国5都市を回る<Live Tour 2025『GUIDE』>が、7月21日に東京ザ・ガーデンホールにてファイナルを迎えた。「様々な楽曲の世界をガイドするようなツアーにしたい」という思いを込めたタイトルのとおり、いゔどっとのクリエイターとしての信念が根差した、挑戦的なコンセプトライブだった。

◆ライブ写真

シリアスなSEが流れるとバンドメンバーがそこに演奏を重ね、ステージ中央でいゔどっとが高く掲げた左手を振り下ろして、最新作『Bestiary』の1曲目である「グーフ・ホープ」でこの日の幕を切って落とす。メランコリックでポップなムードに会場を染めると、「ツアーファイナル楽しんでください!」と挨拶をしてダンサブルな「Archly」へ。歌詞の一言一言に余韻を作るように歌い、丁寧に楽曲の物語へといざなった。ミステリアスな「リャンメン」はバンドメンバーによる巧みなアンサンブルと、息を多く含んだ彼のボーカルが心地の良いコントラストを作り出す。切なくも無邪気で、柔らかくもどこか寂しげな空気感に観客も静かに身を委ねた。

自身の作詞作曲曲をたたみかけた冒頭から一転、「フェレス」「ジェニ」とゲスト参加楽曲を立て続けに披露する。ダークかつたくましさのある歌声で楽曲を引き立てると同時に、バンドメンバーのダイナミックな演奏を全身で楽しむように身体を揺らした。ファンクのテイストを盛り込んだ「佰鬼園」ではアンニュイなボーカルも小気味よい。グルーヴィーでダイナミックなアウトロの演奏も華々しく、ステージにいるメンバーが一丸となって“いゔどっとの音楽”の本質や魅力を最大限に引き出そうとしていることがうかがえた。

間髪入れずピアノソロへとつなぎ、純度の高い空間が生まれるとミドルテンポの楽曲のセクションへ。「月日記」をギターレスで、「forever」を同期音+リズム隊の編成で届け、より楽曲を研ぎ澄ます。リズム隊のインストセクションから、ダンサブルかつアッパーな「カラドレス」へスマートにつなぐと、いゔどっとも挑発的なボーカルを存分に開放した。間奏からはギターとキーボードが加わり、音の強度をさらに上げる。音の抜き差しや様々な音楽的手法で楽曲を多角的かつドラマチックに彩った。

このツアーはカバー曲を歌唱せず、オリジナル曲のみでセットリストが構成された。いゔどっと初の試みである。曲により観客がシンガロングで参加するというライブならではのエンタメ性を発揮できる箇所も交えつつ、基盤となっていたのはいゔどっとの音楽欲求であると言っていい。この日披露した半分以上が彼による作詞作曲曲であり、提供楽曲ももちろんソングライターの力を借りながら彼の表現したい世界を追求しているだろう。挑戦的かつ新鮮でありつつも、どこか彼の中に長年存在していた純粋さに触れる感覚もあり、これまで彼がひたむきに積み重ねてきた音楽の奥深くへと導かれていくようだ。まさに“GUIDE”である。

ピアノソロにアコースティックギターが重なり柔らかな音色が響き渡ると、いゔどっとはおもむろに話し出す。「活動を続けていると、見つけるものもなくしていくものもたくさんあって、そのどれもが大事で。出会いと別れを繰り返して、少しずつ自分になっていくんだろうなと思います」と告げると、別れに対する気持ちを書いたバラード「いまさら」を披露した。アコースティック色に富んだ静かな夜を彷彿とさせる音のなかで、一言一言を愛でるボーカルが優しく響く。その後もあふれる感情を注ぎ込むように「赤色と水色」を、低音から高音までフルに使ってスケール大きく「擬態」を歌い上げ、さらに音と一体となって楽曲を届けた。

バンドの演奏に乗せて「もう後半戦なんです。ぶっ壊れる準備できてますか!?」と観客を煽り「ぶっ壊してよ」、アグレッシヴなギターソロから「着火」とロック色の強いバンドサウンドで加速し、目まぐるしい展開が詰め込まれた「Amor」でさらに観客を刺激すると、いゔどっとはピアノソロに乗せて大勢の観客が足を運んでくれたことへ感謝を示す。そして『Bestiary』の5曲の主人公が自分自身を5分割したものであること、その楽曲を好いてもらえることへの喜びを明かすと、「ベントラ」について「みんなが俺とどこまでも一緒にいてくれたらいいなという願いを込めて作った」と話し、その後に実際同曲を本編のラストとして披露した。晴れやかで風通しのいい歌声が、観客を穏やかに揺らす。「これからもどこまでもついてきてくれますか?」という彼の呼びかけに、観客も笑顔と歌声で応えた。

本編をほぼノンストップで駆け抜けたいゔどっとは、アンコールで再登場するとまずは観客とコミュニケーションを取りながらMCを繰り広げ、チルなムードのある「遊歩」で包み込んだ。その後も和気あいあいとしたトークを行い、「毎週のようにライブをしていたからツアーが終わってしまうのがめっちゃさみしい」と吐露する。そして「<GUIDE>をやれて幸せでした」と自然体かつ晴れやかな表情で告げ、カラフルなライトが似合うアップテンポの「ブロードウェイ」でハッピーエンドを飾った。

これまでにない挑戦を多数盛り込んだ今回のツアーは、彼が自身の楽曲で表現したいことを明確に表していたように思う。バンドメンバーによる躍動感のある演奏は、彼のオリジナル楽曲がポップネスかつ巧妙なサウンドデザインで構成されていることを再確認させ、生演奏で音源と異なるアプローチがなされたことで楽曲の新たな表情を感じることもできた。視覚的な面でも初めて衣装でスーツを着用してそれに合ったステージングを試みたり、お立ち台の場所を工夫したりなど、ポジティブな連鎖も起きていた。『Bestiary』と<Live Tour 2025『GUIDE』>で表現者として次なるフェーズに突入したいゔどっと。さらなる進化を予感させる、夜明けのようなツアーファイナルだった。

なお、いゔどっとは8月16日にストリーミングライブを実施。詳細はオフィシャルサイトにて。

取材・文◎沖さやこ
写真◎森好弘

<いゔどっと Live Tour 2025『GUIDE』ONLINE LIVE>
・配信日時
2025年8月16日(土)20:00〜

・視聴可能期間
2025/8/18(月) 23:59

・配信内容
いゔどっと Live Tour 2025『GUIDE』
東京公演(The Garden Hall)収録映像

・配信プラットフォーム
イープラス Streaming+(有料配信)

・チケット販売ページ
https://eplus.jp/guide-online/

詳細:https://ivudot.com/2025/07/26/guideonline/

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