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▲ZEEBRA
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すでに各音楽メディアを騒がせている問題作、キングギドラ待望の7年ぶり2ndアルバム『最終兵器』が10月17日遂に投下される。
かつての彼らの持ち味の代表的なものは、Sucker MCに対する攻撃的なものと強烈なメッセージ性が挙げられる。
まず前者。ウルトラマグネティックMC’sを代表とするヒップホップのオーセンティックなスタイルであるディスものは、我の強いアーティストが集うヒップホップという音楽にとって普遍な手法だ。
しかし、日本の極めて特殊な音楽(芸能)シーンでストレートに表現することは困難であり、生半可な取組みでは逆に消化不良な印象を抱かせることとなるだろう。当然、実力の伴わぬディスなどは笑いものとなってしまうのがオチ。 が、ここでのギドラの非情なまでの攻撃には息を呑まずにいられない。メディアを中心とした対シーンへの苛立ちを表わしたイントロダクション的なM1を筆頭に、情景的なリリックで徹底的に叩きのめしていくM3など、歯に衣着せぬ容赦のないラップが繰り広げられており、無論リリシストとしてのスキルを強くアピールすることも忘れていない。
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| ▲K DUB SHINE |
本作については、やたらとこの手の好戦的な部分が大きく取り上げられている気がするが、他にも注目すべき点は多くある。それが後者。
ギドラは、パブリック・エネミーやブギ・ダウン・プロダクションズら社会的なテーマをラップし続けたアーティスト達にも影響を強く受けており(そのことはM6でもラップされている)、これまた普遍なスタイルのひとつではあるのだが、同様に確かな実力が要求される。
彼らは先にカットされたM7やM12を始め、ドラッグ問題を綴ったM4、タブーとも言える隣国との問題にも触れたM9などで強烈なメッセージを放ち、懐の深さを披露している。
またそれだけに留まらず、同じく先行カットされたM2、M9ではセルフ・ボースト(自己アピール)・モノを、ギャル・ネタをM5でやると思ったら、M6、M11ではストーリー・テラーっぷりを聴かせ、現在のUSシーンの主流でもあるプレイヤー・スタイルとは対照的なM10のような曲までもこなし、ラッパーとしての引き出しの多さを強く感じさせてくれている。
そして忘れてはならないのがもうひとつ、サウンド面にも耳を向けるべきであろう。
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▲DJ OASIS
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ここでも彼らは、今のヒップホップ・シーンでは忘れられがちな、サンプリングがもたらす醍醐味、温かみを充分に生かしたビート・メイクを聴かせている。ネタ感を強く出すことにより、さらに曲のイメージを増幅させているM7、8、12あたりの絶妙なトラックは、今のシーンでなかなか聴くことができないだろう。
また先のM4では、同じくドラック問題をラップしたグランドマスターフラッシュ&フューリアス・ファイヴの古典「White Lines」(Duran Duranもカヴァー!)をサンプっているが、このような以前ならば当然あったはずの、先駆者への敬意を払った大胆なプロダクトも、最近のシーンでは薄れがちだったように思う。
つまり彼らは基本的には何ら変わっていない、のだろう。確かに各々の存在感は、1stアルバム『空からの力』の時よりデカく、逞しくになっているが、本質は全く変化していない。いちギドラ・ファンとしては、こんなやり方でアルバムを作ってくれたことが素直に嬉しい。
文●Masso187um
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