ロッド・スチュワートの名曲カヴァーで再び全英チャート1位獲得！

確実なライヴ活動と作品制作の末に、“UKロックの顔”と呼べる存在にまで成長したStereophonics。

プレスの後押しも煽動も一切ないままのし上がってきたその軌跡は、かの地の音楽シーンでは珍しいパターンだ。１年も前に発売したアルバム『Just Enough Education To Perform』が今年に入ってから再び全英チャートで１位を獲得したのも、そんな彼らの根強い人気を物語っている。この珍しい現象の理由は、新たにボーナス・トラックとして「Handbags And Gladrags」という曲を収録したからだったのだが、日本ではこの曲を中心に、ミニ・アルバムが作られた。

実はこの曲は、Rod Stewartの若き日の名曲のカヴァー。Richard Jones（B）がRod StewartのCDを一昨年のニューヨークでのアルバム・レコーディング中に持参したことが、バンドにこの曲を“再発見”させるきっかけになった。

「いつも、一人のアーティストを決めてCDをまとめ買いするんだよ。で、その時はRodにしたんだよね。そうしたら、Kellyがこの曲を気に入って、いつも歌うようになったんだ」（Richard）

「The Small Facesにいた頃のRod Stewartは好きだったんだよ。ただ、彼はビッグになるにつれてピチピチのパンツをはき出したりしたから、かなり引いたんだけど（笑）」（Kelly Jones：Vo＆G）

元々アコースティック・ライヴでこの曲を演奏したことがきっかけで、録音、そして発表と話が進んだという。これまでにもシングルのカップリング曲でいくつかのカヴァー曲を披露してきたStereophonicsだが、もともとKellyは劇作家を目指したこともある、作詞にコダワリを持つ男。この「Handbags And Gladrags」はKellyが書いたと言っても納得できそうな、どこかシニカルで冷静な目線も印象的だ。

そもそも彼らの場合、カヴァー曲の歌詞はどれくらい重要視しているのだろうか。

「正直、カヴァー曲の歌詞には気を配ってるね。やっぱり、自分のレコードとして出すんだから。この曲も、どこか古いKinksの曲を思わせる歌詞で、僕がこういう手法で歌詞をを書いてもおかしくないって思えるほどなんだ」（Kelly）

先の来日公演は、ドラマーのStewart・ケーブルが急遽参加できなくなり、初日の名古屋では当初予定していなかったアコースティック・セットを披露している。世界中の会場で根こそぎライヴを行ってきた底力があるからこそ、急な事態でもきっちり対処できたのだろう。むろん、レーベル・メイトのドラマーが参加した東京公演などでは、彼ら特有のパワフルな演奏が炸裂。ケリーの渋味と深みを格段に増した声が、彼らが年齢を経験を積むほどに凄みを増してゆくタイプのバンドだと、改めて実感させてくれた。

文●妹沢奈美（02/01/29）