<Radiohead JAPAN TOUR 2004> 4/18@幕張メッセ
1. ゼア、ゼア(H) 2. 2+2=5(H) 3. ミクサマトーシス(H) 3. キッドA(K) 3. モーニング・ベル(K) 4. ホエア・アイ・エンド・アンド・ユー・ビギン(H) 5. ブレット・プルーフ(B) 6. バックドリフツ(H) 7. マイ・アイアン・ラング(B) 8. セイル・トゥ・ザ・ムーン(H) 9. ゴー・トゥ・スリープ(H) 10. ナショナル・アンセム(A) 11. スキャッターブレイン(H) 12. スィット・ダウン。スタンド・アップ(H) 13. パラノイド・アンドロイド(O) 14. エグジット・ミュージック(O) 15. イディオテック(K) --------------- 【encore 1】 16. アイ・マイト・ビー・ロング(A) 17. ピラミッド・ソング(A) 18. ア・ウルフ・アット・ザ・ドアー(H) 19. ストリート・スピリット(B) --------------- 【encore 2】 20. プラネット・テレックス(B) 21. エヴリシング・イン・イッツ・ライト・プレイス(K)
B……『ザ・ベンズ』 O……『OKコンピューター』 K……『キッドA』 A……『アムニージアック』 H……『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』
『コム・ラグ:2+2=5』 東芝EMI TOCP-66280 \2,548(tax in)
1 2+2=5(ライヴ・アット・アールズ・コート) 2 リミクサマトーシス -クリスチャン・ヴォ-ゲル・リミックス 3 アイ・ウィル(ロサンゼルス・ヴァージョン) 4 ペーパーバッグ・ライター 5 アイ・アム・ア・ウィキッド・チャイルド 6 アイ・アム・シチズン・インセイン 7 スキャッターブレイン -Four Tet リミックス 8 ギャギング・オーダー 9 フォグ(アゲイン)(ライヴ) 10 ホエア・ブルーバーズ・フライ
Radiohead OFFICIAL WEB SITE http://www.toshiba-emi.co.jp/radiohead/
●<SUMMER SONIC 03>ライヴレポート
●今、ロックが表現できる最大級のリアル('01年のライヴレポート)
●『キッドA』『アムニージアック』を経てレディオヘッドのたどり着いた場所('03年のインタヴュー)
●レディオヘッドが音楽業界を切る!('03年のインタヴュー・米LAUNCH.com) |
| 思えば、2001年の時分から、ツアーにおけるレディオヘッドの充実振りは本当に凄まじかった。エレクトロニカや現代音楽の要素を駆使し、ロックの次なる可能性を無限に模索した『キッドA』『アムニージアック』というスタジオにおける実験性の強いアルバムの楽曲を『ザ・ベンズ』『OKコンピューター』という、高度なバンド・アンサンブルが要求されるロック的なカタルシス全開の頃のアルバムの楽曲と全く同じテンションで表現しきっていたのだから。あの地下室で鳴らされるような密室性の強い音を、数万人規模のアリーナで汗をかきながらエモーショナルに、である! それは、そこいらの前衛気取りの連中などには決してできないことである。“最高の人気バンドにして、時代の最先端の表現者”。レディオヘッドはビートルズやデヴィッド・ボウイ、プリンスなど、わずかな天才だけが成し得た偉業を手に入れることに成功した。『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』というアルバムは、あのツアーでメンバーが獲得したテンションと表現技能の限りを、それが醒めてしまわないうちに表現した、今の彼らのMAXの瞬間を収めた集大成的なアルバムになる……はずだった。もちろん出来が悪かろうはずはない。だが、にもかかわらず、それは2003年の、いや、彼ら自身の最高傑作としても、もう一つ決定的に認知させることはできなかった。その理由は一体何なのか。僕はそれが気になっていたのだが、その理由がこの日のライヴを観て少し理解できた気がした。
確かに、この日のライヴが彼らのベストなコンディションで行なわれていなかった、という事情もある。トム・ヨークの喉の調子は決して良いものではなかったし、ほかの4人のテンションも、僕が過去5度ほど体験した彼らのライヴに比べると、幾分低めだったようにも思える。だが、ギターからピアノ、カオスパッド、パーカッション、ヴィブラフォンから何でも操れてしまう名手ジョニー・グリーンウッドの圧巻な芸風や、正確無比で微塵の隙もない鉄壁のリズム・セクションには今回もただただ圧倒されるしかなかった。こんな光景はやはり彼らのショウでしか味わえないものだし、初見の人なら卒倒するはずだ。
ただ、僕が観ていて気になったのは、そういう演奏以前の問題なような気もしている。最新作の楽曲が悪いわけでは決してない。ただ、そこからショウの半分近くを構成された場合、グッと込み上げてくるものがもう一つ希薄になってしまったのは正直否めなかった。後から振り返ってみたときに、「マイ・アイアン・ラング」「パラノイド・アンドロイド」「イディオテック」「ピラミッド・ソング」などに匹敵する決め曲が、果たして今作にあったかどうか。そこのところがどうも疑問なのである。そのことは、ファンのリアクションを見るとなおさらそう思えて仕方がない。一際高い歓声が湧くのは昔の曲の方が圧倒的に目立つ。たしかに今回は「ブレット・プルーフ」や「プラネット・テレックス」といった、古くからのファンにとってはうれしい初期の曲を披露する見せ場があった。さらにレディオヘッドにロックを望むファンが変化を重ねる音楽的冒険を重ねる彼らに寛容じゃないという事実もある。だが、それを差し引いても、純粋に演奏曲目を横並びさせてみた場合、今作の曲の印象がどうしても薄く感じられてしまう。“決定的なアンセム不足”。今の彼らがコールドプレイの猛追を受ける形となっているのはそこのところにも理由があるような気がしてならないのだ。
レディオヘッドがロック史上稀に見るイノヴェーターであることは動かぬ事実。だが、昔からのファンはよく知っている。彼らが胸に深く刻み付けるような優れたメロディを元来書けるバンドであるということを。『キッドA』からの流れは今回のツアーでひと段落着いたはず。恐らく全てをリセットして新モードで登場してくるであろう数年後の新作で彼らがどんな冒険をしようが僕は構わない。しかし、どうなるにせよ、過去の名曲群に匹敵し、皆が大歓声で迎えるような“よい歌”が聴ける作品であることを僕は願いたい。 取材・文●沢田太陽 写真●Teppei >>次のページへ進む |
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