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見事なレコードコレクションを誇る狡猾な男と、大仰な詩歌に傾倒する知性派シンガー。Pavementにかかれば、そこらのオルタナティヴロックバンドの音など、すっかりへし曲げられてしまう。

Stephen Malkmusと、熱心なFallファンだったScott Kannberg(クレジット上は当初、各々“S.M.”“Spiral Stairs”となっていた)が組んだ自宅録音デュオを母体とするPavementが、やかましくて投げやりな“ローファイ”シングルを2枚ほど発表したところ、これが英国のDJ、John Peelの耳にとまった。当時の音源は現在、『Westing(By Musket And Sextant)』にまとめられている。

「誰でもやりたいやつは来てプレイしな」という主義のもと、メンバーを増やしていったPavementも、1stアルバム『Slanted And Enchanted』の頃には、さすがにきちんとした形を成すに至ったが、各人の住まいはアメリカの東と西に分かれたままだった。

ジェネレーションXの“無気力王子”的メンタリティを象徴するもってこいの存在として、ロック評論家から奉られた彼らだが、そんな称号すら“Frontwards”の中でMalkmusが、「俺にはスタイルがある/いくらでもある/あんまりあり過ぎて、無駄になっている」と茶化してしまう生意気さが、いかにも彼ららしい。

そうやって自らを笑い飛ばし、我関せずの姿勢を貫きつつも、2ndアルバム『Crooked Rain, Crooked Rain』になると、バンドは一層まとまりを見せるようになる。Def LeppardにもBuddy HolyにもAretha Franklinにも、冒頭の1曲(“Silence Kit”)の中で一気に会釈しておいて、“Filmore Jive”で幕を下ろすこのアルバムは、ロック史批評の役をも果たしていた。『Crooked Rain』からは、“Cut Your Hair”というマイナーなヒット曲も出ている。

『Wowee Zowee』で、彼らはたじろいだ。彼らの作品の重要な資質であるはずの無鉄砲さが、ここではなりを潜め、出来の悪いコンサートさながらに焦点の定まらない混乱が幅を利かす。充電し直しての復活作、『Brighten The Corners』には、ラジオでヒットした“Shady Lane”や、Scott Kannbergによる小曲“Date With IKEA”も収録されていた。