──アルバム『SENTIMENTALovers』は、アコースティックな質感の曲もあれば、ファンキーな曲もありと多彩ですが、サウンド的に何かこだわりはありましたか?
平井: 特にはないですね。今年出したシングルが、せつない感じのバラードが多かったんで、それが全体の核とはなってると思うんですが、新録の曲に関しては、アップめの曲が多くなりました。それはシングルの反動なのかもしれないですね(笑)。新録ものは生録が多くて、生バンドでレコーディングする楽しさを噛みしめてる今日この頃でございまして。
──それにしても、「思いがかさなるその前に…」や「瞳をとじて」は、シングル曲として、また映画やテレビなどいろんなところで耳にする機会がありましたが、アルバムであらためて聴くとまた新鮮な感動がありました。曲や歌声にグーッと引き込まれる瞬間が何度もあって。詞に描かれたストーリーは決してノンフィクションというわけではないでしょうけど、平井さんはどうしてそんなにリアルに伝えることができるんでしょう?
平井: あのー、“どうして?”と言われましてもねぇ、なかなか…(笑)。そう思って下さるのは嬉しいんですけど、自分では分からないんですね。逆に、自分にないものを持ってる人の歌を聴くと、“あー、悔しい”と思ったりしますしね。もちろん自分で作って歌ってるわけですから、自分がグッと感じないものは作りたくないし、自分でやるからには、僕自身が思うリアリティっていうのは、意識してます。けど、それが何かって訊かれたら自分では分からないですね。ただ、僕としては、(曲の中に)必ず毒をひとさじ散りばめたいなとは思いながら作ってはいますけどね。
──毒、ですか?
平井: ハイ。キレイなだけじゃいかんなっていう意識があって。だから、“孤独”とかが曲の裏テーマになってたりするのかもしれませんけど。“あなたがいて私がいて、幸せ!
最高!”みたいな曲がほとんどないのは、そういうことなのかなって思うんですよね。そういう曲も作りたいけど、作れないんですよね。どんなに幸せでも、その裏にある陰を描きたくなるっていうのがあって。
──孤独、陰ですか。そういうものを敏感に感じとる繊細さやこまやかさが、歌を切実に響かせるのかなぁとも思うのですが。
平井: まぁ、どこか僕が不幸なんですよ。いや、どうか分からないですけど(笑)。なんかまぁ、ちまちま、ウジウジする性格だってことです。そういうウジウジしたとこが短所なんですけども、せっかく持ってる自分の資質なんで、それをこうして使ってるというか(笑)。“センチメンタル”って、キレイにもとれるけど、否定的にとると“ウジウジしてる”とか、“女々しい”とか、男がセンチメンタルとか言うなんて、“もっと男らしくせぇっ!”って感じにもとれるじゃないですか? でも、僕はそれを武器にするというか、それが自分にとってはモチベーションになってるところがあるんですよね。だから今回は、“実は自分はセンチメンタルで……”ってこっそり打ち明けるんじゃなく、“センチメンタル”って言葉を真っ向から掲げようと思いまして。それって、男性・女性に限らず誰もが持ってる感情ですし、男性はロマンチストな側面もある。センチメンタルがテーマになってる曲は今回のアルバムだけじゃなく常にあるんですけど、今回は特にそれを掲げてみようと思いまして。
──さっき、“モチベーション”と言われましたけど、そういう自分の本質みたいな部分を見せてしまおう、と?
平井: ま、でもそう言ってしまうと、次のアルバムどうしよう…っていうのがあるので(笑)。別に自分の本質を露にするとか、大それたことではなくて、たまたま今年出したシングルもそうですし、映画にしろドラマにしろ、僕の好きな世界観のものを相手から提示してもらえて、曲を書かせていただいたりっていう出会いがあって。僕が発信するというより、今の時代的に、僕がせつなくなるような作品が多かったといいますか…。
──12/18は幕張イベントホール、12/26は神戸ワールド記念ホールで恒例の<Ken’s
Bar>がありますね。
平井: はい。カヴァー曲とかセットリストも考えつつ、いつも通りではあるんですが、何か新しいこともしたいなと思ってます。来年はデビュー10周年で区切りの年なんで、ちょっとしたことをやろうとかなと考えてもいますので楽しみにしていて下さい。