――平原さんは学生でもあるワケじゃないですか。学業と仕事の両立って大変じゃないですか?
平原綾香(以下、平原):私、休みがあると、何をやっていいのかわからないんですよ。困ってしまう。だから仕事あったほうが気持ちが楽なんですよ。
――スタッフの皆さんが大喜びしそうな回答ですね(笑)。ところで最近は、プライベートで、自分の歌声に出会う機会が多いのでは?
平原:一度だけ、洋服屋さんにいたときに流れたんですよ。思わずはしゃぎましたね。何せ初めてだったんで。うれしくて。こういうふうにして、みんなは私の歌に出会っているんだな、って感動しました。でも、私は歌っていないのに、自分の声が聞こえる状況は不思議でした。

――「Jupiter」の大ヒット、実感ありますか?
平原:ないです。すごいことなんだ、ってことは何となくわかるんですけど。自分でコンサートができて、聴きに来てくれる人がいて、その人たちの顔を見たときに実感できるのかなって思います。
――なら今は、コンサートがしたい気分?
平原:歌いたい! でも(先日ラジオ番組で共演した)泉谷しげるさんに“焦るな”とアドバイスされました。きっちり準備しないと、中途半端なものしかできないから、しっかり準備してやったほうがいい、って。
――さすが、泉谷さん。説得力のあることを言いますね。
平原:最初は怖い人だと思っていたんですけど、すごくいろんなアドバイスをしてくださって。いつか泉谷さんのようになりたい、と思いましたね。
――じゃあ毒舌も勉強しないと(笑)。
平原:“この野郎!”って(笑)。
――その他、こんなアーティストになりたい、もしくはこのアーティストのこのアルバムのような世界を表現したい、といったようなものはありますか?
平原:クリスティーナ・アギレラの『ストリップト』って、彼女の正直な気持ちをさらけ出した内容で。例えば、お父さんに虐待されていた過去を赤裸々に歌詞にしているんですよ。それってすごく勇気のいることじゃないですか。しかも、ダークな内容はリスナーに受け入れられるかどうかわからないし。そんなリスクを背負ってまでも自分を主張して、結果彼女でしか歌えないものを作りあげた。そういうのっていいなって思うんですよ。
――では、今後は自分の人生を語れるシンガーになりたいと?
平原:歌詞を読んで、あーそうだったんだ、って納得させるのは簡単だけど、私はメロディを聴いただけで、メッセージが伝わるようなアーティストになりたいな、って思います。
――実は取材前まで平原さんって、普段はクラシックしか聴かないような、清楚なお嬢様、みたいな印象だったんです(笑)。今回お話をおうかがいして、その気さくなキャラクターに思わず親近感がわきました。
平原:私、普段“お母さま、お茶をいれましたわ”みたいなことを言っているようなイメージでしたか(笑)!? 全然そんなことないんですよ!
取材・文●松永尚久