“The Greatest―史上最強”と名乗ることを許されたラップアーティスト 【前編】
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すべてのラッパーが、アルバムに『The G.O.A.T.』――Greatest Of All Time(史上最高)の頭字語――というタイトルを付けられるわけではない。しかも、それが首尾よくいくかどうかとなると、なおさらである。しかし、LL Cool Jは断じて“ただのラッパー”ではない。7作ものプラチナ/マルチプラチナ・アルバムを誇るこのLadies Love Cool James氏は、一貫してヒップホップや同様のポップカルチャーに影響を与え続けてきた。さらに映画界にも進出して、Robbin WilliamsやAl Pacino、Samuel L. Jacksonといった大御所との共演を果たし、コメディ番組の主演も務めた。様々な役割を器用にこなしながら、なおかつ競争の激しいラップコミュニティにおいて常にリスペクトを集め、他のラッパーたちとは別格の存在であり続けている。そんなLLの10年にわたるキャリアについて、LAUNCHのラップ/R&B部門エディター、Billy Johnson Jr.がインタヴューを行なった。 ――ニューアルバムからの第1弾シングルは何ですか? LL Cool J: ――歌詞を全部聴き取れなかったかったんですが、理解できた範囲から思うに、あなたは本当に“一皮むけた”ようですね。 LL Cool J: ――諷刺といい、隠喩のスタイルといい……、あなたは本当に女性を愛してるんですね。 LL Cool J: モナリザはフランスに行った時に観たことがあるよ。めちゃくちゃ奇麗だと思った。俺は色々なことを曲にするのが好きだし、あの曲もそのうちの1つさ。それに、自分自身や自分がアーティストとしてやっていることに対して、正直であることが大事なんだ。それが俺のポリシーの1つ。あとは、他の奴らより優れていること。これはあくまでもラップという部分に関してだけどさ。まあ、音楽の中で女について語るのは大好きだね。 ――音楽業界で長年活躍する秘訣を教えてください。 LL Cool J: 俺は自分の音楽の中で、常に真実を語るようにしている。俺の曲を気に入らないという奴はいるかもしれないが、そいつらに俺のことを嘘つきだとは言わせない。俺の曲がでっち上げだとは言えないはずさ。変人呼ばわりは結構。実際イカれた作品もあるからね。けど、インチキとだけは言わせない、絶対に。俺は音楽でインチキなんかしない、真実しか言わないのさ。心底感じていることしか歌にはしないし、いい連中に囲まれてるから傷つくこともない。 Def Jamにはキャリアの上で大きな影響を受けたよ。俺はDef Jamにとって初のアーティストで、Def Jamは音楽史上最高のラップレーベルになった。素晴らしいプロデューサーと仕事をしたおかげで、俺は様々なことを聞き、学ぶことができたんだ。アーティストとして知らなきゃいけないことを全部知っているとは、これっぽっちも思っちゃいないよ。けど、少なくともこれだけは言える。俺は何事にも全力でトライするし、ベストを尽くす。自分にできるのはそれだけさ。勝つ時もあれば、負ける時もある。上手くいけば勝てるだろうさ。 ――あなたはヒップホップバラードで成功した数少ないヒップホップアーティストの1人ですよね。一体何からインスピレーションを得るのですか? LL Cool J: だいたい、俺の音楽が嫌いなのは、自分たちがそのうち愛を感じるようになるってことに気付いてない若い男たちだけだ。硬派なのがいいって思ってるようなさ。でも、それは偽りの感情なんだ。だってその半年後には、そいつらも恋をするようになるわけだからね。愛だ恋だって話を嫌がるのは、そういう奴らくらいなもんさ。愛が現実のもので、人生にとって重要な部分を占めているってことを理解してない奴ら。けど、そいつらにも精神的に成長できる機会を与えてやらなきゃいけないんだ。 俺は自分のアルバムで様々なことについて歌っている。例えば“Homicide”って曲があって、それにはこういうくだりがある。「決して蔑んだ気持で言うわけじゃないが/ゲットーじゃコロンバイン高校みたいなことは日常茶飯事だ/けどそんなことが起こったって/誰も何も言いやしない」俺にとっては非常に興味深い内容だ。コロンバイン高校で起こったことは恐ろしい悲劇だと思うし、俺たちの国でも他の国でも、殺人や死が日常的に起こってるんだってことを、ちゃんと知ってほしいからね。この曲で俺は、現実にあった3人の人物の死について歌っている。内容の濃い曲だよ。 我々は時として、社会的・経済的にステイタスのある人間とか、ヘタするとある特定の人種とか宗教を持つ人間の生死にしか興味を示さないように思えるだろ。そこにはまるでお約束のように世間の注目を集める要素ってのがあってさ。でも、人の命は人の命なんだ。アメリカの都会じゃ、毎日のように16、7歳の子供たちが命を失っている。俺はこの国中、いや、世界中がこのことを知れば、何かそれを防ぐ手助けもできるんじゃないかと思ってるのさ。銃規制の法律なんて、ホントはもうずっと前にできてなきゃいけなかっただろうし、そうすれば多くの命を救うことができたかもしれない。今生きてる人たちだけじゃなく、もっとずっと前に都会に生きていた命をね。 別に世の中を軽蔑してるわけじゃなくて、これが真実なのさ。なぜあの(コロンバイン高校の)事件だけが他と違う扱いを受けるのか? 彼らだって、もちろんかけがえのない大切な命だけど、10年前、15年前に失われた命とどう違うって言うんだ? 俺が愛について語る時は、いつもいろんな違った角度から愛を語るようにしている。単に女性に対する愛だけじゃなく、人間愛なんだ。人の命に対する愛なのさ。 ――世間はヒップホップの暴力的な歌詞を、必ずしも字句どおりには受け止めていませんが、あなたはどう思いますか? LL Cool J: さっき言った“Homicide”もそうさ。あからさまに暴力的だ。けど、俺自身は今まで1度だって、人々に憎悪の感情を植え付けようなんて思ったことはない。それに、差別を増長させようとしたことも一切ない。そんなことする気は全くないんだ。人間は、その言動や他人への接し方で判断されるべきだと俺は思っている。そしてヒップホップに関して言えば、人によって見方が違っていると思う。俺は、ヒップホップには社会的メッセージを伝えるための場所があり、同様にハリウッド映画にもメッセージを伝えるための場所があることを、心に留めておくことが重要だと考えているんだ。俺はハリウッドでは映画に出ているけど、現実の社会では目に見えることが全てさ。あまりにも裏表がありすぎなんだよ。 例えば『Goodfellas』みたいな映画がある。ちなみにJoe Pesciは俺の大好きな俳優だけど、銃が壊れるほど激しく顔を殴られ、シートに巻かれてトランクに入れられ、刺されて埋められる男の話だ。同じことをラップで歌ったら、酷すぎるってことになるよ。誰もまともに取り上げようとせずに無視されるか、「そんなこと言うなんて、一体どういう神経してんだ?」って言われちまう。俺のアルバムには2つのヴァージョンがあるんだ。1つは冒涜的な言葉が入ってるヤツで、もう1つは入ってないヤツ。これはエンターテインメントかって? まさしくそうさ。けど、同時に社会的なメッセージも内包してる。そして、若いキッズ向けにはクリーンなヴァージョンもあるってわけ。皆が同じなんてあり得ないだろ。 『Barney』が好きな奴もいれば、『Scarface/スカーフェイス』を観たがる奴もいる。自己表現の方法なんて、人それぞれ違うのさ。それが人間としての価値を左右するなんてことあるわけがないんだよ。人にはそれぞれ役割ってのがあって、もし皆が同じことをしていたら、人間は単なるロボットの集団になっちまう。だから、例えば俺がWill Smithを聴いてて、奴がギャングスタラップは気違い沙汰だって言っても<俺はギャングスタラッパーじゃないけどさ>、俺はギャングスタラップが気違い沙汰だとは思わないし、ただ奴と俺とは自己表現の方法が違うんだなって思うだけさ。まあ、子供には聴かせるべきじゃないって言われたら、そりゃそうだって答えるけどね。ギャングスタラップは、ある程度大人になってから聴くものさ。分かるだろ? とにかく、俺たちにはアーティストとしての表現の自由が必要なんだってことだよ。 ――音楽と俳優業のどちらが、あなたにとってより重要ですか? LL Cool J: 映画をやるのは、また違ったレベルでとても楽しいよ。今までとは全然違う体験をしているわけで、いろんな人生を生きることができるだろ。いろんなカルマや、いろんなシチュエーションで起こる様々な感情とか、普通なら絶対経験できないようなことが経験できちまうんだよ。ある時は警備員、次の日は刑務所の看守、その次の日はプロのアスリート、その次の日は勤勉な労働者、そのまた次の日は妙なスポーツをやってる男。こういう人生が全部体験できちまうわけさ。それってめちゃくちゃスゲェことだろ。 俺自身の人生も、毎日同じことを繰り返しているより、豊かで有意義なものになる。それに、好きなことを仕事にできるなんて恵まれてるし、実際そうなるともう“仕事”って意識じゃなくなるしな。好きなことをやってるわけだから。音楽も映画も、俺にとっては1つの大きな括りの中にあるんだよ。そんなに上手く答えられないけど天才じゃないからさ、俺。まあ、楽しいからやってるのさ。 ――あなたにとって最も意義深い役は? LL Cool J: ――誰か意外な友達っています? LL Cool J: ――誰か意外な人から、あなたの音楽のファンだと言われて驚いたことは? LL Cool J: 【後編】に続く |










