「M-SPOT」Vol.062「ギターレスでメタルを演る新境地」

2026.06.16 20:00

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先人たちが積み上げてきた音楽の歴史や、伴って出来上がってきたジャンルやシーンの流れは、ポピュラーミュージックの偉大な財産だが、良くも悪くも既成概念も生み出してきた。

音楽のフォーマットは、人々が音楽をチョイスする時の指針として、あるいは理解への道標として大きな意味を持つが、一方でクリエイターの自由な発想を阻害し、固定観念で自由な音楽への可能性をスポイルすることになるかもしれない。

そんな中でギターサウンドありきと思しきメタル・サウンドを、ギターレスで表現するバンドが表れた。コメンテーターはTuneCore Japanの野邊拓実、そして進行役はいつもの烏丸哲也(BARKS)である。

   ◆   ◆   ◆

──今回はとても興味深いバンドを発見しました。睡-madoromi-というボーカルとベースによる2人組ユニットなんですが、デスボイスなんかも飛び出してきまして、メタルコアのような要素もあるヘヴィ系サウンドなんですが、プロフィールにある通り「ギターレス・インダストリアル・メタルユニット」なんです。この音楽性で、なんとギターレスなんですよ。

野邊拓実(TuneCore Japan):面白いですね。普通、ギターレスの段階でメタルをやろうと思わないですからね。

──まずは聴きましょう。「鏡像異性体 -ENANTIOMER-」という曲です。

──エレクトロっぽさもありながらも、歪んだベースサウンドを核としたメタル・サウンドですよね。

野邊拓実(TuneCore Japan):そうですね。ギターのいないバンドも世の中には色々ありますけど、ただ、メタルではないだろうって。

──そう。でもこうやって聴くと、ギターサウンドが牽引するメタルの世界観も、ギターレスで作れるんだなって思いました。改めてギターの役割や意味合いを再考するきっかけになるわけで、この柔軟性は奇特ですよね。ライブでの壁のような音圧はどうなるのかなとは思いつつ…。

野邊拓実(TuneCore Japan):原理主義的な考えを持った人と、急進的/革新的なことに価値観を置く人たちが、様々なジャンルごとにいることによって、継承と発展が生まれると思うので、どちらも尊いものだと思います。僕はどちらかというと革新的なものが好きで「おもろいことをやってんな」みたいな、「これを軸にしつつ、この要素を加えたらどうなるだろう」という活動にクリエイティビティを感じたりするので、メタルにおけるギターレスっていうのはすごい新鮮なものだと思いますね。本当に聞いたことないなって思うので。

──斬新ですよね。

野邊拓実(TuneCore Japan):ふと自分のことを思ったんですが、私は昔、ドラムとベースとエレクトロの同期とボーカルというギターレス編成でバンドをやっていたんですけど、この時の僕の思想としては、エレキギターというものが便利すぎる楽器だと思ったからなんですね。

──どういうことですか?

野邊拓実(TuneCore Japan):「エレキギターをジャーンって鳴らすだけで、そこがサビになってしまう」みたいな、簡単にサビを演出できるので「エレキギターを入れて作曲ができるっていうのって、作曲の能力として低くねえか?」と勝手に思って、エレキギターを入れないでドカーンといくものが作れたら、それは本当に作曲の能力が高いってことだよなって(笑)。完全にひねくれていたんですけど、そういう試行錯誤をしていたのを思い出しました(笑)。

──楽器の持つメリット/デメリットに着目して作品作りに向かっていたということ?

野邊拓実(TuneCore Japan):ひとつは、空間の広がりみたいなところがあったかな。空間の広がりだったり迫力だったりとか、スケールを大きくさせる楽器が僕の中ではギターだったんですよね。特にコードで弾いた時の話ですけどね。メタルでも同じように、迫力とか空間を広げるみたいなところにギターの強さがあるって思うので、ギターを入れずにそれをやろうとすると、めちゃくちゃ作曲が難しくなるんですよ。なので、本来ギターがあるはずのところにそれがないというのは、もうその時点でめちゃくちゃ難易度の高い道を進もうとしているので、それだけで応援したくなりますよ。

──睡-madoromi-も野邊さんも相当こじらせてますね。

野邊拓実(TuneCore Japan):でも僕は、最終的にライブでやった時にギターじゃなきゃ出せない迫力とか広がり感があって、やっぱりエレキギターは必要だという結論になって、今やっている音楽では必ずエレキギターが入っています(笑)。でも「そういう考え方もあるよな」とはすごく思いますからね。単純に「いいギタリストが見つからないから、ギタリスト入れてないだけです」ってだけかもですけど(笑)。

──それもあるあるですね。ライブではサポートギタリストがいたりして。

野邊拓実(TuneCore Japan):ただ、いいギタリストが見つからないだけなら「頑張って見つけてください」って思いますし、そういうんじゃなく、こだわりを持ってやっているんだぜっていうんだったら、その道を突き進んだ先に常人には到達できないゴールがあると思うんで、そのまま突き進んでほしいなと思いますね。

──インダストリアルという無機質な工業的で金属的な世界観に対して、ギターという最もエモーショナルな楽器は、元来相性はあまり良くないものかもしれないし。

野邊拓実(TuneCore Japan):確かにそうですね。確かに僕がバンドでギターサウンドを同期で流すのではなく、メンバーとしていて欲しいのは、ギターに肉感的なものを求めているからかもしれない。カラオケみたいな無機質なものではなく、ちゃんとそこに人が弾いている意味を求めているから。そういう意味ではインダストリアルを突き詰めようと思うと、確かにギターはなくなっていくのかも。もしくは、ギターを用いても、いかに肉感的なものを入れさせないか、みたいな。めちゃくちゃ無機質なギターというアプローチも面白そうだなって思いますね。

──クラフトワークみたいな質感かな。

野邊拓実(TuneCore Japan):考えさせられる編成ですね。肉感的なものを感じさせるものって、ボーカルはもちろんですけど、ドラムとギターって大きいですよね。「鏡像異性体 -ENANTIOMER-」にはドラムは入っていますけど、バンドの編成的にはボーカルとベースだけでドラムとギターがいないじゃないですか。もしかしたら本当に究極のインダストリアルを目指しているのかもしれないな、みたいな妄想までできちゃう。

睡-madoromi-

──ライブを観てみたいですね。ステージの運びとかMCとか立ち姿にも自分たちのやりたいことって反映されますから、どんな世界観なのか興味あります。

野邊拓実(TuneCore Japan):インダストリアルという要素がすごく出ているので、それを激化させるというか、深めていっていただけると、多分めちゃくちゃおもろいことになるんじゃないですか?それが多くの人に支持されるかどうかはまた別の問題なんですけれど、少なくともひとつの境地みたいなところには至れるかもしれな。可能性を感じますね。

──メンバーにドラムやギターを入れないで、もうひとりベーシストが入っちゃうとか、好き勝手やってほしいな(笑)。ベースはメロディ楽器にもなりますからね。

野邊拓実(TuneCore Japan):おもろいっすね。めっちゃ面白いことが考えられそう。本当に自由なことができるので、今後どういう進化を遂げていくか、割と期待できそう。変な編成とかどんどんこだわってほしいですね。僕の知り合いにツインギター&ツインベース&ツインドラムのバンドがいるんですけど、やっぱそういう尖りって面白さですし、それに影響を受けて次のカルチャーが生まれたりもしますからね。

──ちょっと注目していきたいですね。

野邊拓実(TuneCore Japan):今後どうなるか、革新が楽しみです。

睡-madoromi-

ギターレス・インダストリアル・メタルユニット「睡-madoromi-」。 眠りと覚醒、夢と現実、正気と狂気の狭間をテーマに、重低音と電子音が絡み合うサウンドに、感情を爆発させるボーカルとデスボイスが絡み合う。 静寂と轟音のコントラストで、観客を「睡(まどろみ)」の世界に引き込む。 VOCAL: MA / BASS: ACK
https://www.tunecore.co.jp/artists/madoromi7777

協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.

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