【インタビュー】緑仙、1stフルアルバムに未来へつなげるための言葉「これが今現在の『僕の一部始終』です」

2026.04.15 18:00

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にじさんじ所属のVTuber緑仙が4月15日、1stフルアルバム『僕の一部始終』をリリースした。同作品には、オリジナルテレビアニメ『ネクロノミ子のコズミックホラーショウ』のオープニング主題歌「確証論」、あだち充『H2』とのコラボ曲「青春の向こうへ」、ヒトリエとのコラボ楽曲「sleep sheep syndrome」、テレビアニメ『最強の職業は勇者でも賢者でもなく鑑定士(仮)らしいですよ?』オープニングテーマ「コンパスは透明」、そして、初めて緑仙本人が作曲に挑戦した「機械仕掛けのワルツ」など全13曲を収録。ポルカドットスティングレイとのコラボ曲「天誅」、cadodeとのコラボナンバー「ジガトラ」という2曲の緑仙ソロバージョンも収録され、緑仙の多彩かつ独創的な音楽性を体感できる1枚として届けられる。

2023年6月にソロメジャーデビュー。以降、フェスやイベントの出演、単独ライブの開催などVTuberアーティストとして新たな可能性を切り開いてきた緑仙。「第1章完結というほどではないけど、いったんまとめて、その先の未来につなげるための言葉」という本作『僕の一部始終』について語ってもらった。

『僕の一部始終』初回限定盤

   ◆   ◆   ◆

■負の感情は大事にしてあげたくて
■僕のような側の人を救えるかもしれない

——1stフルアルバム『僕の一部始終』がリリースされました。メジャーデビューから約3年、満を持してのフルアルバムですね。

緑仙:メジャーデビューして、最初のミニアルバム(『パラグラム』2023年10月発表)を出したときは“やっと出来た! みんな聴いて! すごいでしょ!”という気持ちだったんですよ。“やっと出来た!”というのは今回も一緒なんですけど、もうちょっと落ち着いた“やっと出来た!”なのかなって。人間的な成長なのか年齢を重ねたせいなのか、そういう変化は感じましたね。

——メジャーシーンで音楽活動することを受け入れられるようになったのかも。

緑仙:そうかもしれません……そうだといいな(笑)。

——(笑)。『僕の一部始終』というタイトルは、“ここまでの一部始終”という意味合いなんですか?

緑仙:そうですね。ここで終わるわけではないけど、“いったん、ひと区切り”というのはほしくて。第1章完結というほどではないけど、いったんまとめて、その先の未来につなげるための言葉って何かな?と思ったときに、“一部始終”かなと。

<緑仙ソロライブツアー2024「緑一色」>11月16日 仙台PIT公演

——“まずはこれを聴いて”という入り口にもなりそうですね。

緑仙:VTuberの界隈って、とにかくコンテンツの量が多いんですよ。僕もそうだけど、毎日のように何かしらの配信があって、24時間で消えるストーリーもあって。全部追うのは難しいし、ちょっとでも見逃すと“あー観られなかった”みたいな気持ちになってしまいがちで。僕のことを一番知ってるのは、生まれたときから今現在までをすべて見ている母親で、ファンの人たちにも「どうやっても母親には敵いません」と言ってるんだけど(笑)。『僕の一部始終』というタイトルのアルバムを出すことによって、“これを聴いてもらえれば大丈夫。幸せになれるはず”という気持ちもあって。「これが今現在の僕の一部始終です」と自信を持って言えるアルバムになりましたね。

——緑仙さんにとっても“幸せだったな”と思えるアルバムになった?

緑仙:それがそうでもなくて。ネガティヴとポジティヴが半々というか、どっちが勝ってるかわからない(笑)。それはもうしょうがないというか、僕の人間性や好きな音楽がそういうものなんですよ。“失恋したとき、楽しい曲を聴くか、寄り添ってくれる曲を聴くか”という話がありますけど、僕は絶対にネガティヴ寄りで。SHISHAMOの「忘れてやるもんか」みたいな曲が好きだし、つらいときはそういう曲を聴きたくなるんです。あと“人って独りだよね”みたいな気持ちもあって。三人で歩いていると、いつの間にか一人になってたり(笑)、そういうことが本当に多いんですね。ただ、そのときに感じる負の感情は大事にしてあげたくて、その出力先がずっと音楽だったんですよ。そういう音楽を発信することで、僕のような側の人を救えるかもしれないなっていう。このアルバムに入ってる曲もネガティヴから生まれたものが多いし、だからこそ「幸せだった?」と聞かれると「半々です」みたいになっちゃうんですよね。

——なるほど。1曲目の「終着駅から」は、亡くなられた緑仙さんのおじい様に向けられた楽曲。この曲をアルバムの1曲目にしたのはどうしてですか?

緑仙:“終わりで始まり”という曲から始めたかったんですよね。おじいちゃんが亡くなったときはもちろん悲しかったんですけど、“これをどうやって糧にしていこうか”という気持ちもあって。おじいちゃんが使っていたものをいただいたり、“ここから始まるぞ”という感じもあったので。「終着駅」から始まって、お馴染みのぼっちぼろまるさんと一緒に作った「バケネコダンス」で急に明るくなって……という感じで並べていったら収録曲が決まってました(笑)。

——「バケネコダンス」はちょっとシニカルな雰囲気もあるダンスチューン。ぼっちぼろまるさんとは「イツライ」「ジョークス」などポイントになる楽曲を作ってきましたが、今回はどうでした?

緑仙:ぼろまるさんとの曲作りはけっこう久しぶりだったし、初期っぽい作り方をしてみたくて。僕が普段思っているインターネットへの不平不満、恨みつらみ、言われてイヤだったこと、目にして腹が立ったこととか……そういうのって、別にメモしてなくてもビックリするくらい自分のなかに残ってるんですよ。普段は表立って言えなかったりするからこそ、自分のなかにつっかえて煮詰まってるというか。それをぼろまるさんにお渡しして、ろ過してもらって曲にするという作り方をメジャーデビュー前はよくしていたので、この曲でもそれをやってみようと。かなり純度の高い曲になったと思います。

——インターネットへの愛憎もずっと変わらない?

緑仙:インターネット辞めたいなって、この2年くらいずっと思ってます(笑)。辞めちゃったらみんなに会えなくなるから、仕方なく通ってる感じというか。“このお店、本当は好きじゃないけど、行かないと友達に会えないしな”みたいな感じかも(笑)。

——「青春の向こうへ」は“あだち充『H2』× 緑仙”のコラボによる楽曲です。

緑仙:「青春の向こうへ」の制作は“オタクバトル”でしたね。僕も以前からあだち充先生のマンガが大好きで、『H2』も読んでいたんですよ。楽曲制作に関わってくれた方々もあだち先生のファンばかりで、「どうするどうする?」という感じでキャッキャ言いながら打ち合わせをして。制作の後半はちゃんと揉めましたけどね。「この歌詞だと“ひかり”じゃなくて“春華”じゃないですか?」「いや、そうは思わない」みたいなやり取りをしながら曲を精査して。歌の収録の日も(共同作詞の)RUCCAさんに電話して、「この部分なんだけど」って相談してたんですよ。それくらい熱の入った曲だし、制作中から“早く聴いてほしいな”と思ってました。

——緑仙さんの世代で『H2』にそこまで思い入れがあるって、かなりレアじゃないですか?

緑仙:’80〜’90年代のマンガやアニメがもともと好きなんですよ。時期によって野球マンガにハマったり、サッカーマンガにハマったりしてたんですけど、特にあだち先生の作品は上の世代の方々と「いいですよね!」って盛り上がることが多くて。この曲を作れたことは本当にうれしくて、リリース記念として“あだち充しばり”の歌枠もやりました。

——さらに「天誅」「ジガトラ」の“Solo Ver.”も収録されています。

緑仙:1stミニアルバム『パラグラム』初回盤Bにも収録していたんですけど、改めて聴いてほしくて。「天誅」も「ジガトラ」も、もともとのコラボバージョン(「天誅 / 緑仙 & ポルカドットスティングレイ」「ジガトラ / 緑仙 & cadode」)のほうが聴き馴染みがあると思うんですが、ツアーやライブでは一人で歌わせてもらっているし、雫(ポルカドットスティングレイ)さんやkoshi(cadode)さんに「一人でも歌えるようになったよ」って(笑)。

——なるほど(笑)。

緑仙:ステージで歌うこと自体、どんどん楽しくなってきてるんですよ。最初の頃は、現場でどう振る舞っていいかわからなかったんです。“なんでこんなに優しく接してくれるんだろう?”みたいな感じがあって、なかなか慣れることができなくて。だんだん“アーティストとして大切に扱っていただけるからこそ、それに応える態度でいよう”と思えるようになってきたんですよね。その自覚が歌にも影響してるというか。VTuberのライブはそんなにポンポンと出来るわけではないし、だからこそ一回一回を大事にしなきゃなという気持ちも強くなってますね。以前は“失敗したら次はない”という怖さがあったんだけど、今は“これが最後でもいい”という気持ちでやってます。

——アルバム『僕の一部始終』初回盤のBlu-rayには、2024年11月16日に行われた<緑仙ソロライブツアー2024「緑一色」>仙台PIT公演がフル収録されます。このときのライブはどうでした?

緑仙:久々に観たんですけど、“めっちゃ歌上手いな”って思いました(笑)。1stライブ(2023年6月8日に開催された<緑仙 1st LIVE「Ryushen」> in KT Zepp Yokohama)は自分のミスが気になって観られないんですけど、仙台PIT公演は何回も観ていて。ぜひ皆さんにも観てほしいですね。

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