【ライブレポート】中村滉己、2ndアルバム『Next Trad』発売 & 大学卒業 記念ライブ開催。民謡歌手、津軽三味線奏者、そして新たなアーティストとしての門出

2026.03.27 19:00

Share

中村滉己が3月17日(火)、東京・渋谷 JZ Bratにて<中村滉己 2ndアルバム『Next Trad』発売 & 大学卒業 記念ライブ>を開催した。

民謡歌手で津軽三味線奏者である中村滉己は、現在22歳。2歳で初舞台を踏み、今年2026年で芸歴20年かつ大学卒業という記念すべき節目を迎えた。3月18日には“民謡を聴く、を日常に。”というテーマで制作した最新アルバム『Next Trad』も発表され、この日のライブは中村滉己の門出を祝す、多幸感溢れる一夜となった。

この日、中村滉己は紋付袴の正装で登場。ステージに座ると「十三の砂山」をアカペラで歌い始める。若くキラキラしたルックスからは想像できない、渋く、こぶしの効いた歌声に、会場の空気が凛と変わったのがわかる。一節が終わり津軽三味線が加わると、その音色にも圧倒された。そのまま「津軽あいや節」へ。今度は津軽三味線のみの曲で、速弾きやこの楽器ならではの力強さなどを耳でたっぷり堪能することができた。

静かに2曲を終えた中村が、ここで挨拶。「2ndアルバム発売、大学卒業記念ライブの幕開けです!」と会場に呼びかけると、会場からは温かな拍手が送られた。すごく緊張していると述べつつも「節目のコンサートですので、皆さんの思い出に残る1日にします」と意気込んだ。

今回のライブは、中村滉己の軌跡をそのまま辿る構成となっている。1曲目の「十三の砂山」は、2歳でおしゃぶりを首から下げながら初めて舞台で歌った曲、2曲目の「津軽あいや節」は津軽三味線全国大会史上最年少優勝を記録した際に披露した曲だという。

そして続く「歩 -AYUMI-」は、大学進学で上京した頃に、羽生結弦のアイスショーに出演を依頼され、そのために自身で書き下ろした三味線曲。前の2曲とは異なり、現代風なストーリーラインの曲なので聴きやすい。ショー用の曲だけあって展開もドラマティックだ。ここからコロムビアからメジャーデビューすることも考えると、まさに中村滉己の転機となった曲と言えるだろう。

これまで数々のライブで中村と共演してきた山口真広(Pf)のピアノソロを挟み、中村は洋装に着替えて再登場。山口と2人で松任谷由実の「春よ、来い」を演奏し始める。中村の津軽三味線がメインのメロディーをなぞっていくが、聴き馴染みのあるJ-POPだからこそ、津軽三味線の音色の情緒をしっかり受け取ることができる。

続いては津軽地方に伝わる民謡・ホーハイ節を中村がリバイバルした「HOHAI」。裏声を使った“ホーハイ”という囃子言葉の発声は、昨今のJ-POPではなかなか聴かない技法。津軽民謡の名人初代中村隆志を大伯父、民謡民舞全国大会で内閣総理大臣賞を受賞した中村優美を母に持つ中村の民謡歌手としての実力を堪能しつつも、ピアノとの共演で民謡が新たな解釈で生まれ変わっているのが面白い。

この雰囲気を引き継いだまま、今度は隠岐しげさ節のリバイバル「SHIGESA」。ピアノと津軽三味線の切ないメロディが、会場に海に浮かぶ隠岐島の旅情を生み出していく。この情緒は民謡ならではのものだ。津軽三味線のソロもとてもかっこいい。

中村は、大学に進学して以来、民謡や津軽三味線単体で伝統的な邦楽を演奏していくことだけではなく、いろいろな楽器とのコラボや、いろいろな楽曲のカバーなど多くの挑戦を重ねてきた。山口とのコラボもその中のひとつだ。

ただ、そんな毎日には葛藤も苦労もあった。大学一年生の頃には、「三味線で自分がどこまでいけるのか」と途方に暮れたり、悩みの中に迷い込んでしまうこともあったという。そんな心境をぶつけるように書いたのが、次に披露されたオリジナル曲「LABYRINTH -迷宮-」だ。

しっとりとしたピアノから始まり、悲しげな津軽三味線の旋律が心を刺激する。そこからどんどん力強くなっていったり、優しい音色になったりと、津軽三味線の音でこんなにも心の表情を描けることに驚かされる。伝統音楽の枠を超えていく、そんな中村の強い意思も感じさせられた。

ここで一部が終了。休憩を挟んで二部は、伝統音楽の世界に生まれた中村が、試行錯誤を経て“伝統音楽をいかに現代に広めていくか”を志し始めた時代を振り返っていく。

2024年1月に結成された“ROCKGEN -六弦-”という、 民謡・伝統芸能一家に生まれ育った中村滉己と中村卓也によるプロジェクトでの楽曲披露だ。この2人はもともと一緒にコンクールに出ていたライバルだった。そこから楽曲を作ったり演奏コラボをしたりと、志を同じくして仲を深めていったそうだ。

2人は、まず中村卓也が編曲した「春の海」を披露。一般的には尺八と箏で披露されるお正月の定番曲だが、津軽三味線2本での演奏となると、原曲の雅さに力強さが加わり印象が様変わり。続いての「NIKATA」では2人の弾き方の違いも垣間見えて興味深い。2人のアンサンブルは爽快で気持ちよく、ここまで聴いてきた中村ひとりの津軽三味線の演奏とはまた違った一面を見ることができた。そんな2人の個性が爆発したのが、「絃想 -GENSO-」。2人で夜中に電話しながらできたという曲で、静かな始まりから音の緩急と強弱のコントラストが聴きどころ。

そして「伝統楽器で他ジャンルに挑戦しよう」という2人の情熱を込め、アストル・ピアソラの「リベルタンゴ」を演奏。ガットギターのような表現や、三味線の胴を使った太鼓のような音など、本当にこれが弦が3本しかない津軽三味線なのか?と思わず耳を疑ってしまうほど、多彩な音色を奏でる2人。それぞれのソロ回しでは観客が大きな拍手でどんどん演奏を盛り上げていく。タンゴの名の通り、大きな熱を生んでROCKGEN -六弦-でのステージが終わった。

続いてのタームは、今日初公開のバンド編成。黒レースのシャツに着替えた中村は「自分にとってもやってみたかったコンサートが実現できて嬉しい」と語り、「2026年に本格的なバンド編成をスタートさせます」と宣言した。メンバーは友田ジュン(Key)と竹内大貴(Dr)。たくさんのアーティストのサポートや共演をしている、名プレイヤーの2人だ。この2人とともに、最新アルバム『Next Trad』のテーマ“民謡を聴く、を日常に。”を掲げ、民謡を誰しもが気軽に聴ける音楽に進化させていく。

そんな思いを込めたアルバム収録曲がここから2曲初公開された。秋田港の唄をリバイバルした「MINATO」は三味線と唄から始まるので普通の民謡かと思いきや、キーボードの音色とゆったりとしたドラムでムーディーな雰囲気に。津軽三味線が前に出ておらず、ひとつのポップスとして完成されている。

灘の酒造り祝い唄 リバイバルの「IWAI」は一音目からデジタル音で、とても民謡が始まるとは思えないサウンドメイクだ。が、中村の拳の効いた民謡調の歌声がのったとたん、独特の雰囲気が生まれる。津軽三味線の太い音も、男らしい発声も特徴的で、中村がいかに他では聴けない音楽を作っているかを実感させられた。

中村も「節目の年に新しいスタイルが生まれたというのも、自分にとってはすごく大きなこと」と語る。そして「令和の民謡ブームを作っていきたい」との決意を述べ、最後は自分が亡き祖父からずっと言われていた「基本を忘れない」という言葉を胸に、自身の原点である津軽じょんから節をマイク無しの生音で独奏。何度もコンサートやライブで披露されてきたこの楽曲だが、今日はひとしお思いが込められているのだろう。一音一音の響きが美しく、その場の空気も一気に静謐なものに変わる。今日、中村の軌跡を辿る中でいろんなタイプの曲を聴いてきたからこそ、このシンプルな演奏が胸を打つ。観客もみなその思いで大きな拍手を贈り、大団円で公演が締めくくられた。

しかしもちろんこれでは終わらない。アンコールの声に呼ばれて再びステージに現れた中村は、過去最大スケールのコンサートを11月7日に日経ホールで開催することをいち早くファンに報告。こちらのコンサートでは、『Next Trad』の全曲が聴けるという。

この嬉しい報告のあとにも、サプライズが用意されていた。1stフルアルバム『民唄-TamiUta-』には、ゴスペラーズの「永遠に」などのヒット曲を手がけた作曲家・ピアニストの妹尾武が中村に書き下ろした「流れ星」が収録されていたが、なんとアンコールで妹尾本人が登場。妹尾のピアノに乗せて、中村が「流れ星」を歌うというスペシャルコラボステージが行われたのだ。「流れ星」は、中村が亡き祖父に捧げた思いを込めた楽曲で、何かに悩んでしまったときにも背中を優しく押してくれるような優しい一曲だ。妹尾の美しいメロディとピアノで、思わず涙腺が刺激されてしまう。

そしてもうひとつのサプライズが、『Next Trad』リード曲「OHARA」の披露だった。これは鹿児島民謡のおはら節からインスパイアされたもので、“民謡を聴く、を日常に。” という2026年の中村のスタイルを体現した楽曲だ。友田ジュンと竹内大貴を再び呼び込み楽曲が始まるが、これはここまで聴いてきた演奏とは全く違うものだった。

これまでの中村は民謡をアレンジした曲は歌ってきた。が、この「OHARA」はおはら節という民謡をベースに中村の思いを込めて作り変えた、新しい解釈の民謡なのだ。歌詞も歌い方も、おはら節ではありながら、おはら節ではない。サウンドもデジタルサウンドが印象的な縦乗りのリズムで、見事に民謡とポップスが融合されている。これを生で聴いて、中村のやりたいこと、目指したいと思っている方向が明確になった。彼は、民謡歌手でもない、津軽三味線奏者でもない、それをベースにした新たな道へ踏み出していくのだ。

中村滉己の人生を辿った記念すべきこの一夜。伝統芸能の一家に生まれ、名実ともに民謡と津軽三味線の名手として育った中村が、この現代において何を成し遂げていくのか。それを改めて見届けていきたいと思えた、素敵な公演だった。

取材・文◎服部容子

セットリスト
1.十三の砂山
2.津軽あいや節
3.歩 -AYUMI-
4.ピアノソロ
5.春よ、来い
6.HOHAI(ホーハイ節 Revival)
7.SHIGESA(隠岐しげさ節 Revival)
8.LABYRINTH -迷宮-
9.春の海
10.NIKATA(仙北荷方節〜秋田荷方節)
11.絃想 -GENSO-
12.リベルタンゴ
13.MINATO(秋田港の唄 Revival)
14.IWAI(灘の酒造り祝い唄 Revival)
15.津軽じょんから節 独奏
en1.流れ星
en2.OHARA(inspired by 鹿児島おはら節)

『Next Trad』
2026年3月18日リリース
配信:https://nakamurakoki.lnk.to/COCQ85653
CD:https://shop.columbia.jp/shop/g/gS5925/?utm_source=columbia.jp&utm_medium=buybutton&_gl=11iulx3l_gaMjk2MDU1NzcyLjE3MDQ0OTk2NDM._ga_XN098EYL08*czE3NjkxMzc3OTIkbzIyOSRnMSR0MTc2OTEzOTE4MiRqMTckbDAkaDA.

TRACK LIST:

  1. OHARA《inspired by 鹿児島おはら節》
    (中村滉己・FGCoo 補作詞/FGCoo 作曲/友田ジュン 編曲)*
  2. MINATO《秋田港の唄 Revival》
    (秋田県民謡/中村滉己・友田ジュン 編曲)*
  3. The Nights
    (Avicii 作詞作曲/黒﨑雅文 編曲)
  4. 絃想 -GENSO-
    (中村滉己・中村卓也 作曲/井上一平 編曲)
  5. IWAI《灘の酒造り祝い唄 Revival》
    (兵庫県民謡/中村滉己・友田ジュン 編曲)*
  6. SHIGESA《隠岐しげさ節 Revival》
    (島根県民謡/井上一平・善岡 慧一 編曲)*
  7. NIKATA《仙北荷方節〜秋田荷方節》
    (秋田県民謡/中村滉己・竹内大貴 編曲)
  8. Body Back
    (Gryffin 作詞作曲/黒﨑雅文 編曲)
  9. やまとのこころ
    (吉元由美 作詞/善岡慧一 作編曲)*
  10. TOKYO NEO SPACE
    (TOSHIKI NAGASAWA 作詞作曲)*
  11. 津軽じょんから節
    (青森県民謡)

*ヴォーカル曲

■中村滉己オリジナルステッカー & ポストカード(サイン入り)プレゼントキャンペーン
【応募資格】
・日本国内にお住まいの方
・Xアカウントをお持ちの方
・BARKS編集部 Xアカウントから投稿される応募用のポストをキャンペーン期間内にリポストした方
※必ずご自身のアカウントを“公開”にした状態でご参加ください。アカウントが非公開の場合は参加とみなされません。
※ダイレクトメッセージを受信拒否設定している場合、参加とみなされません。
【賞品名・当選人数】
・中村滉己オリジナルステッカー & ポストカード(サイン入り)
・2名様
【応募方法】
1) BARKS編集部 Xアカウント「@barks_news 」をフォローしてください。
2) BARKS編集部 Xアカウントから下記キャンペーン期間中に投稿されるキャンペーン応募用の投稿をリツイートしてください。
3) 上記で応募は完了となります。
※フォローを外すと応募権利がなくなりますのでご注意下さい。
【応募期間】
2026年3月27日(金)~2026年4月27日(月)23:59まで
※上記期間内にされたリポストが応募対象です。
【当選発表】
・X DMにて当選のご連絡と専用フォームのURLをお送り致します。
・専用フォームで必要事項を入力ください。
【賞品発送】
・配送は国内のみ、賞品は2026年5月上旬に発送予定です。
※やむを得ない事情により賞品の発送が若干遅れる場合がありますので予めご了承ください。
※ 以下のような場合には、ご当選の権利を無効とさせていただきます。
1) ご住所入力の不備により、賞品がお届けできない場合。
2) ご不在などにより、運送会社での保有期間を超えて賞品をお届けできなかった場合。
【ご注意事項】
・転売 (不特定多数への転売、オークションなどを含む)目的でのご応募は、ご遠慮願います。
【個人情報取扱い】
・お客様からいただいた個人情報は、賞品の発送及び、サービスの開発や、個人を特定しない統計資料、当該プレゼント/モニタにおける商品の発送、及びそれにまつわるサポートのために利用いたします。上記以外の目的で個人情報を利用する場合は、予めその目的を明示し、お客様の同意を頂いた場合のみ、個人情報を利用いたします。
※詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。

Related Tags関連タグ