【アルルカン主催<束の世界 2026>ボーカル対談 vol.1】暁 × 千秋「悔しいと思えなくなったらもう二度と対等ではいられない」

4年ぶり2度目の開催となるアルルカン主催イベント<束の世界 -SONOSEKAI- 2026>。
3月1日(日)、東京・EX THEATER ROPPONGIを舞台に、MUCC、キズ、DEZERT、甘い暴力という強力なバンドが集結する。縁の深いバンドたちとともに、アルルカンはどんなライブを作り上げるのか。チケットが即ソールドアウトという期待値の高さも含め、メモリアルな一夜となるに違いない。
イベント開催を前に、BARKSでは、暁と各バンドのボーカルとの対談企画を敢行。第1弾に登場するのは、DEZERT・千秋だ。結成当初から関わりを持ち、2016年にツーマン企画<ダブルラリアット>を開催して以降、お互いの主催イベントには高確率で出演してきた。ともに無二の個性を研ぎ澄ませながら愚直に不器用に歩み続け、キャリアは10年以上に及ぶ。同じ時代を生きる仲間として、改めてそれぞれの「今」を語り合ってもらった。
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──まずは、今回DEZERTにオファーした理由から聞かせてください。
暁:もうずっと当たり前に意識の中にあるバンドだし、僕にとって大切なバンドなので、出てくれないと困るっていう感じですね。
千秋:いつも大きな主催イベントでは誘っていただいてるし、仲間なので、スケジュールがあいてたら出るんですよ。今回も暁から連絡が来て、その時点では他の出演者も知らなかったんですけど、すぐ「スケジュール確認するわ」って答えました。そしたら普通に次の日ライブやったけど、いいよって(笑)。
暁:(笑)。さらに対談をしたいと思ったのは、過去にも対談しているとは言え、ここ数年はちょっと空白の時間があるので。その間にバンドとしての歩幅や、向かう先がそれぞれのものになっているから、そういう部分を話したいなと思ったんです。
──前回の<束の世界 -SONOSEKAI->にも出演していますし、遡ると本当に共演回数は多いですよね。直近としては2025年にキズを含めたスリーマンライブ<VISUAL SCARLET>がありましたが、お互いのライブを見てどんな印象がありましたか?
暁:着実に自分で決めたことをやっている印象があって、シンプルな言葉になるけど、いいライブだなと思いました。終わってからすぐ反省会をしていたり(笑)、相変わらずなところも含めて、変わらんところは変わらんままちゃんと変化していってるんやろうなって。まだ47都道府県ツアーの序盤だったので、いろいろ練っている途中の雰囲気も感じも良かったんですよ。
千秋:アルルカンに対しては、印象が変わらないんですよね。アルルカンを結成してバーッとのびて来た頃に暁と出会って、一緒にメシを食ったりしていろいろ話す中で、今もずっと「どうなりたいん?」という問いを持ってて。自分のことは差し置いてですけど、もう10年くらい「どうなっていくんだろう」って思ってるんです。別にヴィジュアル系としてどうするとかそういうことじゃないですよ? たとえば……本人がどう思っているかはわからないけど、キズの場合はなんとなくこうなりたいんやろうなっていうビジョンが見えるじゃないですか。アルルカンはちょっとわからない。そういう意味では俺らと似てるのかな。
暁:自分でもごちゃっとしてるバンドやなとは思う(笑)。実際、千秋はそういう問いをずっと投げかけてくれていて、<VISUAL SCARLET>のライブが終わったあとも言われましたよ。「おまえ、なんかもっと言うことあるやろ」みたいなことを。
千秋 あー、そうだそうだ! いや、ちょうどDEZERTとキズの武道館が終わってからのスリーマンだったから、みんなその前提で見るんやろうなと思ってて。俺らとキズは武道館後にこれからどうするかをいろいろ考えたと思うから、アルルカンも武道館を目指すと公言しているバンドとして何を言うのかなっていう気持ちがあったんです。別に何も言わなくていいんですけど、どういう表現をするんだろうと思っていたら、結構普通にやってたもんな?
暁:うん。
千秋:だから、「なんでやねん」って言ったんです(笑)。おまえらのスタンスやから自由やけど、グッとくるひと言みたいな、なんかあるやん!って(笑)。準備してくるやろうなって思ってた中で、わりとパッと終わったから。そもそも、最初はてっきりアルルカン主催のイベントやと思ってたくらいで。
暁:僕としても、次にこの3バンドがイベントをするんだったらアルルカンの主催でやりたいという気持ちはあったんですけど、どうすればできるかのイメージがなかなか描けないでいて。そしたら来夢からスリーマンの打診があったので、自分でウジウジしてるより、そこに身を投じてしまったほうがいいなと思って臨んだんです。千秋が言ったように、絶対何か前のめりな姿勢を示せたほうがいい感じになる予想はできてたんやけど、自分自身がそういうベクトルじゃなかったというか。それよりも、久々の対バンまでの空白の時間に何をしていたかを見せたかった。
──なるほど。
暁:最近は、ライブのその時間をどうやったら一番大切にできるか?という課題が自分の中にあって。どうして今更そんなことを意識しているかというと、結成当初の僕は自分以外の要因に引っ張られすぎて、アルルカンの暁を形成していくべき時間をちゃんと過ごせなかったんです。自分と他人の境界線をうまく引けないまま、自分で決めてしっかり答えを出すことができなかった。ここ数年でその呪いがようやく解けて、まず自分がどうしたらその時間を大切にできるかを考えられるようになったんです。だから、あの日もまずはそれをする必要があって。前回の対バンからの空白の時間にこういうことをしていました、ということを示すのが僕のマストだった。
──武道館を経験したDEZERTとキズと比べてどうこう、ではなく?
暁:もちろんそれもあったうえで、まずはこの段階を踏まないといけないと思った感じですね。<VISUAL SCARLET>のときは、今言語化したものよりフワフワした感覚だったけど、最近はもっとしっかり自分で処理できるようになって。景色が変わったし、覚悟が決まってステージが一個変わった気がする。千秋から言われたことも受け取りつつ、自分はこうだったってはっきり言語化できるようになりました。だから、<VISUAL SCARLET>のときとは違うものを、<束の世界 -SONOSEKAI-2026>ではちゃんと見せられると思います。千秋大先生に(笑)。
千秋:おお。
暁:悩んでた頃、初めて渋公をやる時にも千秋とメシ行って、相談したよな。パスタ食いながら。
千秋:あったなあ。
暁:千秋からすると全然面白くない話だと思うけど、バンドがトントン拍子に進んでいることに対しての違和感があって。結構真面目に悩んで相談しました。
千秋:初めて悩みを受けた時はすごく嬉しかったのを覚えてる。僕は友達もいない中で手探りでやっていたから、一緒に闘う仲間ができたというか。当時ノクブラ(NOCTURNAL BLOODLUST)とか同世代のバンドは他にもいたけど、あんまりお互いに悩みなんか言わないんですよ。その中で、「ここで悩むんか」みたいな部分を相談されたから。で、その時は嬉しかったんですけど、僕はこの10年で気づいたんですよ。こいつは人のアドバイスを聞かない!
暁:あはははは!
千秋:迷ったらすぐ人に聞くくせに、結局自分の答えを持ってて、その答えの輪郭をくっきりさせるために相談してるな?と気づきました。もう相談乗らんとこかなと(笑)冗談で思いつつも、友達として、仲間として、より輪郭を濃くできるような話ができればいいなと思って聞いてます。最終的に、もはや悩んでないんちゃうかなと思い始めてきたけど。
暁:もはや(笑)。
千秋:あと、暁の場合は、調子いい時に悩み、調子悪い時に悩まないんですよ。
暁:わかってらっしゃる(笑)。自分の中に答えはあっても、自信が持てないから相談するんですけどね。さっき言ったように昔は自分と他人の境界線がうまく引けなかったから、本当にほしがっているものをうまく受け取れなくて、結局「全然言うこと聞かへんやん」になってたと思う。千秋もその被害者ですね(笑)。そういう意味では、逆にここ数年のほうが悩んでないし、悩んでもそのためにはどうしたらいいか考えられるようになった。千秋が「一緒に闘う仲間」と言ってくれましたけど、今ようやくその土台に立てた気がします。だから、改めてDEZERTが今どんなことを考えているのか聞きたい。昔よりしっかり理解できると思うから。
千秋:うーん……武道館やって思うのは、特に何も思わなかったのよ。武道館だろうが、幕張だろうが、たぶんさいたまスーパーアリーナだろうが、東京ドームだろうが、俺は何も思わないと思うんだよな。じゃあ、なんでやるねんって話じゃないですか。だから、何をしたいかじゃなくて、何故したいのかというところが今の僕の闘いになってますね。そういう部分や悩み自体を曲として提示して、ファンと一緒に共振したり共感するのがバンドだと思いますから。2025年も僕はその闘いをしてきたし、バンド全体で一緒に闘ったわけではなくても、それはそれでいいんじゃないかと思う部分もあるし。相変わらずですよ。おのおの答えを探しながら、超人間作業をしてます。
暁:いろいろ探しているうちに、シンプルなところに行き着くのはすごくわかる。アルルカンもライブの本数は多くて、メンバーみんなライブジャンキーなんですけど。そのうえで、箱がちっちゃかろうが、他のジャンルに遊びに行く時だろうが、そこに何人いようが、その1日を大事にすることに向き合ってみたら、本当に1日1日、1本1本ちゃんと満たされることに気づいた。じゃあ大きい場所でやる意味ってなんだろうと考えた時に、ご褒美みたいなものかなと思ったんですよね。そう思ったのは去年10月26日の結成12周年ライブだったんですけど、常日頃から自分たちもファンも抱いている感動が、いつもより派手に爆発する日なんだなって。

──DEZERTの武道館は観に行っていたんですよね。実際どんな感情が湧きましたか。
暁:行ってよかったなと思いました。以前Psycho le Cemuのseekさんから、ライバルであるMUCCの初武道館に行けなかった。っていう話をしてもらったことがあって。僕も最初SORAから「観にくる?」って連絡をもらった時は即答できなかったんですよ。でも絶対行ったほうがいいよなと思って行ったら、その通りでした。DEZERTが1コ1コ点を打って繋いできたものを目撃できたし、もちろん悔しさもあったけど、それを見て悔しいと思えなくなったらもう二度と対等ではいられない……たぶん、その時はアルルカンのボーカルとして死んでると思うから。いい感情もザワザする感覚も全部漏らさず感じられてよかったです。この関係性がどれだけ尊いものなのかを自分でも再確認できました。
千秋:大きい会場がご褒美というのは、まさしくそうだと思いますね。ご褒美という言葉の捉え方は人それぞれですけど、僕にとっては晴れ舞台、いわば発表会なので。誰もチケットが取れない状態じゃない限り、友人も、家族がいたら家族も観に来てくれたらいいし、それこそ幕張も、時間が合うならば関わってくれた人たちみんなに観に来てほしいという気持ちはあります。だから、自分では武道館に関して「やってやったぞ」とは1ミリも思わないし、感想もあんまり気にならない。でも、人の発表会を見てどう思うかは当たり前に大事な感情ですから。僕も、去年は仲間のバンド以外にもライブをちょいちょい観に行ったし、そこで受け取るものは必要だと思う。だって、楽しみに行くわけないじゃないですか。暁がDEZERTのライブで「この曲聴けた、やった!」って思うわけがない(笑)。
暁:俺、武道館で「神経と重力」が聴けてちょっと嬉しかったけど(笑)。まあ、お客さんとは違うからね。
千秋 ははは! 観て、何かを見つけたいのはみんな一緒なんじゃないですか。だから、俺は早くアルルカンの武道館ライブを観に行きたいなと思ってます。
──対談で空白の時間の話を聞きたいということでしたが、今の千秋さんのお話を聞いてみて、昔からの変化を感じる部分や、変わらないなと思う部分はありますか。
暁:基本的にはずっと変わらないと思います。でも、千秋はDEZERTという看板を背負って、曲も歌詞も書くという大きな部分を担い続けて。見える世界がどんどん広がっていく中で、小さな気づきをたくさん積み重ねてきたんだろうなと思いました。たぶんこういうことなのかな?と曲からも感じていたし。さっき千秋が言っていたとおり、何に悩んでいるかは曲で示していくというスタンスがまさに体現されているわけだから、とてもいいんじゃないでしょうか。
──おふたりとも、常に悩み考えながらバンドを続けてきて、それをステージでも言葉で伝えるタイプのフロントマンという印象があります。さらに最近は、一方的ではなく来てくれたあなたに一人一人に届けたいということを強く訴えていますよね。
暁:表現が合っているのかはわからないけど、剥き出しになってきている気はしますね。
千秋:もともと僕は尖った性格でもないですし、たぶん人一倍真面目なので。昔からやりたいことは変わらないけど、その中で方程式を変えてみたり、答えは出たのに計算が合わないとか、きれいな方程式ができたのに答えが出ないとか、そういうことを繰り返しているんですよ。ただいい曲を書きたい、いいライブをしたい、もっとでかいところで発表会をしてみたいと思う、至極当たり前の超人間です、ずっと。
──真面目に人間をしている、というのはおふたりの共通点な気がします。
千秋:みんなそうじゃない?
暁:そうなのかな。
千秋:俗に言う天才と言われる人は違うのかもしれないけど。あ、最近変わったことと言えば、ネットを見なくなりました。
──エゴサ的なことですか?
千秋:そう、やっぱり自分にSNSは向いてないなと思いました。色んな意見があって影響されないようにしようと思っても、確実に影響されてしまう部分があるのでもうほとんど見なくなりました。自分が楽しむ程度にしようかなと。いらない情報もオススメ欄とかAI分析で流れてくるようになったからうるさくて。平成からの令和の難しい音楽業界の中で生きてきて、流されるところは流されるけど、流されたくないところは流されやんとこうって踏ん張ってる状況ですね。踏ん張れてるのかわからんけど。
暁:僕はSNSを見るほうだと思うけど、いかんせん人の言うことを聞かないので(笑)。素直なところと頑固なところのバランスは昔から変わらないから、見ながら「いいな」と思ったらバッとチェックしたり、よくわからんなと思ったら素通りするフィルターを持っていると思います。でも、千秋が言う「どこで踏ん張ってどこで流されるか」については、僕はまだそこに到達していない気がする。もうちょっとざっくりしていて、まだ悩むまでいっていないかも。

──では、イベント当日に向けてのお話を聞かせてください。DEZERTも含めて関係性の濃いバンドが集まりましたが、暁さんとしてはどういうアルルカンを見せたいと考えていますか。
暁:千秋に<VISUAL SCARLET>で言われた「何か言うことあるやろ」みたいなところを、ちゃんと感じてもらえるライブにしたいという気持ちがあります。自分のメッセージを伝えられるレベルにいきたい。チケットがすぐソールドアウトしたのは、正直なところ出演してくれるバンドの力でしかないと思うんですよ。僕らとの関係性込みで見に来てくれているのを加味したとしても、やっぱりそこが大きいだろうけど、そうやってもらったものをもらったままにする気は全然ないので。DEZERTに対しても、ちょっと大げさに聞こえるかもしれないけど、死ぬまでに俺からも返したいと思っているんです。勝手に。具体的な何かというより、自分たちもちゃんとやることをやって、また肩を並べておもろいイベントができるような、そういう存在でいたい。そうなるって決めてるから、当日はその日に見せられるものも、その先に求める未来も全部見せたいと思っています。他のバンドも、近くで言葉をくれたり、ちょっと離れた場所で見ていてくれたり、背中で語ってくれたり、いろんなタイミングでいろんなものを与えてくれた人たちしか呼んでいないので。そういうものを受け取って、今ちゃんと胸を張って立ってる自分とアルルカンというバンドがいます、ということを見せたいです。もちろん、この日この場所を選んでくれるお客さんにも。
──バチバチにぶつかり合う対バンというより、今のアルルカンを見てほしいメンバーが揃っているわけですね。
暁:みんな当たり前にいいライブをするのはもうわかっているメンツなので。バチバチかはわからないけど、かけ算になると思います。もしかしたら最近イベントの出演者が似通っていると感じる人がいるかもしれないけど、主催する側にはこれじゃないとダメだという意思がやっぱりあるんですよ。だからこのメンツなんだな、ということがちゃんと伝わるようなイベントにはしたいですね。
千秋:僕はゲスト側なので、そんなに重い気持ちはなく。お客さんも含めて楽しい出会いがあればいいし、楽しい音楽ができる一日になればいいなぁと思っています。暁がDEZERTに返したいって言ってましたけど、僕は何かを与えたつもりは全くないので不思議な感じですね。物理的なものなの? どうしようもない時に手を貸してくれるとか(笑)。
暁:(笑)。
千秋:具体的にはわからないけど、僕もそういうふうに思うし、思える人間がいるのは人生を生きてきた意味のひとつですよね。そう言っていただけることが嬉しいし、これからもそう思われるように頑張りたいし、協力したい。それが対バンというものなんじゃないかな。10年目を超えた妙齢の男たちが奏でる音楽なんて、それでしかないですよ。20代前半はバチバチのほうが伝わったかもしれないけど……いや、今もバチバチなんですけど、バチバチっていう4文字が安っぽすぎるな(笑)。
暁:はははは!
千秋:対バンなんだから少なくともあるけど、バチバチってダサくない?(笑) 楽しい音楽をして、そこで何かが起こることをバチバチと表現するなら、すごくいいことだと思いますけどね。何が起こるかわからないのがワンマンと違うところなので、楽しみにしながら、しっかり練習して挑もうと思っております。
──<VISUAL SCARLET>でダメ出しをした立場として、期待することもありますか。
千秋:いやいや、あのとき言ったのは「僕がアルルカンのマネージャーなら」だったんですよ(笑)。友達目線では上から言えないです。マネージャーやったら「いや、たとえ思ってなくてもここは何か言っとけよ」って思うやろうなというレベルの超軽い気持ちなので。バンドマンとしては別に曲で伝えればいいだけですから。
暁:なるほどね(笑)。僕もちゃんと人間やります!
──最後に、「この曲をやってほしい」みたいなリクエストがあれば。
千秋:僕からは特にないです。新曲だろうが過去の曲だろうがアルルカンの曲なので、好きにやっていただいたらいいと思いますよ。
暁:じゃあ「神経と重力」やってほしい(笑)。好きなんですよ。
千秋:了解でーす!
取材・文◎後藤寛子
<アルルカン Presents「束の世界-SONOSEKAI-2026」>
3月1日(日) EX THEATER ROPPONGI
開場 14:30 / 開演 15:30
・出演者
アルルカン / MUCC / キズ / DEZERT / 甘い暴力
・チケット
SOLD OUT







