【ライヴレポート】Rayflower、15th記念ライヴ<Next Amazing Road>の非常事態を好機に変えたバンドの底力「来年はたくさん会いましょう!」

2025.12.10 18:00

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11月30日、RayflowerがEX THEATER ROPPONGIにて<15th Anniversary LIVE “Next Amazing Road”>を開催した。ヴォーカルの田澤孝介が急性声帯炎のためドクターストップがかかり、やむなく不参加。演出内容を変更しライヴは4人だけで行なうと発表されたのは、開演約3時間前のことだった。

このライヴは、コロナ禍の真っ只中にあった2020年9月20日、配信のみで開催した10th記念ライヴ<Amazing Road>のリベンジであり、15thを迎えた今、同じ会場から今度はファンの歓声と共に行ないたい、という悲願の公演だった。田澤の病状が心配でならなかったし、フロントマン不在の状況でどのようなライヴになるのか? 想像もつかないまま会場へ足を運んだが、結論から言えば、素晴らしいステージだった。メンバー4人がファンと共に田澤の回復を願いながら、悲壮感に沈むことなく、その不在を補おうと全力を尽くしたことが凄まじい熱を生み、まばゆい景色を立ち上げていたのである。

SEに乗せて都啓一(Key)、Sakura(Dr)、IKUO(B)、YUKI(G)が登場し位置に着く。センターにはマイクスタンド。1曲目の「サバイヴノススメ」が始まると田澤のヴォーカル音源が流れ出し、4人がそれに乗ってアンサンブルを奏でていく。ショルダーキーボードを携えた都がセンターに飛び出してきてファンを煽り、メンバーはみな髪を振り乱し、いつにも増してパワフルな演奏を響かせていく。そのまま勢いよく「Real Game」へ雪崩れ込むと、リズムに合わせてファンは拳を突き上げて声を出し、一体感が高まっていく。冒頭2曲で、百戦錬磨のメンバー揃いのRayflowerというバンドの底力を再認識させられた。

「どうも、Rayflowerです!」という都の第一声に、メンバーは“ジャーン!”と相槌を打つように音を鳴らした。「五分の四のRayflowerでございます。こういう形での15周年のライヴになりましたけども、メンバーとギリギリまで話し合った結果、ステージを観てもらいたい、ということで。寸前(の決定)で皆さんには申し訳ありませんでした」と挨拶。メンバーもそれぞれに頭を下げる。続けて都は「今日は皆さんに歌ってもらわないと」とファンに協力を求め、YUKIは「バンド付きのカラオケだと思ってもらえば(笑)」とジョークでファンを和ませる。Sakuraは「田澤がいちばん悔しい想いをしてると思う。そんな田澤を悔しがらせてやろう、ね?」と呼び掛けると、IKUOも「豪華なカラオケだね(笑)」と笑った。

「Welcome to The Gracious World」「Garbera」と、メンバー各自の聴かせどころが次々と訪れる熱い楽曲を連打。斜め上方から降り注ぐ神秘的なスポットライトに照らされた都のピアノソロから、しっとりと「イニシエ」が始まっていく。切々と歌う、そこにはいない田澤のヴォーカル音源を軸に、メンバーの演奏がガッチリと絡みついていき、Rayflowerのグルーヴを生み出していたのはさすが。並大抵のことではない。「U-TOPIA」ではYUKIとIKUOがダイナミックに動き回り、センターで向き合ってプレイする場面も。ファンが高く手を挙げてノッていくサビでは、そういった盛り上がりこそライヴの重要なピースなのだと示すように、フロアも明るく照らし出された。演奏を終えると、「みんな歌ってくれてるね。めっちゃうれしいわ。あとで田澤くん、ビックリする」と都。Sakuraは「田澤を悔しがらせたい」と序盤同様の発言を繰り返し、「もちろん田澤がいてこそのRayflowerなんだけど、(不在によって)他のメンバーに目が行くかな?って。意外と働いてんのよ(笑)」とアピール。「意外と俺、コーラスしてる」などと自己申告してファンを笑わせた。非常事態を、暗い悲壮感に浸るのではなく、前向きに乗り越えようとしている姿に胸が熱くなった。

この後、フロア後方に設置されていたセンターステージへとメンバーは移動。歓喜にざわめくファンの間近を歩いてステージへ登り、互いに向き合うようなフォーメーションでスタンバイした。そんな4人を全方位からファンが取り囲み、輝くばかりの笑顔で見守っている。都は「これ、コロナ禍で無観客のライヴをした時を彷彿とさせるよね」と2020年の配信ライヴを回想。通常のステージとは違って、背後からもファンの目線を感じることにIKUOは「ちょっと恥ずかしい」と照れ臭そう。リラックスしたムードの中でトークを繰り広げていき、「My Dear…」と「Worlds Of The Wise Man~時の贈り物~」の2曲を披露した。このステージにもスタンドマイクが立っており、田澤も“共に在る”ことを決して欠かさない。メンバーは音を奏でると同時にファンと目を合わせ、時には背後を振り返り、コミュニケーションを取りながら温かな空間をつくり上げていた。

メインステージへとメンバーが戻り、Sakuraのカウントから「Brilliant Place」がスタート。ファンは勢いよく拳を突き上げ、髪を振り乱したり飛び跳ねたりして盛り上がる。間髪入れずに始まった「It′s a beautiful day」では頭上クラップが自然発生。田澤の怖いほどに透みきった歌声に改めて驚嘆していると、YUKIがセンターに移動してきて、手にしたマシーンからシャボン玉を噴射した。YUKIがギターソロを奏でている時に都がそのマシーンを持って出てきて、YUKIにシャボン玉を噴射。誰もが笑顔だった。シャボン玉マシーンについて「どこから出て来た?!」と都が尋ねると、YUKIは購入して前々から準備していたことを明かし、「田澤と戯れたかったなって」とコメント。シャボン玉のイメージをこの曲に対して持っていたそうで、「いつか具現化せなあかんな、と。思ったよりいっぱい出た(笑)」と楽しそうに笑った。

MCでIKUOは「田澤くんがいないと寂しいね。ツッコんでくれる人がいない」と語り、田澤の偉大さを思い知ったとのこと。マイクスタンドの高さについて、都から「田澤くんの高さにしてみて」と言われると、IKUOはスタンド前に移動して調節し、あり得ないほどの低さに設定、笑いが場内から起きる。RayflowerのMCではお馴染みの身長ネタで盛り上がったが、本人がいないことに一抹の寂しさも覚える。YUKIが「Sakuraさんが思う田澤くんの高さに」とリクエストすると、Sakuraは更に低く設定。その後「これぐらいじゃねぇか?」と少し上げると、「あ~(※なるほど、といったニュアンス)」というファンの声が響いた。田澤に想いを馳せ「絶対に怒ってるよな(笑)。悔しさで早く復活させようぜ!」と語ったSakuraは、「ドクターストップが掛かっただけで、彼は元気です」と言い添え、ファンを安堵させた。YUKIは「皆さんのお陰で、5年ぶりに夢を叶えました。今日は五分の四ですが、なんとか楽しくやっていきたいと思っています」と挨拶した。

いつもは田澤の先導で、パート名を連呼した後メンバー名をコールする「Runway Brain」のお馴染みのやり取りを、この日は都が代行。爽やかな疾走感溢れる「ユースフルハイ」では、YUKIとIKUOがセンターでマイクを分かち合い、向き合ってコーラス。Sakuraが打ち鳴らす怒涛のアウトロからそのまま「Soul survivor」へ突入すると、なんとYUKIがマイクをもぎ取って歌い始め、続いてIKUOが歌唱。ファンは勢いよく手をワイプして喜びを全身で表した。本編ラストは「Bloom Moment」、YUKIのリフが鳴ったタイミングでキャノン砲が爆(は)ぜ、虹色の照明がステージを彩っていく。銀テープを握った手をファンが高く挙げて盛り上がることで、太陽に照らされた水面のような輝きが眼前に広がった。最後の一音を勢いよく鳴らしてメンバーがステージを後にすると、すぐにアンコールを求める声が響き始めた。

ファッションブランド“TORNADEMART”とのコラボTシャツに着替えたメンバーが再登場し、都の手には、帰りにファンに配られる予定のチラシが。「全都道府県、全決定しました」と2026年に開催を予告していた自身初の全国47都道府県ツアー<Rayflower 15th Anniversary LIVE 2026 “Moving on!”>の詳細をついに発表した。<Moving on!>というタイトルは「次へ向かう」という意味を込めた、と都。「“こんなに会いたくないわ”というくらい会いに行くので(笑)。帰りに(チラシを)受け取ってください」とファンに呼び掛けた。

都は「今日はイレギュラーな形になってしまいましたけど、その時は元気な5人で登場しますので。でも、楽しかったです」と笑顔。YUKIも「「Soul survivor」で、“お前が歌うんかい?!”って思ったやろ? 今日だけの特別なことをやってみた」と想いを明かした。都は「こういうの、バンドならではやんか? 補って補って、みんなも補ってくれて……何が起きるか楽しみながら、来年はたくさん会いましょう!」と語り掛けた。「楽しかった」と振り返ったIKUOは、「やっぱり田澤さんすごいなって。次は田澤くんも含めて完全体で」と再会を誓った。Sakuraは「田澤がいないと正調じゃないRayflowerだけど、正しい形のRayflowerを今後もよろしくどうぞ」と挨拶。YUKIは「胸いっぱいです。楽しかったし、田澤くんをプラスしてこういうのやりたい。どうなるか分からんけど」と未来を語った。都は「その時はみんなで、この位置で、同じ服で来てな(笑)」と、田澤を加えた完全体での本公演の完全再現ライヴをイメージ。大拍手が起きた。

最後は「花束~from rose with love~」を放ち、ミラーボールが放つ美しい光に会場全体が包まれる中、田澤の歌声と呼吸を合わせて4人は音を奏でた。最後は「田澤くんがおる体で」と都が声を掛け、4人はラインナップ。マイクスタンドを中央にして、“5人“でお辞儀をしてステージを去った。

フロントマン不在という重大なハプニングで内容変更を余儀なくされ、急遽4人とファンでつくり上げたライヴ。田澤あってこそRayflowerという事実はもちろん揺るぎないが、全員が懸命にその不在を補おうとし、全力を尽くしたことは、居合わせた一人一人の心にきっと生涯忘れられないであろう光景をもたらした。2026年、Rayflowerはファンと共に“次へ”と向かっていく。完全体のRayflowerと再会できる日を心待ちにしよう。

取材・文◎大前多恵
撮影◎今元秀明

 

■<Rayflower 15th Anniversary LIVE “Next Amazing Road”>2025年11月30日(日)@東京・EX THEATER ROPPONGI セットリスト
01 サバイヴノススメ
02 Real Game
MC
03 Welcome to The Gracious World
04 Garbera
05 イニシエ
06 U-TOPIA
MC
07 My Dear…
08 Words Of The Wise Man 〜時の贈り物〜
09 Brilliant Place
10 It’s a beautiful day
MC
11 Runaway Brain
12 ユースフルハイ
13 Soul survivor
14 Bloom Moment
encore
en1 花束 〜from rose with love〜

 

■<Rayflower 15th Anniversary LIVE 2026 ”Moving on!”>
03月14日(土) 埼玉・HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
03月15日(日) 群馬・前橋DYVER
03月21日(土) 宮城・仙台darwin
03月22日(日) 岩手・盛岡CLUB CHANGE WAVE
03月24日(火) 福島・郡山Hip Shot Japan
03月28日(土) 愛知・名古屋ELL
03月29日(日) 三重・松坂LIVE HOUSE M’AXA
04月04日(土) 富山・SOUL POWER
04月05日(日) 新潟・GOLDEN PIGS RED STAGE
04月11日(土) 岐阜・CLUB ROOTS
04月12日(日) 滋賀・U☆STONE
04月18日(土) 神奈川・新横浜New Side BEACH!!
04月19日(日) 千葉・柏PALOOZA
05月09日(土) 高知・Xpt.
05月10日(日) 徳島・club GRINDHOUSE
05月30日(土) 秋田・Club SWINDLE
05月31日(日) 山形・ミュージック昭和Session
06月13日(土) 熊本・B.9 V1
06月14日(日) 佐賀・GEILS
06月16日(火) 長崎・DRUM Be-7
06月18日(木) 山口・周南rise(LIVE rise SHUNAN)
06月20日(土) 大阪・梅田CLUB QUATTRO
07月04日(土) 長野・CLUB JUNK BOX
07月05日(日) 山梨・甲府CONVICTION
08月29日(土) 愛媛・松山サロンキティ
08月30日(日) 香川・高松DIME
09月04日(金) 青森・Quarter
09月06日(日) 北海道・札幌cube garden
09月12日(土) 茨城・水戸LIGHT HOUSE
09月13日(日) 栃木・HEAVEN’S ROCK Utsunomiya(VJ-2)
09月24日(木) 島根・松江aztic canova
09月26日(土) 鳥取・米子AZTiC laughs
09月27日(日) 岡山・YEBISY YA PRO
10月06日(火) 兵庫・神戸VARIT
10月08日(木) 鹿児島・CAPARVOホール
10月09日(金) 宮崎・LAZARUS
10月11日(日) 大分・DRUM Be-0
10月12日(月/祝) 福岡・DRUM Be-1
10月17日(土) 石川・金沢Az
10月18日(日) 福井・CHOP
10月28日(水) 和歌山・CLUB GATE
10月29日(木) 京都・MUSE
10月31日(土) 広島・Live space Reed
11月01日(日) 奈良・EVANS CASTLE HALL
11月03日(火/祝) 静岡・Live House浜松窓枠
11月23日(月/祝) 東京・EX THEATER ROPPONGI
11月28日(土) 沖縄・桜坂セントラル
▼チケット
¥7,500(税込)
※スタンディング ※整理番号付
※ドリンク代別途必要(5/31山形公演を除く)

 

関連リンク
◆Rayflower オフィシャルサイト
◆Rayflower オフィシャルX
◆Rayflower オフィシャルYouTubeチャンネル