【ライブレポート】呪イ系アイドル・マザリ、最狂の1周年「盛大に呪い混ざろうか!」

<マザリ一周年単独公演『呪詛-生演奏-』>が10月11日、グループの拠点である愛知・名古屋Electric Lady Landで開催された。
2024年9月、マザリの始動を告げる能面を被った素顔のわからないメンバー写真のXポストは、御披露目公演直前の段階でインプレッション数が200万超えという、とんでもない反響を呼んだ。ちょうど1年前の2024年10月11日に開催した御披露目公演は、予定していたX-HALLからZephyr Hallへ、急遽倍規模となる会場へ変更されるほどだった。そんな順風満帆に思えたマザリだが、2025年2月にメンバーの心臓ウリンが逝去。しかしながら、マザリは活動を止めることはなかった。
そんな“呪イ系アイドル・マザリ”が1周年を迎えたのである。
チケットはソールドアウト。フロアには開場早々から詰めかけたオーディエンスがひしめきあっている。それもそのはず、グループ初となるバンドセットライブ。ヘヴィでラウドなバンドサウンドを武器とするマザリにとって、誰もが待ち望んだ満を持してのライブだからだ。しかも、Ray(G / DEVILOOF)、響(Dr / 摩天楼オペラ)、そして名古屋の雄、明徳(B / lynch.)という強力な布陣によって支えられる。アイドルファンはもとより、ヴィジュアル系ロックファンやメタルヘッズにも訴求力の高いマザリであるからこそ成し得た、強靭な猛者がマザリの音楽をかき鳴らすのだ。

「マザリのライブには怨み、妬み、憎しみが込められています。幸せに満たされている方は……充分に、ジュウ、ブンニ注意シテ……ゴ覧クダサイ……」
定刻を少しばかり過ぎたころ、お馴染みのナレーションが鳴り響いた。会場内に不穏な空気が立ち込める。ステージを覆っていた幕が左右に開くと悠然と構えたバンドメンバーがステージ後方に陣取っている。上手側よりRay、明徳、そして暗闇に浮かび上がる赤と金がアクリルドラムセット、響だ。禍々しいSE「呪詛」の重たいリズムをバンドがどっしりと刻み、合わせて能面姿の6人がゆっくりと登場する。

「すべてを捧げろ!」
能面を剥ぎ取った6人。蛇喰ホムラの邪悪な叫びを合図に、3人のバンドアンサンブルは、砲撃のごとくけたたましく打ち鳴らされるブラストビートへと変貌する。フロアからは絶叫のような掛け声が挙がり、そのまま「丑の刻参り」が始まった。ホムラがゆっくりと歌い出し、「愛を貴方にあげ……“ル゛ワ゛ァァァー!!”」とスクリームに豹変させると、堰を切ったように轟音が降り注いだ。

「マザリ一周年ワンマン、盛大に呪い混ざろうかぁぁぁ!!」
最恐のバンドが繰り出す極悪轟音にマザリの6人は歌と踊りを重ね、9人で最狂のグルーヴを作り出す。ダイナミックな動きで観る者を引き込む米粉パン、無邪気に愛狂をバラ撒く朽壊レム、クールな面持ちでキメ込んだ髄狂アクもいつも以上に斬れ味の鋭い動きで攻める。

「お前らいくよ!」とあっけらかんとした、死ヰメロアンチの掛け声で「お慕い申し上げます」へ突入。わらべうた「はないちもんめ」を想起させる掛け合いフレーズは生グルーヴによって加速度を増し、ヘヴィながらもリズミカルな狂躁に合わせてフロアも揺れ動く。そのままゴシックメタルを軸に和情緒をまさぐる「一緒に死ぬ序でに愛して欲しい」を続け、怒涛の攻勢で圧倒していく。



響のがっしりとした低い重心のバスドラムと深く切り込むメリハリの効いたフィル、明徳の図太く硬質なベースは堅牢かつタイトにボトムを支え、Rayは深いディストーションで音の分厚い壁を作っていく。屈強と柔軟のバランスに優れたバンドの有機的なダイナミズムが、マザリの音楽をより猟奇的に、そして人間的に表現する。頽廃的でダークな世界観を持つ、名古屋特有のヴィジュアル系様式美“名古屋系”に属すると言っていい、マザリの音楽にぴったりのバンドだ。そうした生演奏だからこそ、マザリのメンバーもいつも以上に鬼気迫るパフォーマンスを魅せる。

ヴィジュアル系バンドのフロントマンさながらのハンサムオーラをバンバン放つ真鬼マナセをはじめ、表情豊かな声色を操るパン、バンドの爆音を超える咆哮で捩じ伏せるホムラ……初めてのバンドセットとは思えぬ堂々たるステージングでオーディエンスを魅了する。その破壊力たるや想像以上のものであり、バンドセットライブを待ち望んでいたマザリのファンはもちろんのこと、初めてマザリを観るであろうバンド3人のファンもステージに惹き込まれていた。

自己紹介を挟み、「お前ら、まだまだ声出せるよなぁー!?」とレムの煽りから、「御呪い」をぶちかます。激しく濁流のようなサウンドがフロアに傾れ込み、十字の仕草で御呪いをかける6人。呪イの歌とバンドの狂音がフロアをぐっちゃぐっちゃに引っ掻きまわす。そこから「遺骸奇譚座」を奇奇怪怪に披露すると、咽び泣くRayのギターと響のツーバスが猛り狂う。「ひとりかくれんぼ」だ。ブレイクダウンでは地鳴りのような重低音と共にフロアの無数の頭が前後に大きく揺れた。カオティックな様相を呈したフロア、そんなオーディエンスをそのまま奈落へと突き堕とすように始まった「こっくりさん」。手を取り合う6人とゴリゴリとした明徳のベースが深淵へといざなう。馬の蹄鉄が大地を抉るがごとし響が繰り出すDビートが突き進み、この世の終わりのような轟然たる音の洪水が会場を呑み込んだ。

「上手のクソ野郎ども、テメーらまだ声出せるよな! 下手のクソ野郎ども、オメーらもまだまだ声出せるよなァ!? おい、まだまだたんねえぞ! オメーら全員、かかってこいやァァァァァ!」
マナセがありったけの声を張り上げてオーディエンスを鼓舞して始まった「禁呪」。痙攣するようなビートにホムラが絶叫を乗せていく。オリエンタルないななきの中でゆっくりゆっくりと歌を重ねていく6人を、シュレッドなフレーズで導いていくRay。重々しくも美しさを感じる歌声とアンサンブル。ヘヴィでラウドな美重音にフロアは酔いしれた。

「デビュー時からある曲です。あなたたちの憎しみ、恨みを代わりに背負って歌います。大事なメンバーの心臓ウリンとともに……」
パンが想いを吐露した言葉から贈られたのは「遺書」だ。6人は抑揚のついたキレのよい動きを見せながら丁寧に歌を紡いでいく。Rayの聴き手の感情を揺さぶるギターソロのあと、2025年2月に逝去したメンバー、心臓ウリンの歌声が会場にスッと響いた。まるでウリンがそこに居るかのように、いや、確実に7人のマザリだ。

まるで時が止まったような虚空。それを引き裂くように凶暴性が爆走する「人形-ヒトガタ-」を投下、さらに明徳のスラップが炸裂するラストナンバー「メンタルリストカット」でトドメを刺す。キラーチューンを立て続けにぶっ放して本編を終えた。
アンコールで再登場したマザリメンバーとバンドメンバー。演奏難度の高さを誇るマザリ楽曲の中でも「丑の刻参り」がもっとも難しいと語る響。リハーサルで、パンが同曲内のカウントの入れ方が音源と違うと、響がいないところでクレーム(?)を言っていたことを明徳が明かし、響が「帰ろうかと思いました!」と笑いを誘う。さらに明徳が「御呪い(おまじない)」を「御祝い(おいわい)」と勘違いしていたエピソードも飛び出し、“名古屋か(和やか)”なムードに包まれた。
そして、パンパンになったフロアを眼前に遠征してくれたファンも多い中で、メンバーが1人ひとり、感謝と想いを口にしていく。

<東名阪深夜ツアー『ひとりかくれんぼ』> のときから喉の調子が悪かったというホムラ。一時期はメンタルをやられてしまったものの、「持ち直すことができて、周年を迎えられてよかった。みんなが応援してくれて支えてくれて心があたたかくなりました」と礼を述べた。「アイドルは初めてなんですけど、これは普通のことじゃないからどれだけ幸せなことなんだろうって、周年に近づくにつれ毎日思っていた」というアク。満員のELLで1周年を迎えられたことに感謝し、「もっともっとみんなのことを大切に思っていきたいので、これからもみんなついてきてください」と続けた。

台風が来るかも、という天気を「かなり強い晴れ女がいるマザリだから跳ね除けた」と明るく口を開いたメロ。「デビューライブも人がたくさん来てくれたけど、あれを超えることができるのかなって……でも超えられてそうです!」と、人が溢れんばかりのフロアに向けて自信たっぷりに言い放つと歓声が起こった。「マザリの音楽は沈んでるときに聴くと一緒に沈んじゃう曲かもしれないけど、みんながしんどい、嫌なことがあったときに、助ける曲であれたらな」と言い、「メンバーも1年、よく頑張ってこれました! みんなだからやってこれた。これからもよろしくお願いします」とメンバーに向けての感謝も述べた。

「僕、繊細じゃないですか?」と前置きしながらのマナセ。「“幸せ?”って訊かれたときに、今までの人生は“幸せじゃないかな”って、マイナスな考え方を持ってたこともあったので、はっきりと幸せとは言えなかったけど、今は正々堂々と胸を張って“幸せ”だと言い切れる」と。それはファンのおかげであり、「メンバーがいてくれるから今の僕がある」と続け、「今日はウリンもここに帰ってきてるから、最後まで楽しんでください」と締めた。

レムは「1年前にこのグループの青色になれてよかった」という言葉から、毎日家族のように一緒にいるメンバーへ「しんどいときも話を聞いてくれて、相談に乗ってくれて、いいメンバーを持ったと思っています」とメンバーへ感謝の意を述べると、今度はフロアに向かって「世界一の青色の推し」と言わせることを宣言。大きな拍手が巻き起こった。
最後はパン。

「1年前はみんながむしゃらにやっていて。すごいいろんなことをさせてもらえていて、マザリにしかできないことをさせてもらえた。あなたの苦しいものに共感する曲を代わりに背負って歌っている。それがマザリのいいところ。1年間、楽しいがいっぱいあったけど、悲しい悔しいもあって。最初の頃に(ライブに)来てた人がいなくなってたり、それでも新しくマザリを見つけてくれる人もいて。出会いと別れがいっぱいあったけど、誰ひとり忘れてないし、“最近どうしてるんだろう?”と思ったとき、チラッと覗いてくれたらいいなと思っていて。私たち6人は大事なメンバーもいなくなっちゃって。そこから“どうしようね……”ってなっちゃったんですけど、この6人がすごい強いメンバーだったから、一周年(ライブ)に立てて。こっちゃん(心臓ウリン)の遺志もしっかり受け継げてるなと思っていて。……これから誰ひとり絶対に欠けたくないので、最後まで、マザリが終わるときまで、見守っていて欲しいです……」

目を潤ませながら、涙で顔をくしゃくしゃにしながら、言葉を続けた。
「弱いとこ見せたくないから、みんな強がってるけど……。ホントはみんな弱いんです。だからずっとついてきてください……お願いします」
そう語ると、大きな大きな、あたたかい拍手と歓声が6人を包み込んだ。
すると、唐突にボス(プロデューサー)からの手紙がステージに届けられ、次なるツアー<マザリ 二〇二六年七大都市単独巡礼『呪物崇拝見世物花屋敷』の発表が文面にて告げられる。メロが読み上げる日程と会場名にフロアからは大きな声が挙がり、ファイナルのEX THEATER ROPPONGIが発表されると、驚きと祝福の声が会場にこだました。

そうした温和な空気を乱すように、メンバー各々がラストへ向かって煽りに煽る。
「名古屋のクソ野郎ども! 名古屋に集まったクソ野郎ども! まだまだたんねぇじゃねぇのか! 全員、首よこせぇぇぇ!!」 (マナセ)
「お前らかませぇ!!」(レム)
「呪えんのか!!」(ホムラ)

ツービートが猛り狂う「逢魔時に染まる私の自傷跡」を叩き込み、さらに混沌とした世界を創り上げる。そして今宵最後の晩餐曲は「混ざり」だ。大蛇が地を這うようなヘヴィサウンドが会場を覆い尽くすも、後半の6人の歌声とメロディは闇の中に差す光のように、救いの手を差し伸べているようだった。
こうして、マザリの怒涛の1年を象徴するマザリ一周年単独公演は終演を迎えた。
グループとして、6人それぞれとして、大きな成長を見せてくれた。そしてマザリは我々にまた新たな“呪イ”をかけてくるのだ。


セットリスト
- 呪詛(SE)
- 丑の刻参り
- お慕い申し上げます
- 一緒に死ぬ序でに愛して欲しい
- 御呪い
- 遺骸奇譚座
- ひとりかくれんぼ
- こっくりさん
- 禁呪
- 遺書
- 人形-ヒトガタ-
- メンタルリストカット
アンコール - 逢魔時に染まる私の自傷跡
- 混ざり
<二○二六年 七大都市単独巡礼『 呪物崇拝見世物花屋敷 』>
・日本最後の見世物小屋 ゴキブリコンビナート様とコラボ有リ
・呪物コレクター様をお招きし、特級呪物の紹介トーク有リ
・怪談有リ
【 日程 】
1月9日(金)大阪編
会場:心斎橋FANJ twice
開場 18:00 開演 19:00
《怪談アリ》
1月21日(水)名古屋編
会場 : 名古屋ReNY limited
開場 17:00 開演 18:00
《見世物・呪物紹介アリ》
2月8日(日)札幌編
会場:札幌ペニーレーン24
開場 12:00 開演 13:00
《怪談アリ》
2月11日(水祝)浜松編
会場:浜松FORCE
開場 17:00 開演 18:00
《見世物アリ》
3月8日(日)京都編
会場:京都ROKA
開場 17:00 開演 18:00
《見世物アリ》
4月4日(土)福岡編
会場:福岡evoL
開場 11:00 開演 12:00
《怪談アリ》
4月14日(火)ファイナル編
会場:EXシアター六本木
– バンドセット –
開場 18:00 開演 19:00
《呪物紹介アリ・怪談アリ》
[チケット販売]
https://t-dv.com/mazari_tour2026