【ライブレポート】植田真梨恵、ツアー<時間は止まりたがっている>東京公演に尊い音楽人生「時を止めずに素敵なものを生み出していきたい」

3年ぶりのニューアルバム『時間は止まりたがっている』の、極めてパーソナルな情感とハンドメイドな打ち込みサウンドの質感をどうやってライブに持ち込むんだろう。音源が大傑作なだけに期待の中にちょっぴり心配も忍び込む、<LIVE TOUR 2025 [時間は止まりたがっている]>。愛知・名古屋と福岡・久留米を経て今日10月30日は東京・恵比寿、2日後のラスト大阪・箕面へ向けての大切なセミファイナルだ。
ステージ奥には新作の象徴でもある巨大な時計、出囃子はPogoの「BLOOM」。4人編成のバンドを従えて登場した植田真梨恵、手拍子をうながしながら軽快なピアノポップ「double STANDARD」で平日夜に足を運んでくれたフロアいっぱいのファンをお出迎え。重たいシャッフルビートの「Lady Frappuccino,」を経て、原曲のシンプルな打ち込みをクールな人力テクノポップ風に仕上げた「暴走列車」で「あ、今日はいいライブになる」と確信する。ギタリストが吹く口笛が可愛い。「SAD VACATION」のBOØWYみたいなソリッドなギターリフがカッコいい。ちょっぴり懐かしい「hanamoge」の心はずむリズムが楽しい。80’sニューウェーヴ的な硬質な音色にタイトなリズムの土台とピアノとシンセの多彩なデコレーション。生きのいいバンドだ。


「東京、お待たせ。リキッドルームに来たよ。なんも考えずに楽しもうね。存分に歌い踊り、舞い上がってください」──植田真梨恵
ここから4曲は新作から離れて以前の曲を。「Black Cherry In The Dirty Forest」はメロウなエレクトリックピアノとスライドギターの調べに乗せて、「Stranger」はこの日初めてアコースティックギターを手に取ってしなやかで揺れるグルーヴに乗せて。ノスタルジックなフォークソングが香る「プライベートタイム」からメロディアスなクラシックロック風味の「I was Dreamin’ C U Darlin’」へ、透明感あるファルセットが美しく胸に染み入る。植田真梨恵の歌にはどんなに激しくてもポップな曲でもやむにやまれぬ哀愁がある気がする。


廣瀬武雄(キーボード)、Shinya Nagahama (ギター)。佐伯ヒデマサ(ドラムス)、スミダトモヨシ(ベース)。名付けて植田真梨恵&The Reflectionsは、これまでと編成を一新したピカピカのニューバンド。植田の「どっか行きたい国ある?」という思い付きの質問に真面目に応えるメンバー、突っ込む植田、笑う観客。廣瀬が行きたいアラスカのバローの日本食レストランOSAKAはちょっと気になる。佐伯はまだ22歳らしい。
ゆかいな仲間を引率して再び『時間は止まりたがっている』の世界へ、エレクトロでアンビエントな「田んぼ・トライアル・パチンコ屋」を同期を使わずに完全生グルーヴでやり切ったセンスの良さとメンバーの力量に驚かされ、エレクトリックギターを弾きながらダブルボーカルを廣瀬と分け合う「ロマンスを超えろ」のあたたかくも切ない世界観にゆっくりと浸かる。サビ終わりでまばゆいバックライトがステージを包み込む、曲の展開にシンクロする照明の演出も素晴らしい。


「FAR」を挟んで新作からの「バイオリンの見た夢」、過去に戻って「BABY BABY BABY」「distracted」と、ゆったりじっくり聴けるタイプの曲が時を超えて繋がる。「バイオリンの見た夢」の怖いアトラクションみたいに突如閃光がひらめくシーンに飛び上がる。「BABY BABY BABY」の歌詞があまりにも切なくて茫然とする。「distracted」のキーボードが出すフルートの音がビートルズみたいで郷愁をくすぐる。時間は止まりたがっている。
「『時間は止まりたがっている』には、文化的に、時を止めずに素敵なものを生み出していきたいという思いを込めています。歌を作るのも歌うのも大好きで、これからも歌っていくんですけど、今回バンドメンバーを一新したのも、このアルバムでは馴れ合いを避けるべきだと思ったので、不慣れでも新しく生み出していくことが大切だと感じたからです。それは「恥ずかしい」という曲を書いてから、音楽との向き合い方をもう一度考えてみたからです。自分がどんな歌を2025年に置いていけるのか、そんな気持ちで真剣に作ったアルバムです」──植田真梨恵

そのきっかけになった名曲「恥ずかしい」は自伝的で丸裸で悲しくて力強い歌詞と、心のままの熱唱がただただ素晴らしいライフソング。さりげなくも強いビートで支えるバンドが頼もしい。「百獣の王」も『時間は止まりたがっている』の中で特に飾らない質感とパーソナルなぬくもりを感じるラブソング。感情は奔放に音程は正確に、歌い手・植田真梨恵の圧倒的な巧さを噛み締める2曲。理屈はいらない。
「ありがとう。幸せだね。新しい曲をいっぱい歌ってきたので、けっこう昔の、人の歌を歌います」──植田真梨恵
ゴダイゴのカバー「ホーリー&ブライト」(1979年発表)は意外な選曲だが、『時間は止まりたがっている』の制作のために「70’sや80’sのポップスやロックを掘りまくった」とBARKSインタビューで言っていたから、その中で再発見した曲かもしれない。タンバリンを叩きながら明るく楽しく歌い踊る姿が実に楽しそう。マラカスに持ち替えて「アストロフォーインダストリアル」へ、ミラーボールの星降る中でフロアがきらきらのディスコティークに、植田真梨恵が華麗なディスコクイーンに変身してくるくる踊る。そのままビートに乗って懐かしの「中華街へ行きましょう」、そして物語のエンドロールのようにすべてを優しく包み込む「変革の気、蜂蜜の夕陽」へ、大きく手を広げて光の中での高揚感溢れるエンディング。これが生き様。実に美しい。


「ありがとう、楽しかった? 良かった!」──植田真梨恵
ニコニコ笑顔のアンコールは、まずは嬉しいお知らせから。2026年1月から3月にかけて、<LIFE OF LAZWARD PIANO-蘇りの呪文->の開催決定。変革の時を超えて、すでに2026年を見据えて走りだしている、ファンとの約束を兼ねたお別れの曲は「憂うべき」だ。「明日からも頑張っていきましょう」と呼びかけて、ゆったり揺れる大きなリズムに乗って歌う声が優しい。最後に記念撮影を終えてステージ袖に消えるまで、笑顔で手を振り続けるハッピーエンド。



<LIFE OF LAZWARD PIANO-蘇りの呪文->は全国11会場、東京公演は3月28日、三越劇場にて。ノスタルジーとパーソナルに回帰した『時間は止まりたがっている』をバネにして、時を止めずに素敵なものを生み出し続ける植田真梨恵の音楽人生は尊い。お楽しみはこれからだ。
取材・文◎宮本英夫
撮影◎小村まき
■<LIVE TOUR 2025 [時間は止まりたがっている]>10月30日(木)@東京・恵比寿 LIQUIDROOM セットリスト
01 double STANDARD
02 Lady Frappuccino,
03 暴走列車
04 SAD VACATION
05 hanamoge
06 Black Cherry In The Dirty Forest
07 Stranger
08 プライベートタイム
09 I was Dreamin’ C U Darlin’
10 田んぼ・トライアル・パチンコ屋
11 ロマンスを超えろ
12 FAR
13 バイオリンの見た夢
14 BABY BABY BABY
15 distracted
16 恥ずかしい
17 百獣の王
18 ホーリー&ブライト (ゴダイゴ)
19 アストロフォーインダストリアル
20 中華街へ行きましょう
21 変革の気、蜂蜜の夕陽
encore
22 憂うべき
■<LIFE OF LAZWARD PIANO-蘇りの呪文->
▼2026年
1月10日(土) 石川・金沢AZ
open17:00 / start17:30
1月12日(月祝) 新潟・ジョイアミーア
・箱庭の集い:open14:30 / start15:00
・LAZWARD PIANO:open17:00 / start17:30
1月17日(土) 福岡・border
・昼公演:open14:30 / start15:00
・夜公演:open18:00 / start18:30
1月18日(日) 広島・Live Juke
open16:30 / start17:00
2月08日(日) 愛知・ボトムライン 名古屋
・箱庭の集い:open14:30 / start15:00
・LAZWARD PIANO:open17:30 / start18:00
2月14日(土) 大阪・あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール
open17:00 / start17:30
2月21日(土) 宮城・ルフラン
・昼公演:open14:00 / start14:30
・夜公演:open17:30 / start18:00
2月28日(土) 香川・燦庫 -SANKO-
・箱庭の集い:open14:30 / start15:00
・LAZWARD PIANO:open17:00 / start17:30
3月01日(日) 愛媛・Monk 松山
open16:30 / start17:00
3月08日(日) 北海道・豊平館
open18:30 / start19:00
3月28日(土) 東京・三越劇場
open16:45 / start17:30
▼チケット
●大阪・東京公演:¥7200 / 全指定席
●OTHERS:¥6000 / Drink代別途 / 整理番号付全自由
※北海道 豊平館はドリンク代無し
●学生割引 ※全公演:¥4000 / 公演によりDrink代が別途必要
※学割は小学生・中学生・高校生・大学生・専門学校生対象です。
※ご入場時に学生証のご提示が必要です。小学生は年齢を証明できるものを、中学生以上の方は学生証をご持参ください。
※学生証をお忘れになった場合、入場時に一般料金との差額をお支払いいただきます。
【箱庭最速先行受付】
受付期間:11/1(土)20:00~11/9(日)23:59
https://hakoniwa.bitfan.id
関連リンク
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