【ライブレポート】杏里、6thアルバム『Timely!!』全曲披露のツアー「今やるのが“タイムリー”だと思った」

2025.10.31 23:17

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ニューヨークの摩天楼のようなセット。そこに流れる雑踏の音。とあるバーに集まった気心知れた仲間たち。誰からともなく楽器を奏で歌い始め、今宵も熱い夜が幕を開けた…。そんな物語を紡ぐように始まったライブ。杏里のツアー<ANRI LIVE 2025 TIMELY !!>の東京公演が、10月17日、東京国際フォーラム ホールAにて行われた。

このツアーは1983年にリリースされた、杏里の6thアルバム『Timely!!』から全曲を生披露するという試み。同作には「CAT’S EYE」や「悲しみが止まらない」といった杏里の代表曲が収録され、世界的なシティポップブームを受けてアナログ盤が再発されるなど今、再び熱い視線を浴びている。ライブ序盤では、同作から心地よい風が吹き抜けるような「SHYNESS BOY」やバラードの「YOU ARE NOT ALONE」が披露され、杏里世代のベテランファンの胸を熱くさせた。サビに重なる重厚なコーラス。泣きのギターソロ。オリビア・ニュートン=ジョンやエアサプライなどを彷彿とさせるサウンドと、どこまでも抜けるような杏里のロングトーンに“あの頃”がよみがえった。

「デビューして長いけど、アルバムから全曲やる機会がなかなかなくて、ずっとこういうツアーをやりたいと思っていた。それがやっと叶って。今やるのが“タイムリー”だと思った」と、アルバム『Timely!!』をテーマにしたツアーを開催するに至った経緯を語った杏里。このアルバム『Timely!!』は、中山美穂や中森明菜のプロデュース/楽曲提供などでも知られる、角松敏生の全面プロデュースによる作品。MCでは、ラジオ番組で出会い、同世代で聴いて来た音楽も似ていたことで意気投合したことなど角松とのエピソードを明かし、「1曲上がるたびワクワクして聴いた」など、当時を振り返った。

『Timely!!』以外からの楽曲も数多く披露されたライブ。「砂浜」などを歌ったコーナーでは、夏の海を題材にした切ないナンバーを数曲、波の音をバックにしっとりと披露した。杏里と言えば「CAT’S EYE」などアッパーのダンスチューンで知られるが、失恋の曲も数多く歌って来た。彼女の代表曲「オリビアを聴きながら」もそんな1曲で、知人の披露宴で「オリビアを聴きながら」を歌ってほしいとお願いされることも多く、晴れの日に失恋の曲を歌うのはどうかと、複雑な気持ちを抱えながらリクエストに応えていたというエピソードを披露して、会場に笑いが広がる場面もあった。

見どころとなったのは、ゲストの角松敏生とのセッションが繰り広げられた中盤のコーナーだ。バンドによるインストゥルメンタルの楽曲が演奏されたのちステージが暗転し、次に明かりが付くとセンターに角松敏生の姿。それを観て一気に沸き立ち、一斉に立ち上がった会場。角松の軽快なカッティングと共に始まった「WINDY SUMMER」では、杏里も歌いながら観客と一緒にクラップし、手を左右に揺らして、ハワイを感じさせるカラッとした心地よい風を楽しんだ。角松とは『Timely!!』から「STAY BY ME」でもコラボを繰り広げ、角松はエモーショナルにギターを演奏。最後にバンドと息を合わせて楽曲を締めくくった。

2人がステージで共演するのは22年ぶりとのこと。MCでは、出会いや同じ事務所に所属することになった経緯など、杏里との深い縁を語った角松。杏里も「当時は角松さんのような世界観をやってる人はいなくて、すごくかっこよかった。音楽の相性も良かった」などコメント。角松とは「I CAN’T EVER CHANGE YOUR LOVE FOR ME」もコラボし、デュエットで美しいハーモニーを聴かせた2人。角松のギターに呼応するように、杏里も渾身のフェイクを繰り広げ、最後は角松の指揮で楽曲を締め、翌日に仙台でのライブが控えているという角松をハグで送り出した。角松との共演に杏里は、「22年ぶりとは、月日が過ぎるのは早いもの。私も11月で47年目です。まだまだ音楽は続けて行きたい。だって、こんな瞬間があるんだもん!」と、感慨深げにコメントした。

「青春時代に戻りませんか?」との問いかけで始まったライブ終盤戦は、「気ままにREFLECTION」や「HAPPY ENDでふられたい」など、1980年代のヒットシングルを繰り出し、会場には手拍子と一緒に観客の口ずさむ声が広がった。「みんなで一緒に歌いましょう!」と声をかけて会場が一体となったのは、『Timely!!』にも収録の「悲しみが止まらない」。ダンサーも登場してステージを華やかに盛り上げ、杏里がマイクを会場に向けて観客だけで歌う場面や、歌詞に合わせてストップするポーズも。うれしそう笑顔をほころばせる杏里も、ソロ演奏で魅せたサックスとハイタッチした。

この日は、変わらぬ美しい歌声をしっとりと響かせた「オリビアを聴きながら」や、爽快なコーラスと共に歌い上げた「思いきりアメリカン」などのヒットナンバーも披露された。また、世代と国境を越えたヒットナンバーとなった「CAT’S EYE」も披露し、赤いライトが怪しく照らす会場に観客の大合唱が響き渡った。

撮影レスリー・キー

20曲以上を歌い、息切らせながら「東京最高!」と、うれしさを爆発させた杏里。「私の旅はまだまだ続きます。ここまで音楽ながくやってきて良かったと思える一日でした。こんな日を迎えられたのは、長く聴いてきてくれたみんなのおかげです」と、感謝の気持ちを表した彼女。「まだ歌って歌って歌って、歌い続けます!」と、最後に力強くコメント。写真家のレスリー・キーを呼び込んで客席をバックに記念撮影を行ったほか、「たくさん応援をいただいたお返し」とバンドメンバーや客席に投げキッスを贈ってステージを後にした。

杏里世代には懐かしく、今の世代には新しく新鮮。今世界を席巻しているシティポップが満載された、最先端のライブを体感した一夜。40年近く経っても変わらない、杏里のハリのある美しく伸びやかな歌声と、ブラスやコーラスを交えたバンドによるゴージャスなサウンドに酔いしれる。時代を越えた実に贅沢な空間だった。

取材・文◎榑林史章

<ANRI LIVE 2026 U.S.A Timely!!>
5月17日(日)
New York
Brooklyn Paramount
開場:19:00 / 開演:20:00

5月20日(水)
Los Angeles
The Wiltern
開場:19:00 / 開演:20:00

チケット一般発売
・NY公演
NY現地時間:10月31日(金) 10:00
日本時間:10月31日(金) 23:00

・LA公演
LA現地時間:10月31日(金) 10:00
日本時間:11月1日(土) 2:00

※チケットは先着販売となります。

チケットリンク
https://www.ticketmaster.com/anri-tickets/artist/723990

・優先入場付公演チケット
・サイン入りツアーポスター
・VIP限定グッズ
・VIPラミネート/ストラップ
・グッズ優先購入(会場によりない場合がございます)
・VIP専属チェックインカウンター&スタッフ
※上記チケットリンクにて限定枚数販売されます。

お問い合わせ
NY公演:info@brooklynparamount.com
LA公演:frontoffice@livenation.com