【ライブレポート】結成50年を超えて鳴らす絆のサウンド、オリジナルメンバーで刻むZEBRAの軌跡

アメリカのハードロックトリオバンド、ZEBRAをご存知だろうか?日本ではあまり認知されていないかもしれないが、現在、ZEBRAは記念すべき50周年ツアーが全米各地で開催されている。

1975年にニューオーリンズで結成された彼らは、オリジナルメンバーであるランディ・ジャクソン(Vo, G.)、フェリックス・ハネマン(B, Key、Vo)、ガイ・ゲルソ(Dr)で現在も活動を続ける最長記録を持つバンドとして、その偉業は他の追随を許さない。




ただ、彼らは1983年リリースのデビューアルバムこそゴールド認定を受け、メジャーなアトランティック・レコードで最速で売れたものの、「大衆に広く知られている」あるいは「メジャーチャートを常に席巻している」というものとは違うバンドで、次作以降にリリースされたアルバムも傑作ながら商業的な成功は限定的だった。しかし、彼らの持つプログレッシブな要素や、テクニカルな技巧、メロディックな旋律は、根強く支持されている。

そんなZEBRAの50周年ツアーを、これぞラスベガス!なフレモント・ストリート・エクスペリエンスのステージと、フェニックスでの2公演を観る事が出来た。ラスベガスは、カラフルなアーチ型の天井がユニークな場所、彼らのステージ直前にはこのストリートの天井が全てZEBRAの演出になっていた。

ステージ前には、50年という歳月の重みを感じさせない、熱狂的なファンたちの姿があった。ステージに登場したメンバーの3人は、力強さと若々しいエネルギーを放っており、特にランディ・ジャクソンの変わらぬ歌声とギタープレイは圧巻で、時の流れを忘れさせる迫力に満ちたものだった。


コンサートは約2時間に及ぶ長時間構成で、新曲と往年のクラシック・ナンバーを巧みにミックスした構成となっていた。ランディは、トレードマークであるB.C.リッチのダブルネックギターと、マイケル・ケリー・ギターズのシグネイチャーとアコースティックの3本を使用。


オープニングには彼らの歴史と栄光が辿れる映像が流れ、「As I Said Before」、「She’s Waiting for You」に続き、序盤から新曲「All Your Love」が披露される。過去の楽曲とも違和感のない彼らならではの質感なもので、5枚目のスタジオアルバムのリリースに期待が高まった。初期アルバムを手掛けたジャック・ダグラスがプロデュースだそうで、チープ・トリックやエアロスミスでも名を馳せたプロデューサーだ。

そして、「One More Chance」あたりから彼らの真骨頂なサウンドが本格的になってくる。3人だけでこれほどまでに重厚かつダイナミックなサウンドを生み出せるのは、50年間培った絆と技術の賜物だろう。ライブでの再現性が非常に高く、ラスベガスは野外のステージでも出音も抜群に良い。

代表曲「Tell Me What You Want」や「The La La Song」では観客全員が歌い、バンドと一体となった感動的な瞬間に。中盤でも新曲「Walk With You」を挟みながら、往年の名曲である「Who’s Behind the Door」や「Wait Until the Summer’s Gone」の流れも彼らの楽曲の持つタイムレスな魅力を再確認させてくれた。
終盤の「Take Your Fingers From My Hair」は、もう彼らの半世紀を総括した出来栄えで、ラストにサービスでプレイするのが定番になっているレッド・ツェッペリンはこの日は「Stairway to Heaven」だった。(曲はその時による)これは、彼らのルーツとなる音楽への敬意と、それを自分たちの解釈で昇華させる技術力の高さで、ランディのギターソロは神がかり的な演奏だった。

事前に貰っていたセットリストからはちらほらと曲順が変わり、これについてフェリックスはステージ上で「ベースとキーボードを兼任してるこっちの身になってくれよ、大変なんだよ(笑)」と愚痴る場面も面白く、観客を和ませていた。彼のプレイはとても情熱的で、ガイのパワーヒッターぶりも素晴らしくエネルギッシュ。50年という長い歳月を経ても、ZEBRAの音楽に対する情熱と観客への愛情は全く衰えを見せない。


パフォーマンスも年を重ねるごとに深みを増し、より洗練されたものになっていると思うが、とにかくオリジナルメンバーで50年間活動を続ける偉業は、ロック史に永遠に刻まれるべき記録に思う。
パワートリオとしての完成度の高さ、楽曲の普遍的な魅力、そして何より音楽への純粋な愛情が、観客の心を確実に掴んでいる。
今後も続くツアーでは、さらに多くのファンがこの歴史的瞬間を共有できることだろう。
文・写真 : Sweeet Rock / Aki
< ZEBRA 〜 50th Anniversary Tour 2025 〜>
2025年9月20日
Fremont Street Experience, Las Vegas, NV, USA
1.As I Said Before
2.She’s Waiting for You
3.All Your Love (新曲)
4.One More Chance
5.Tell Me What You Want
6.Bears
7.Better Not Call
8.Walk With You (新曲)
9.Little Things
10.The La La Song
11.Time
12.Who’s Behind the Door
13.Wait Until the Summer’s Gone
14.Take Your Fingers From My Hair
15.Stairway to Heaven
< ZEBRA 〜 50th Anniversary Tour 2025 〜>
2025年9月21日
Crescent Ballroom, Phoenix, AZ, USA
1.As I Said Before
2.She’s Waiting for You
3.All Your Love (新曲)
4.One More Chance
5.Can’t Live Without
6.Tell Me What You Want
7.Bears
8.Better Not Call
9.Walk With You (新曲)
10.Little Things
11.The La La Song
12.Time
13.Who’s Behind the Door
14.Wait Until the Summer’s Gone
15.Arabian Nights
16.Take Your Fingers From My Hair