【インタビュー】友希、1stフルアルバム『Main Dish』で結実した“これまでの自分”──そして開けた未来への展望とは

シンガーソングライターの友希が、アルバム『Main Dish』を10月29日にリリースする。
声優とアイドルの活動を両立するハイブリッドユニット・i☆Risのメンバー・若井友希でもある彼女は、約8年前に“友希”名義でのシンガーソングライターとしての活動をスタート。以降楽曲リリースやワンマンライブなど、様々な活動を通じて研鑽を重ねてきた。
そんな彼女がリリースする本作は、これまでも楽曲制作に携わってきたRyo’LEFTY’Miyata(以降:レフティ)とタッグを組み制作。約1週間にもわたる楽曲制作合宿などを通じて制作した新曲8曲を含む12曲を収録している。そうして生み出された本作に、友希が込めたものとは。これまでの道のりも振り返りつつ、その想いに迫った。
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◼︎抱えていた葛藤の先の“自信”を得て、満を持してのアルバムリリース
──『Main Dish』の発売が近づいてきましたが、今の率直な想いはいかがですか?
友希:ちょうどこのインタビューの前にレコーディングがひと通り終わって、自分が直接携わる部分が終了したので、まずはレコーディングを飛ばすことなく全曲いい状態で録れたことにホッとしています。グループとは違って全部ひとりなぶん使うエネルギーも多いですし、7月半ば頃から1日2曲とかを連日レコーディングしたりもしていたので、とにかく「絶対に万全の体調でいなきゃ!」という気持ちでいたんですよ。なので今は、「お疲れさまでしたぁー!」な気持ちでもありますね。
──レコーディング自体はもちろん、ファンも参加した楽曲制作合宿もありましたし。
友希:そうですね!1週間の合宿で、新曲8曲のうち7曲を作ったんですよ。音楽だけを1日やるなんて普通に生きていたらないと思うんですけど、その1週間は「音楽を作る」「ごはんを食べる」「寝る」の3つしかしていなかったんです。しかもそれを東京の喧騒を離れて、電波もちょっと繋がりにくいような山梨の山奥に行ってやって……そのおかげですごく没頭できたのも、とてもいい経験でした。
──これまでリリースされてきた配信シングルとも、また違う経験の詰まった作品にもなった。
友希 全然違いますね。特に、合宿でゼロから作り始めた曲には大変さもありましたけど、自分でも「東京の自分の家だと、きっとこのメロディは出ないな」と思いましたね。それと、レフティさんとしっかりとコンセプトから話し合って作っていけたというのも大きかったです。レフティさんはお忙しい方だから、今まではリモートを活用して制作するようなこともあったので。
──そんな『Main Dish』についてお聞きする前に、これまでの活動についても振り返らせてください。最初に“友希”としてステージに立たれてから約8年。それから今に至るまでの期間を、友希さんはどんなものだったと思われていますか?
友希:すごく、優柔不断だったなぁと思います。その大きな要因のひとつとしては……正直言うと、“若井友希”という声優アイドルの存在が、ときにすごく邪魔になることがあって。それが、一番苦労したところでもあるんですよ。
──特に、どんな苦労があったんでしょうか?
友希:私は「たとえ今のファンの方がいなくなっても、“友希”というシンガーソングライターとして生きていく覚悟を持ってやらなきゃ!」と決意してこの活動を始めたんですけど、ファンの方には根本に“若井友希”という声優アイドルの存在があるんですよね。それもあってか、“友希”という存在を広めることの難しさというものがずっとあって……ぶっちゃけ私、「アニソンシンガーを目指したほうがいいのかな?」と思ったときもあったぐらいなんです。
──シンガーソングライターではなくて。
友希:そうなんです。今いるファンの方を大事にしたいという想いも強くて、「求められていることをやるほうが、ファンのみんなは喜んでくれるんじゃないか?」って迷ったりもして。「どうしよう?やる?やらない?……でもやっぱやる!」みたいに、貫けずにいたんです(笑)。
──そういう葛藤も、実は抱えながらの活動でもあった。
友希:はい。そのときの心境は今回のアルバムに収録した「遺言」という曲に込めています。でも、去年ひとりでツアーを回ったぐらいからかな? シンガーソングライターとして生きることに、すごく自信がつきました。
──それが、ひとつのきっかけのようなものになった?
友希:そうですね。この頃から「友希の歌を歌ってるけど、実はi☆Risの若井友希のほうが好きなんじゃない?」みたいな不安がなくなって、「自分の音楽を受け取ってくれる人がいれば、それでいい」となれたというか。「いい」と言ってくれる人がいることに自信も持てるし、「私の活動、普通にめっちゃいいやん!」みたいに自分に自信を持てるようにもなった。逆にそれまでは、本当にずっとブレブレだったんですよね(笑)。だからこそ結果的にいろんなジャンルの曲ができていたんですけど、それが今に繋がって“私”になったようなところもあるので、今では「逆によかったのかも?」と思います。

──そしてこの度、アルバム『Main Dish』がCDとしてリリースされます。これまでの楽曲は配信シングルとしてリリースされてきましたが、今回CDにされたのはなぜですか?
友希:私、アルバムだけは絶対にCDにしたかったんです。この8年間で「CDが当たり前の時代」から「サブスクが当たり前の時代」へと変化して、私自身もシングルを出すことに関しては、時代に沿ったサブスクというやり方で全然いいと考えていたんですね。でも、自分が子供の頃ヘビロテしていたアルバムが実家に並べられているのを見ると、実物を持つことによってその人のアルバムに対しての思い入れがより深くなるように感じていたので、どうしてもアルバムはCDにしたかったんですよ。
──なるほど。アルバムだからこそ。
友希:はい。どうやら最近は「シングル曲を全部集めるだけでよくない?」みたいな、「わざわざコンセプトを立てて“アルバム”というものを作る意味がわからない」という方が多いみたいなんですけど、それでも私は「このアルバムが、この時期の自分を救った」みたいなものって、きっとみんなにもあると思っていて。誰かのその1枚になれたら……という気持ちもあるんです。なので、今回やっと皆さんにCDとしてお届けできるということがめちゃめちゃ嬉しいんですよ。それに、ファンの方も配信シングルの頃からずっと「CDが欲しい」と言ってくれていたので、とても喜んでくれました。
──そんな『Main Dish』は、制作費をクラウドファンディングで募って制作が実現したものです。開始直後から、すさまじい反響でしたね。
友希:正直「100%行かないかも」と思っていたので、本当にびっくりしました。こればかりは感謝しかないですし……“友希”としては“若井友希”を敵に感じてしまうこともあったんですけど、これに関しては“若井友希”という存在がなかったら絶対にできなかったことだから、今までの自分にも感謝ですね。
──その反響を受けて、やはり意欲も高まりましたか?
友希:はい! 「『アルバム作って終わり』はもったいないから、その後も“友希”としてどんどんみんなに面白いものを提供できるな」と思えて、やりたいこともいっぱい増えました。





