【ライブレポート】ギロチンもフランケンシュタインも…アリス・クーパー、壮大なロック演劇で観客を異世界へ

2025.09.30 19:06

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ショックロック界のゴッドファーザー的な存在であるアリス・クーパー。2025年春夏に展開した<Too Close for Comfort Tour>を8月に終え、翌9月からはジューダス・プリーストとのダブルヘッドライナーツアーで<Alice’s Attic Tour>を開始した。まさにショックロックの真骨頂を見せつける圧倒的なステージは、77歳という年齢を感じさせないパフォーマンスで、私たち観客を別世界へと引きずり込んでくれた。

ステージは、アリス・クーパーの代名詞である演劇的要素が存分に盛り込まれている。お馴染みなゴシックホラーの定番に加え、目新しい演出もあり、バックドロップスクリーンは常に揺れ動いたり、捻れたりするアニメーション効果で実に不思議な感覚を見せてくれる。

アリス本人は、深みのあるハスキーヴォイスで冒頭から手にしていたスティックを客席に投げ入れたり、「I’m Eighteen」での松葉杖パフォーマンスも「Dirty Diamonds」でネックレスをばら撒くのも期待通りの進行だが、巨人なフランケンシュタインが登場した「Feed My Frankenstein」はハイライトのひとつになっていた。

現在のバンドメンバーは、ライアン・ロキシー(G)、チャック・ギャリック(B)、トミー・ヘンリクセン(G)、グレン・ソーベル(Dr)、ニタ・ストラウス(G)といった実力派ミュージシャンたちが織りなすサウンドは、アリスのヴィジュアルショックとも上手く融合していると思う。

ハイライトの2つめは、「Hey Stoopid」で起こった。ステージ上にカメラマンが乱入したのだが、これは珍しくもない事であるから普通にそれを観ていると、アリスにカメラ目線をくれるよう、何度かカメラマンが問いかける。歌っているアリスは無視を続けていると、カメラマンが口論を始め、それにキレたアリスがマイクスタンドでカメラマンの腹部を刺し、退場させるというもの。これも演出だったのに、まんまとハラハラさせられてしまった(笑)。

このように、アリス・クーパーのライブが他のアーティストと一線を画すのは、単なる音楽パフォーマンスを超えた総合エンターテインメントとしての完成度の高さにある。人形を使った演出や、精巧な殺人劇、そして彼自身の卓越した演技力が融合したステージは、ロックコンサートというよりもむしろ、音楽を伴った壮大な演劇作品になっている。

3つめのハイライトはやはりギロチンシーンだろう。アリスの奥様でもあり、ダンサーとして参加しているシェリルがアリスを斬首し、またその生首を手にするシーンなど、非常にショッキングでありながらも観客を引き込み、ややコミカルな場面も楽しませてくれる。

2025年の公演においても、彼のパフォーマンスに対する情熱と完璧主義は健在だった。細部まで計算し尽くされた演出と、観客との一体感を重視する姿勢は、半世紀以上にわたってステージに立ち続けてきた真のエンターテイナーであることを改めて証明したショウとなった。

彼の世界観は、今の時代においても色褪せることなく、むしろ新鮮な衝撃を与え続けている。

文・写真◎Sweeet Rock / Aki

< Alice Cooper ~ Alice’s Attic Tour 2025 ~>
2025年9月18日
@Ameris Bank Amphitheatre, Alpharetta, GA, USA
1.Who Do You Think We Are
2.Spark in the Dark
3.No More Mr.Nice Guy
4.House of Fire
5.I’m Eighteen
6.Muscle of Love
7.Feed My Frankenstein
8.Dirty Diamonds
9.Caught in a Dream
10.Hey Stoopid
11.Dangerous Tonight
12.Poison
~Guitar Solo~(Nita Strauss)
13.Brutal Planet
14.Ballad of Dwight Fry
15.Cold Ethyl
16.Only Woman Bleed
17.Second Coming
18.Going Home
19.School’s Out