【ライブレポート】MADMED、前身グループから半年。悲願のLIQUIDROOMソールドアウト

2025年8月5日、MADMEDがLIQUIDROOMに帰ってきた。
今年1月7日、前身グループであるMAD MEDiCiNEが活動終了を迎えたのがここLIQUIDROOMだった。そして同月27日、中心メンバーであった那月邪夢を軸に強力な新メンバーを迎え、MADMEDとして新たに活動を開始する。
そこから半年強──。
<MADMED 7大都市単独ツアー 『激毒ケミカルトリップ』>ツアーファイナルをここLIQUIDROOMで、しかもソールドアウトで迎えることができた。それはMAD MEDiCiNEからの唯一のオリジナルメンバーである邪夢にとってはもちろんのこと、他メンバーにとっても悲願であったことは言うまでもあるまい。

高鳴るデジタルなSEに合わせ、狂気のケミカルな蛍光色に彩られたステージに6人が現れる。それぞれの場所に陣取ると、架空使てんると甘噛ミ妖メが手を繋ぎながら歌い出した。べっとりとした声を持つてんると妖艶で陰のある響きを持つ妖メ。碧空の空使と紫色の悪魔、2人の歌声はすっかりMADMEDのダークファンタジーな世界に欠かせないものとなっている。奇天烈なデジタルビートと妙ちきりんなメロディが聴き手の脳髄にまとわりつく「ケミカルトリップ」でライブはスタートした。ツアータイトルになっている新曲の初披露である。轟音とともに解き放たれる無数のレーザーとステージバックに構えるビジョンの映像演出も相俟って、ケミカルでおぞましいMADMEDワールドへ、会場に居る全員がトリップさせられる。

「今宵の『ケミカルトリップ』、思いきり揺らそうかァァ!!」
魔王・邪夢が邪悪な雄叫びをあげると「まじかるはっぴえんど」へ突入する。狂気性と猟奇性が轟くアッパーチューンだ。電子音が猛り狂う渦の中、てんるがねっとりとした声色でオーディエンスの耳を襲い、猿馬虎の勇壮なシルエットがオーディエンスの目を奪う。複雑で性急な楽曲展開をMADMEDのグルーヴとして昇華していく6人の電脳戦士。さらに「全員踊れ!」と邪夢の導きのままに、フロアの6色に彩られたペンライトが右へ左へと揺れ動く黒猫のダンス」へと傾れ込んだ。蠱惑的に魅せゆく彩メと飄々とした佇まいの深ゐ沼のコントラスト、正統派にも飛び道具にもなるおなかぺこ……そうした個性のぶつかり合いもMADMEDの大きな魅力だ。


1人ずつの自己紹介に続くは、悲壮と偏執が煩雑していく「私ノ人生、台無シ」、さらにリズムが不可逆的に狂乱する「アシストール」と、複雑極まりないMADMEDらしいナンバーを立て続けに披露していく。言葉を吐き捨てるようなボーカルも、緻密なフォーメーションも、サッと魅せていく6人。そのスキルの高さをまざまざと知らしめる。
「せーので、ばっきゅん!」と、間髪入れずに沼の撃ち抜きから始まった「インスタントアイドル」、そして「ときめきオーバードーズ」と、明るめの曲調ゆえの狂った6人の演舞が冴え渡るナンバーを次々と投薬。「ときめきオーバードーズ」で妖メが最後の節を伸びやかなロングトーンでキメると、大きな歓声があがった。



普段は撮影NGのMADMEDライブだが、本ツアー限定では1曲のみ動画撮影が許可されている。このファイナルでは「毒葬」だ。フロアから掲げられるスマホに向かってそれぞれ愛想を振り撒く6人。普段ではなかなか見るこのできない光景だ。とは言っても楽曲は毒々しく、誰もが抱える心の闇を強く高らかに歌う“メンヘラの代弁者”というべきMADMEDであるから、あくまで妖しくも鬱くしい姿の6人である。
「診察を開始します……」と邪夢の呟きから始まった「MAD DOCTOR」。怒涛のラストスパートが始まった。MADMEDの始まりを告げた楽曲だ。MAD MEDiCiNE時代から掲げている「デジタル×ゴシック」はMADMEDになって、より強力なものとなった。四つ打ちのキックはけたたましく撃ち鳴らされ、重低音が聴き手の腹まで響く。加えて、予定調和ではない楽曲展開と突飛なメロディはMADMEDの音楽性の魅力である。続く「アンヘドニア」も同様で、難解なナンバーをエレガントでワイルドに表現していく6人の半年強の成長に驚愕する。

「狂躁シェイプシフター」では狂騒を引き起こし、「咲いて!」「狂躁!」のコール・アンド・レスポンスが会場を揺らした。そして、インダストリアルで高速なリズムとキャッチーなメロディが暴走していく「MAD GAME」でフロア諸共ボルテージ全開となり、本編を終えた。
アンコールで再び登場した6人、ひとりずつの挨拶へ。先陣を切ったのは邪夢。「ソールドが出たときはライブ配信してたんですけど、泣きそうなくらい嬉しくて。そして、こうやって実際たくさんの人で溢れていて嬉しい」とう語る。「MAD MEDiCiNEとしていちばん最後に立たせていただいてハコなので、本当に思い出深いんですけど……」と、このツアーについてのアイデアを6人で出し合って完走し、再びこのステージに立てた喜びを感慨深く語った。

「1月27日にデビューして、いろんなこともあったんですけど」と虎。初めてましての人がたくさん足を運んでくれたことに感謝をするも、それは同時に「これからももっと頑張らなきゃいけない」という戒めでもあり、「僕自身、ステージでこれからも音楽で自分の気持ちを伝えていけるように魅せていくのでこれからもよろしくお願いします」と力強く語ると大きな歓声があがった。

約半年前にこの会場で客席後方からMAD MEDiCiNEのラストを観ていたぺこは、想像していたより早くこの場所で多くの人が集まってくれたことに感謝。そして「ありがたいことにすごい忙しく活動させてもらえていて……その中で、みんなで考えて頑張って、ソールドして、嬉しかったからもっと頑張ります」と目に涙を浮かべながら展望を語った。

妖メも「懐かしいハコですね」と、5人でMAD MEDiCiNEを観ていたことを振り返り、「私たちもいつかこれくらい大きいステージに、と思っていたらまさかの7大都市ツアーファイナルで、いきなり恵比寿LIQUIDROOMと発表されて……」と驚きを隠せなかったことを明かす。始動早々から地方や海外など、いろんなところでライブをしてきて、今日もいろんなところから来てくれたことに感謝し、「最高の1日になりました!」と締め括った。

「てんるはMADMED入ってすぐのとき、(特典会の)列もほぼないくらい全然人が居なくて。元々ソロもやってたし、受け入れられなかったらどうしようって………」と、たくさんの観客が集まってくれたことに感謝をするも、始動当時の不安を吐露したてんる。「邪夢ちゃんはプレッシャーがすごかったと思うけど、支えたいから……てんるなりに邪夢ちゃんの負担を軽くしてあげたくて。最初はダメダメだったんだけど、どうやったらMADMEDが良くなっていくか、本当に、本当に考えてやってきたので。こうやってソールドアウトできたし、みんなバランスよく、みんなのファンのこんなにいるってすごいことだし、健康に生きて、ここにいられてることがすごいことだから……」と6人が支え合ってここまで来れたこと、それが自信になったことを明かした。

最後は沼。「多くは語らないんですけど」と前置きし、「これゴールじゃないからね、これスタートだと思って頑張ります。えいえいおー!」と大きな掛け声をあげ、フロアからも盛大な鬨の声が上がった。
「最高の盛り上がり、ありがとうございます! ラストまで楽しんでいこうかぁぁぁー!!」

邪夢が大きな声でさらにオーディエンスの士気を高めると、「眠罪」、「らぶぎみ」とキラーチューンを叩き込み、ラストは「完全犯罪※420」。デジタルとケミカルにまみれた宴、MADMED初の7大都市ツアーはこうして幕を閉じた。
そして当日猟奇的な映像とともに発表されたコンセプトアルバム『僕の暴力カルテ』の詳細が明らかになった。凶暴ながらも美しいMADMEDの世界観を堪能できる6曲が揃い踏みだ。
取材・文◎冬将軍
写真◎ミヤタショウタ
セットリスト
- ケミカルトリップ
- まじかるはっぴえんど
- 黒猫のダンス
- 私ノ人生、台無シ
- アシストール
- インスタントアイドル
- ときめきオーバードーズ
- 毒葬
- MAD DOCTOR
- アンヘドニア
- 狂騒シェイプシフター
- MAD GAME
アンコール
- 眠罪
- らぶぎみ
- 完全犯罪※420
コンセプトミニアルバム『僕の暴力カルテ』
2025年10月1日 デジタルリリース
《トラックリスト》
- フルスウィングバッドと子猫
- バイオレンスラブ
- 歪ナ愛
- 執着少女はまた汚れる
- 誰も知らない痣
- ヒステリックトリック
