曲折の果てに…

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曲折の果てに…

VH1の『Behind The Music』をいつも見ている方々(誇り高きLAUNCHの読者の皆さんは勿論そうだろうが)にとっては、Def Leppardの回は特に見ごたえ充分だったに違いない。あれほどまでに圧倒的な悲劇に直面しても存続しているバンドはそうはないだろう。大部分のバンドは、ほんの僅かな不協和音が出ただけで解散を決めてしまうし、ましてやギタリストが命を落としたり、ドラマーが片腕を失くしたりすれば、活動を続けるなどという発想すら浮かばないかも知れない。面白いもので、このVH1の番組はDef Leppardのメンバーたちにとっても、彼らの物語の曲折の重大さに気付くきっかけを与えることになったようだ。

あれ(『Behind The Music』)を見返して初めて、『うわぁー、こりゃあホントに波瀾万丈だな』って悟ったようなところがあるんだ
と言うのはギタリストのPhil Collenだ。
僕らの話なんだけど、自分たちで見ていても凄く面白かった。あれで一気に色んな事が俯瞰できた気がするよ

かつてはDef Leppardのマルチミリオンセラー(『Pyromania』『Hysteria』)を支えたレコード購買層の予測のつかない気紛れが、'90年代オルタナティヴバンドの最初の波の到来と共に、彼らをアンクールな(=ダサい)“'80年代の遺物”と片付けるようになっても、彼らは気に留めなかった。Def Leppardは昔から決して“クールさ”を売りにしたバンドではないのだ。
登場した時にはニューウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル(古式ゆかしいJudas Priestや強烈なリズムが持ち味のIron Maiden等を含むムーヴメント)の先駆者の一角と見なされてきたDef Leppardではあるが、そうしたバンドの中で、サウンドにキーボードを採り入れたり、分厚いバックグラウンド・ヴォーカルにカミソリのように切れ味鋭いギターを合わせたのは彼らが最初だった。

僕らはいつもちょっと違ってたんだ」とCollen。
大部分のハードロックバンドには明らかに、胸板をボコボコ叩いて男性的な部分を強調するようなところがあったけど、僕らはそういうものには同調しなかった。むしろ滑稽だとしか思えなかったからね。僕らはポップソングをプレイするロックバンドなのさ。ただ軽いだけのポップグループが無理してロックっぽく演ってるわけじゃない、元々生粋のロックバンドなんだよ。ただ僕らは楽曲の力ってやつを信じてるんだ。僕らにとって格好の青写真はQueenだった。何故って彼らは本当にロックしてたからね。どんなタイプのものを演るにしても、彼らには多くの人々にアピールする素晴らしい曲があったわけで、僕らが進んで行きたい方向はまさにあれだったんだ

だが、Def Leppardが何があってもずっと自分たちの信念を守り続け、“Rock OfAges”“Photograph”“Pour Some Sugar On Me”といった曲が'80年代に10代を過ごした若者たちにとっては決定的な青春のサウンドを形作ったとは言え、時代が変わり始めると彼らのアイデンティティもその混沌の中に巻き込まれてしまう。

僕が思うに、多分みんな色んなバンドのイメージにすっかり嫌気が差してたんだと思うんだよね。PoisonGreat White、Whitesnake、みんな同じようなルックスで、似たような曲を粗製濫造してただろ。僕らはそういうのと一緒くたにされるのはあまりいい気持ちじゃなかった。だって僕らはいい曲を書こうとしてたバンドだったから。僕らが大事にしてたのはイメージじゃなく、あくまで音楽だったんだ」。

 '96年のアルバム『Slang』は、Leppardがそれまでよりオーガニックなロックのフォーマットに自分たちをフィットさせようという努力の跡がうかがえるアルバムだった。だがレコーディングの度に何年という時間を費やし、数え切れないほどのギタートラックとヴォーカルトラックを重ね、3-Dサウンドイリュージョンを作ることでその地位を築いてきたバンドにとって、こうした粗削りなアプローチは、かえって彼らのオーディエンスに肩透かしを食わせる結果となってしまった。新しいトレンドを必死でパクろうとするバンドを、世間がもう必要としていないことをようやく悟ったLepsは、スタジオに戻り、以前やっていた通りのレコーディング手法で『Euphoria』の制作に取りかかる。

昔通りのやり方に戻したんだよ。つまり曲を書いてそれを分析していくって方法さ」とCollenは語る。「これはグレイトかな? 今のダメ? どこか一部分でも弱いところ、もっと良くできるところはない?ってね。これは実に時間のかかる作業なんだ

その11ヵ月後に彼らが世に送り出したアルバムは、もはや彼らが迷いや妥協をすっかり吹っ切ったことをハッキリと証明するものだった。第一弾シングル“Promises”ひとつとっても、まるで彼らがずっと変わらずにいたかのようだ。

僕らはMarc BolanとLed Zeppelinの要素をブレンドして、多くの人たちにアピールするようなものを作ることに力を入れてたんだ」とCollenは説明する。「そんなささやかなアイディアが最初にあって、しっかりした肉付けが行なわれた末に、それが実体を持つようになった。僕らが年月をかけてやり通してきたのは、多分そういうことなんじゃないかな

by Rob_OConnor

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