Dir en grey、アメリカから帰還!ツアー・レポート
9月22日夕刻、去る8月3日より渡米し、かのKorn主催による<THE FAMILY VALUES TOUR>に参戦していたDir en greyが無事帰国した。8月4日のテキサス州サンアントニオから9月20日のフロリダ州ウエストパームビーチに至るまで計31公演(うち2本はKorn単独公演にスペシャル・ゲストとして出演。また、結果的にキャンセルされた2公演は加算せず)を経たうえでの堂々の帰還である。ツアー全体を通じての正確な動員数などに関しては、現在のところ公式な数字が得られていないが、約2万人収容規模の野外アリーナを中心に展開されてきた事実を考えれば、彼らがどれだけ多くのオーディエンスの目に触れることになったかがおわかりいただけることだろう。
今回の一件が、あくまでKorn側からのラヴコールによって実現したものであること、そしてツアー参戦当初からDir en greyが他の出演者や現地関係者から強い注目を集めていたことについては、以前にもご報告した。が、ツアー全行程が終了した今、改めて強調しておきたいのは、彼らが“物珍しい奇異なバンド”として目を付けられていたわけではなく、いわゆる“next big thing(次にビッグになるもの))”になり得る存在として熱視線を独占していたという事実だろう。
ところで、多くの読者の興味は、このツアーの興行成績や各公演での演奏曲目の違いなど以上に、おそらく以下の3点に集中しているのではないかと思われる。
(1)Dir en greyは実際のところ、現地で“受けて”いたのか? 具体的にはどのような評価を得ていたのか?
(2)Dir en greyのメンバーたちは、他の出演者たちとどの程度コミュニケイトしていたのか?
(3)今回のツアーを経て、Dir en greyはどう変わろうとしているのか?
まず(1)に関してだが、あくまで事実に忠実に報告すれば、彼らの演奏中には会場全体がオーディエンスで埋め尽くされているわけではない。最終的には全10組となった出演者のうち、6番手にあたるDir en greyがステージに登場するのは午後5時前後のことだが、客席が本格的に人口過密状態になるのは、もっと日が暮れてからのことだ。が、どこの会場でも場内の随所に彼らのTシャツに身を包んだコアなファンの姿が多数見受けられたこと、彼らの演奏中に席を立ち去ろうとする観客の姿がきわめて少なかった事実はお伝えしておきたい。
また、Dir en greyのライヴ・パフォーマンスが、彼らの音楽に対して予備知識のない観客層をも確実に惹きつけたことは、物販ブースでのCD売上げが連日300枚以上を記録していたという事実にも裏付けられている。実際、この場内セールス実績には、他のどのバンドも遠く及ばない。こうしたさまざまな成果を踏まえながら、彼らの作品のアメリカでの発売元である“WARCON”の代表者は、次のように語っている。
「今回のツアーに参加し、それが実際成功したことにより、Dir en greyは“余分な説明の不要なバンド”になった。つまり、“この夏、Kornと一緒に全米をまわり強烈なインパクトを残したバンド”について、すでに業界内で広い認知が得られているということだ」
また、ひとつ興味深いのは、彼らの演奏中、常にステージの両袖が他の出演者やスタッフたちで込み合っていたということ。ツアー序盤に、共演者の実力や素性を“確認”しようとバンドたちが集まるのは普通だろう。が、多くの共演者たちにとってDir en greyは“観るほどに興味の強まっていくバンド”だったわけである。彼らのパフォーマンスを注視する群衆のなかには、当然ながらKornやデフトーンズ、ストーン・サワーのメンバーたちの姿も“常連”として含まれていた。
10月に初来日を果たす全米でブレイク中の新鋭、フライリーフのメンバーは、「俺たちよりもキャリアのあるDir en greyが自分たちの前に演奏するというのは、正直、大きなプレッシャーでもあった。でも、彼らのタイトな演奏は俺たちにとって大きな刺激になったし、パフォーマンスの部分では影響された自覚もある」とまで言い、また、BULLETS AND OCTANEのメンバーは「Dir en greyのライヴには、これまで味わったことのないインパクトを感じた。そしてすぐに彼らは俺たちにとって“毎晩でも観たいバンド”になった」と語っている。
11月に新作発表を控えているデフトーンズのメンバーからは「英語を母国語とするわけでもないバンドが、こうして米国の強烈なバンドばかりがひしめくツアーへの参戦を決意した事実だけでも敬意を表したい気分だが、実際に彼らの音楽、ライヴは予想していた以上に素晴らしかった」との言葉も得られた。さらに付け加えておくと、ツアー大詰めの9月19日、タンパ公演終了後、楽屋でのパーティーで「Dir en greyに乾杯!」と乾杯の音頭をとったのは、デフトーンズのフロントマン、チノ・モレノだった。
こうした状況自体がそのまま(2)の疑問に対する回答にもなっている気がする。つまり、このツアー中、Dir en greyは“バックステージ・エリアを歩いているだけで、他すべてのバンドから声をかけられる”ような存在だったのである。残念ながら5人の中にネイティヴなイングリッシュ・スピーカーは存在しない。が、同時に、言葉の壁に怯えながらツアー・バスのなかに閉じこもったままでいるメンバーも皆無だったのである。もちろん彼らは、自分たちにとってのフェイヴァリット・バンドのメンバーたちと無意味な世間話を重ねていたわけではない。具体的な記述は控えておくが、いくつかのバンドから「次は一緒にツアーしよう」「Dir en greyの日本ツアーで前座をやらせてくれ」といった申し出があったことも付け加えておきたい。
そして(3)の疑問。これに関しては、これから先、皆さんの目と耳で確かめていただくしかない。実際、5人もまた現在、今回の経験を通じて得た刺激や手応えといったものを確認し、新しいアイディアへと変換しながら創作活動に没頭しているはずだ。11月15日にはニュー・シングル「Agitated Screams of Maggots」の発売と新規国内ツアー開始、さらにその前には<LOUD PARK 06>への出演も控えている彼ら。これまでのどんな瞬間とも違うDir en greyが、そこで同時に“揺るぎない強さ”を誇示してくれるはずである。
文●増田勇一
今回の一件が、あくまでKorn側からのラヴコールによって実現したものであること、そしてツアー参戦当初からDir en greyが他の出演者や現地関係者から強い注目を集めていたことについては、以前にもご報告した。が、ツアー全行程が終了した今、改めて強調しておきたいのは、彼らが“物珍しい奇異なバンド”として目を付けられていたわけではなく、いわゆる“next big thing(次にビッグになるもの))”になり得る存在として熱視線を独占していたという事実だろう。
ところで、多くの読者の興味は、このツアーの興行成績や各公演での演奏曲目の違いなど以上に、おそらく以下の3点に集中しているのではないかと思われる。
(1)Dir en greyは実際のところ、現地で“受けて”いたのか? 具体的にはどのような評価を得ていたのか?
(2)Dir en greyのメンバーたちは、他の出演者たちとどの程度コミュニケイトしていたのか?
(3)今回のツアーを経て、Dir en greyはどう変わろうとしているのか?
まず(1)に関してだが、あくまで事実に忠実に報告すれば、彼らの演奏中には会場全体がオーディエンスで埋め尽くされているわけではない。最終的には全10組となった出演者のうち、6番手にあたるDir en greyがステージに登場するのは午後5時前後のことだが、客席が本格的に人口過密状態になるのは、もっと日が暮れてからのことだ。が、どこの会場でも場内の随所に彼らのTシャツに身を包んだコアなファンの姿が多数見受けられたこと、彼らの演奏中に席を立ち去ろうとする観客の姿がきわめて少なかった事実はお伝えしておきたい。
また、Dir en greyのライヴ・パフォーマンスが、彼らの音楽に対して予備知識のない観客層をも確実に惹きつけたことは、物販ブースでのCD売上げが連日300枚以上を記録していたという事実にも裏付けられている。実際、この場内セールス実績には、他のどのバンドも遠く及ばない。こうしたさまざまな成果を踏まえながら、彼らの作品のアメリカでの発売元である“WARCON”の代表者は、次のように語っている。
「今回のツアーに参加し、それが実際成功したことにより、Dir en greyは“余分な説明の不要なバンド”になった。つまり、“この夏、Kornと一緒に全米をまわり強烈なインパクトを残したバンド”について、すでに業界内で広い認知が得られているということだ」
また、ひとつ興味深いのは、彼らの演奏中、常にステージの両袖が他の出演者やスタッフたちで込み合っていたということ。ツアー序盤に、共演者の実力や素性を“確認”しようとバンドたちが集まるのは普通だろう。が、多くの共演者たちにとってDir en greyは“観るほどに興味の強まっていくバンド”だったわけである。彼らのパフォーマンスを注視する群衆のなかには、当然ながらKornやデフトーンズ、ストーン・サワーのメンバーたちの姿も“常連”として含まれていた。
10月に初来日を果たす全米でブレイク中の新鋭、フライリーフのメンバーは、「俺たちよりもキャリアのあるDir en greyが自分たちの前に演奏するというのは、正直、大きなプレッシャーでもあった。でも、彼らのタイトな演奏は俺たちにとって大きな刺激になったし、パフォーマンスの部分では影響された自覚もある」とまで言い、また、BULLETS AND OCTANEのメンバーは「Dir en greyのライヴには、これまで味わったことのないインパクトを感じた。そしてすぐに彼らは俺たちにとって“毎晩でも観たいバンド”になった」と語っている。
11月に新作発表を控えているデフトーンズのメンバーからは「英語を母国語とするわけでもないバンドが、こうして米国の強烈なバンドばかりがひしめくツアーへの参戦を決意した事実だけでも敬意を表したい気分だが、実際に彼らの音楽、ライヴは予想していた以上に素晴らしかった」との言葉も得られた。さらに付け加えておくと、ツアー大詰めの9月19日、タンパ公演終了後、楽屋でのパーティーで「Dir en greyに乾杯!」と乾杯の音頭をとったのは、デフトーンズのフロントマン、チノ・モレノだった。
こうした状況自体がそのまま(2)の疑問に対する回答にもなっている気がする。つまり、このツアー中、Dir en greyは“バックステージ・エリアを歩いているだけで、他すべてのバンドから声をかけられる”ような存在だったのである。残念ながら5人の中にネイティヴなイングリッシュ・スピーカーは存在しない。が、同時に、言葉の壁に怯えながらツアー・バスのなかに閉じこもったままでいるメンバーも皆無だったのである。もちろん彼らは、自分たちにとってのフェイヴァリット・バンドのメンバーたちと無意味な世間話を重ねていたわけではない。具体的な記述は控えておくが、いくつかのバンドから「次は一緒にツアーしよう」「Dir en greyの日本ツアーで前座をやらせてくれ」といった申し出があったことも付け加えておきたい。
そして(3)の疑問。これに関しては、これから先、皆さんの目と耳で確かめていただくしかない。実際、5人もまた現在、今回の経験を通じて得た刺激や手応えといったものを確認し、新しいアイディアへと変換しながら創作活動に没頭しているはずだ。11月15日にはニュー・シングル「Agitated Screams of Maggots」の発売と新規国内ツアー開始、さらにその前には<LOUD PARK 06>への出演も控えている彼ら。これまでのどんな瞬間とも違うDir en greyが、そこで同時に“揺るぎない強さ”を誇示してくれるはずである。
文●増田勇一
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