<インタヴュー前半 スタート>

――現在3枚までリリースされましたが、1年間に7枚というのは、制作的に可能な数字なんですか? 浅倉さんの制作スピードには定評がありますが。
浅倉大介(以下、浅倉):僕は最新のテクノロジーを最大限活かして音楽を作っていこうと思っているんですけど、今回の7枚リリースを可能にするのもテクノロジーの恩恵が大きいですね。今まではアルバムは1年とか、長ければ3年に1枚くらいのタームが普通でしたが、そういう枠を外して、もっと面白くリリースが続けられたらなあと思って。
――なぜ今年そういうことをやろうと思ったんですか?
浅倉:今年の目標は、メールマガジンとか月刊雑誌みたいに音楽を発信するということなんです。作る手法も変わってくるし、聴く方も連続の楽しみがあるかなと思って。雑誌には特集、連載、コラム、編集後記とかいろいろなコーナーがありますよね。そういう気軽さがアルバムにあれば面白いかなって。だから、アルバム1枚が雑誌1冊みたいなイメージですね。内容的にバラエティに富んでいるでしょ。
――アルバムのイメージカラーが7色になっているわけですが、色によって内容が左右されますよね。
浅倉:それが一番面白いところですね。やりたい放題やるんじゃなくて、統一したイメージカラーがあって、それにインスパイアされたものを作っていきます。僕の場合インストがメインで歌詞がないぶん、いろいろと音から想像してもらえる楽しみがあると思うんです。今、テクノロジーが発達した世の中でファンタジーの部分が注目されています。夢を見たり想像したりする部分ですね。そういうのを僕なりに虹というキーワードに置き換えて、アルバムの中でメッセージを伝えられたらいいなと思っています。
――アルバムの色は、虹の順番になっているわけですよね。
浅倉:暗い方からの順番になっています。次第に色が明るく熱くなっていきます。
――これらのアルバム作りで一番大変なこと、楽しいことは何ですか?
浅倉:物理的な時間の縛りが確かに大変ですね。でもそれ以上に楽しいのは、“音に色がある”ということなんです。アルバムを作るごとに僕の中でそれが定義されていくんです。これまでは音の温度は感じたことはあるんですが、今回のように、音に色があるということが見えてくるっていうのは大発見でしたね。
――色から喚起される音っていうのは、色そのものからなんですか、それともそういう色を持つ物体からなんですか?
浅倉:それは何でもありですね。色のキーワードを歌詞で言っちゃうと、すごく簡単なんです。それはできるだけ避けて、音色とインストで表現するっていうのは、かなり難関ですね。
――1枚目の紫、2枚目の藍からはどんなイメージが湧きましたか?
浅倉:どちらも暗い寒色なんですよね。特に紫を連想するものって思ったときに、身の回りには紫って案外ないんです。この色を人間として感じる瞬間っていつなんだろうなと思ったときに、僕の中でピントが合ったのは、夜が明ける瞬間の空の色だったんです。真っ暗なのがちょっと明るくなって、ほんの数秒でオレンジ色になっちゃうんですけど、その一瞬だけ紫色になる空の色は、すべてがリセットされるような感覚になりました。“限りなく透明に近いんだけど、よく見ると紫が入っているクリスタル”みたいなイメージを最初に作って、その音色を探していくという作業になりました。
――紫からは具体的にどんな音が聞こえてきたんですか?