真正面から将来を見つめる気まじめパンクロッカー
真正面から将来を見つめる気まじめパンクロッカー 西海岸パンクのFace To Faceはいくつかのコンピレーション盤に登場し、4枚のスタジオアルバムと2枚のEP、1巻のホームビデオを(自身のレーベルと以前所属していたA&Mから)リリースしてきたが、'91年のインディーズデヴュー以来50万枚以上を売り上げている。 Face To Faceは強烈な南カリフォルニア旋風によって、業界に留まってこられたが、これは幸運なことであった。なぜなら彼らは音楽産業という厳しい世界で自分のやり方で通す方向性を貫くために、大手レーベルとの契約から撤退したからである。 OffspringやBlink 182と同じオレンジカウンティのシーンで育ったFace To Faceは、巨大なパンクの商業主義(Iggy Popの「Lust For Life」やBuzzcocksの「What Do I Get?」が車のコマーシャルに使われるなんて、いったいどういうつもりなんだ?)が、このジャンルの社会的なインパクトに疑問を投げ掛けている状況で、立ちすくんでしまった。 だが、バンドは自分たちのやり方を変えず、そうしたトレンドがラジオや音楽テレビ局で現在ますます猛威をふるっているにもかかわらず、根源的なパンクの精神に忠実であろうとした。 「パンクはとっても正直な音楽だ。我々は自分たちに影響を及ぼす物事について曲を書いている」とリードシンガーでギタリストのTrever Keithは、F2Fの最新アルバム『Ignorance Is Bliss』と『Reactionary』について語っている。 「我々の音楽は非常に親しみやすく聞きやすいものだと思われている。だが、単にスケートボードに合うクールな音楽ではなく、もっと高いレベルでの聞き込み方もできるんだ」 |
LAUNCH:A&Mを離れて最初のアルバム『Ignorance Is Bliss』とそれまでのアルバムの違いはどこにあるのでしょう? TREVER: 制作面から言えばかなりの違いがあった。レコーディングには4カ月をかけたし、これまでならサウンドを固めてから全曲を一気にとってたんだけど、今回は一度に1曲づつ録音していったんだ。素晴らしい友人でもある優れたミキサーに恵まれたからね。彼は新しいサウンドを作ることに極めてオープンな考えを持っていて、我々は時間をかけて色々な演奏にトライしたのさ。30種類の異なるギターアンプを使い、4種類のドラムセットを使い分けた。音響的には大きく違っているし、ソングライティングは自分たちの気持ちにもっと直結して、それを表現したものになっている。このレコードの曲を書くときには、多くの精神探求を行なったので、ずっと自己表現的になったと言えるね。 LAUNCH:メジャーレーベルでの経験について教えてください。 TREVER: 大手レーベルでの経験全般について言えば、大部分はかなりクールなものだった。すべてが望みどおりにいったとは思っていないけどね。我々はインディーズでスタートし、ファーストアルバムを出してからは数多くのツアーをこなした。それはいい経験だったけど、同じメジャーに残ることにはならなかった。その会社はもう存在していないからね。我々が最初に所属した小さなメジャーレーベルは、もっと大きな会社に吸収されてしまったのさ。そこに待っていたのは強大な官僚主義で、A地点からB地点へ行くのに途中のステップが多すぎて大変だったよ。我々はレコードをリリースするたびにより大きな成功を収めていたのに、あまり売れてないとか、以前の成功を上回っていないとか思われていたんだ。誰でも、特にパンクの連中ならメジャーをこきおろすのを待ち切れずにいるのさ。確かに我々の状況ではうまく機能しなかったし、今の環境の方がずっと居心地がいいけれど、多くのバンドにとってメジャーレーベルはうまく機能することは明らかだ。メジャーの悪口を言う連中はたいてい、絞り取られて使いすてられたやつらだけど、それは充分に予想できる事態なんだ。 LAUNCH:Face To Faceはどんな音楽シーンから登場したのですか? TREVER: 最初はカリフォルニア州リヴァーサイドのシーンだよ。我々はそこよりもっと砂漠の方にいったあたりの出身なのさ。リヴァーサイド、バーナーディノ、オレンジカウンティなんかで演奏した。約6年間ずっとバンドとして毎週末ローカルな場所で演奏していたわけじゃない。全米ツアーだってやっているんだ。 LAUNCH:Face To Faceの音楽について自分たちではどう考えていますか? TREVER: バンドが経験してきた時代について、もっと説明する必要があるだろう。我々は4枚目のスタジオアルバムをリリースしようとしているし、EPもライヴ作もホームビデオも発売した。我々の音楽に一貫しているのは、非常に正直な音楽だということだ。我々は自分たちに影響を及ぼすことについて曲を書いている。我々の音楽は本当にとっつきやすく、聞きやすい音楽だと思われている。だけど、ずっと本質的な音楽でもあるんだ。単なる「スケートボードにぴったりのクールな音楽」なんてものじゃなく、それ以上のレベルで聴き込むことができるのさ。 LAUNCH:批評家たちの扱いはどうですか? TREVER: これまでに我々が批評家の絶賛や酷評を少しでも受けたことがあるとは思わないね。メジャーな雑誌に載った数少ないレヴューは、すごくネガティヴなものだった。「またひとつ南カリフォルニアからあの手のバンドが出てきた」みたいに片付けられるわけさ。少なくとも今度のアルバムに関するかぎり、より多くの批評家が聞いてくれると思う。そのためにずいぶん努力しているんだからね。 LAUNCH:ファンとのコミュニケーションはどうやっていますか? TREVER: 最良で最も効果的な方法は、やっぱりネットを使うことだね。我々のウェブサイトは“facetofacemusic.com”だ。そこには伝言板があって、週に2-3度チェックしている。けっこう返事してるけど、遅くなってしまう。匿名で返事を書かないと、個人的なメッセージがいっぱい来ちゃうしね。「いとこの誕生日パーティで演奏してくれませんか?」なんて書き込みもあるんだ。最も古典的なコミュニケーション手段はDMのリストだ。ファンレターのひとつひとつに個人的に応えることはできないけど、住所が名簿に登録されて、特別なプロモーションなんかの郵便が届くことになっている。今度のアルバム『Ignorance Is Bliss』は、スタジオに入ってから曲を練り上げ、もう一度スタジオで本番の録音をするという方法で作った最初のレコードなんだけど、デモを作っている段階でMP3ファイルにしてウェブに載せてもいいと思える仕上がりのレコーディングがいくつかできたんだ。だけど、アルバムが出るずっと前だったから、早すぎるってことになったのさ。それにアルバム全体をうまく代表している曲でもなかったからね。でも、アルバム発売の1カ月前にはサイトにデータを上げたよ。 LAUNCH:最近のFace To Faceの曲で際だっているのはどのあたりですか? TREVER: 我々は本当に自分自身のサウンドを探れるようになったと思うんだけど、自分たちのサウンドだと思えるのは「Burden」という曲だね。他の曲と同じような速いビートの作品だけど、もっとエモーショナルなタイプの歌なんだ。感情の伝達に成功した作品と言えるね。曲作りに取り掛かるときには、何らかの感情を伝える曲を作ろうということだけを念頭に置いているのさ。僕の人生にはそんな感じのレコードがいくつかある。「Burden」や「Heart Of Hearts」は、それを達成した作品だと思う。 LAUNCH:OffspringやBlink 182といったバンドの人気は、あなたがたの音楽をアメリカの大衆全体に届けるのに役立ちましたか? TREVER: Offspringの『Smash』がプラチナ級のビッグヒットになったときには、我々にも大きな助けになるかもしれないと思えた瞬間もあったけどね。あの大ヒットでアメリカ人の視界が照らされ、同じようなバンドをもっとチェックしようと視野が広がるだろうと期待したのさ。でも、そんなことは起きなかった。アメリカ人は愚かにもラジオが聴かせてくれるものに満足し、他のバンドを探してみようという気持ちにはならなかたんだ。まったく役にはたたなかったけど、たぶん良いことだったんだと思う。ラジオ局がメロディックなパンクロックにした仕打ちは、彼らのサウンドを均質化して、マウンテンデューのコマーシャルにぴったりのちょっとした効果音にしてしまったことだ。そんな曲はまったく聴くに値しないよ。でも、シーンはまだ存在していて、バンドは出かけていって買うだけの価値のある本質的な優れたレコードを作っているんだ。 LAUNCH:もし選べるのなら、どのバンドに入ってみたいですか? 例えば20年前なら。 TREVER: 20年前?、たぶんKissだね。あのバンドに参加できたら最高だろう。'70年代後半から'80年代にかけてなら、Cheap Trick、Ted Nugent, Led Zeppelinといったところかな。子供のころに好きだっただけで、まだよくわかってなかったからね。 LAUNCH:最も軽蔑すべき音楽業界のトレンドは何でしょう? TREVER: 嫌なのはオルタナティヴのラジオで聴かれる水で薄めたようなサウンドだ。オルタナ局が最初に登場したときには、何物かに対するオルタナティヴだったが、今ではがらくた同然だ。最近はオルタナ局にチューニングすることさえないね。むかつくからだ。 LAUNCH:今、ハマっているのはどんなことですか? TREVER: アンダーグラウンドの動きでは、ファンジンやemoタイプのバンドがいいね。The Get Up KidsとかJets To Brazilなんてあたりはホントに素晴らしい。RadioheadやBjorkも好きだし、Smashing Pumpkinsの大ファンなんだ。僕が気に入っているのはそんなところかな。 LAUNCH:あなたのキャリアにおいて最もスマートだった行動は何だと思いますか? TREVER: A&Mにレコード契約の解消を申し出て、向こうから切られる前にイエスと言わせたことだね。二番目に賢明だったのは、Beyond Musicと契約したことさ。 LAUNCH:最も愚かな行動はどうでしょう? TREVER: Victory Recordsと契約して『Over It』を出したことだ。Offspringの前座をやったのもホントに馬鹿馬鹿しかった。 LAUNCH:キャリアの面でまねしてもかまわないと思えるバンドはありますか? TREVER: Smashing Pumpkinsのようなバンドならまねしてもいいと思うね。バンドとして彼らが経験してきたすべての段階に敬意を抱いているし、これからも抱き続けるだろう。同じような気持ちをRadioheadにも感じている。彼らはこの10年間で最も驚異的なアルバムを作り上げたと言える地点まで到達したよ。 LAUNCH:Face To Faceのライヴにファンは何を期待できるのでしょう? TREVER: 大音量が楽しめるだろう。我々のショウは信じられないくらいエネルギッシュでパワフルなものだ。我々はライヴで演奏するのが心底好きだし、それはプレイにも現われていると思う。我々の馬鹿げたユーモアのセンスはほどほどにしておいて、生のエネルギーとパワーをたっぷりと効かせたいね。 LAUNCH:タトゥーをたくさん彫ってらっしゃいますが、いくつかについて説明してもらえますか? TREVER: 伝統的なスタイルのタトゥーをたくさん入れている。Sacred HeartとかLady Luckとかね。タトゥーは愚かな行為だ。子供たちはあんながらくたをひとつでも入れちゃいけないよ。70歳になったらいったいどうするつもりだい? LAUNCH:気分を害するようなバンドに対する誤解はありますか? TREVER: 我々をいらつかせるバンドに対する最も大きな誤解は、外部の人間が我々の実績を過小評価しているという側面だね。「どうやってあんなにチケットをさばけるんだ?」って言われるけど、実際に売っているんだ。我々の全カタログを合わせると50万枚以上のレコードを売っているということを認識していない人が多いのさ。そのあたりが我々に関する最も大きな誤解だろうな。 LAUNCH:Face To Faceは言葉の本来の意味で成功したと考えていますか? TREVER: 「成功」の意味は常にバンドによって再定義され続けていると思う。幅広い意味での成功として使うのなら、我々はすでに成功を収めたと言えるだろう。日雇いの仕事で働く必要もなくなったし、ツアーをしてアルバムを作れば請求書を払うことができる。ホントに成功したんだと思うよ。レコードがあまり売れなくたって、内容を確信しているから平気なのさ。レベルは常に変化している。新たな高みに登るたびに、新しい地平線が開けてくるんだ。小さな成功を積み重ね続けられるかぎり、そして次のレベルを目指して闘い続けるかぎり、我々はあらゆる面で成功したバンドであり続けるだろう。 by Dave Dimartino |