――まずはミュージシャン、森 広隆についてお訊きしたいのですが、音楽を意識したキッカケって何ですか?
森: 実はゲーム音楽なんです。ファミコンだったり、ゲームセンターにあるようなゲームだったり。
――テレビやラジオの音楽番組で流れている、いわゆる“歌モノ”よりも?
森: そうですね。ベストテンとかは観てましたけど、そんなに意識してなかった。
――でも、ゲーム音楽ってデジタルだったり、打ち込みだったりじゃないですか。今の森さんと結びつかない……。
森: 今思うと、そのデジタル音の裏にある“生”っぽさを感じ取っていたのかなってすごく思うんですよね。とはいえ、子供のころは単純に聴いてカッコいい!って思ってただけなんですけど……。で、やっぱり邦楽の歌モノなんかはちらほら聴くようになるんですね。でもその当時歌モノって8ビートが主流でカッコいいって思えなかったんです。ゲーム音楽やBGMに使われるものってのは16ビートが普通に出てきてカッコよくて。だからカッコいいと思うものには歌がついてなくて、歌がついているものはメロディがきれいでもなかなかカッコいいとは思えなかったんです。それから後に上京してきて、初めてジャミロクワイを聴いたんですよ。それで16ビートでちゃんと歌ってる人がいて、ああ、ちゃんとカッコいいのってあるんだなって。そこからスティーヴィー・ワンダーとかに遡っていきましたね。
――なるほど。では、新作のミニアルバム『CYCLONE』についてお訊きしたいのですが、このアルバム、1~2曲目の流れや、掛け声が収録されていたりとライヴっぽいですよね。森さん自身では、このアルバムのテーマ、コンセプトはあったんですか?
森: 1個1個の曲を作るときはリリースやアルバムのことと関係ないから、曲それぞれの世界観やそこで表わしたいことのベストを尽くして作ってるんで、アルバム全体としては、自分を通って出たってこと以外はないかな。多少ストックがあるオリジナル曲や、カヴァーやろうって決めてからの選曲で、アルバムではどうしよう?ってなったときに、“ファンキーなアルバムにしたい”ってくらいですね。
――“6曲入のミニアルバムを出すから曲作る”っていうよりは、今回の“器”がこうだったと。
森: そうですね。基本的にいつもそうだし、そうあるべきだと思うんです。最初に精神的な動機……“この曲をやりたい!”って思って作ったものがエネルギーをもってるんじゃないかって。売ることを前提に作るのはおもしろいと思うんですけど、“これが森 広隆の作品だ”ってのは、ここ(心)から出て行くものであるべきだと思うから。
――タイトルの『CYCLONE』は、フェンダーのギター、サイクロンからですよね。サイクロンってこれ(ジャケット写真にちろっと載っている)ですか?
森: そうです。このギター、僕自身が買った2本目なんですよ。それですごく嬉しくていろいろ触って弾いているうちに出来た曲がタイトル曲なんです。
――サイクロンのどこに惹かれたのですか?
森: 他のギターに比べてシンプルなんですよ。ヴォリュームもトーンも1個ずつ、スイッチもシンプル。僕、使わない部分があるのってイヤなんですよ(笑)。シンプルなほうが好きで。それにストラトよりもこのサイクロン、ちょっと小さめなんですね。僕、手が小さいから弾きやすくて。いろんな意味で自分にフィットしてたんですよね。
――James Brownの「MINE ALL MINE」をカヴァーしてますが、これを選んだ理由は?
森: 全体的にファンキーなアルバムにしたいってがあったので。で、JBでもほかにいっぱい好きな曲があるんだけど、JBの曲って“……これ曲か?”ってよく分からないのあったりするでしょ(笑)。「SEX MACHINE」なんて曲の面白みよりもJBのキャラがあってこその曲ですよね。そんななかでも「MINE~」は曲としての面白みがあったし、JBのよさ、自分の好みがバランスよくハマった曲でした。
――森 広隆ってミュージシャンは、一音一音、一言一言の粒がはっきりと露出して、リアルでいいと思うのですが、森さん自身が思う自分の強みってどこだと思いますか?
森: 人と比べて、…ですかね? ん~自分としては、オリジナリティは自分自身をまっすぐ見つめればオリジナルになると思うんですよ。だから人と違うことをしようって自分の外にあるものを基準にして行動しているかぎりは、本当のオリジナルにはならないから。
――なるほど。ソングライターでもあり、ギタリストでもありますが、今、森さんは“歌”な感じですね。
森:そうですね。単純に歌が一番伝わると思うんです、どんな楽器で何するよりも。歌のための楽器の演奏って思ってはいます。最近、楽器を弾くにしても、歌えばいいんだって思うんですよ。そう思ってからギターも面白く、楽に弾けるようになりましたね。リズム楽器にしてもそうだと思ってます。