――歌詞は、3rdまでは全て英語、4thで半分日本語、そして5thで全て日本語になったわけですが、このあたりの言葉のコダワリは?
磯部:日本語で歌ったらどうなるのか聴いてみたいと言ってくれる人が増えてきたので、ちょっとやってみようかなと。最初は難しく考えすぎて難解な歌詞になったけど、最近では、何語でもいいやっていう風になってきて、音に乗って気持ちがよければいいと。音楽が聴きやすいとか面白いとかが重要で、そこに乗せる歌詞が曲によって意味が違うとか、違うように聞えてしまう言葉などを入れることが増えてきた。今はこれでいいかなと。
――日本語の方でも自由度が増したと。
磯部:日本語の方が早いし面白みも出てきたから、いっそのこと全部日本語にしちゃおうかってね。
平林:僕としても自然な変わり方なんで納得してやっています。
――新アルバムは不可思議な歌詞が並んでいますね。これはどうやって発想してるんですか。
磯部:(笑)。小さな頃からのクセなんです。鼻くそとか汚い言葉で替え歌を作ったり全然違うメロディで歌ったり、そういうのが面白くて。その頃の感覚に近いです。面白いなーっていう子供心ですね。歌詞で誰かを救うとか物語性を持たせるなどの意味を求めることはしないで、曲の核心さえわかっていれば、言葉がいっぱい出てくるんですよ。
――語彙の多さに感服します。それと不思議な言葉遣いが出てきますね。“過ぎる”を“よぎる”と読ませたり。
磯部:“すぎる”だと分かりやすすぎるんですよ。ここは“よぎる”と歌いたい。それに“よ”の方が声が出やすいし聴きやすい。その言葉が分かった時にググッときまくるみたいなこともあります。その言葉一つの意味の分からなさが、自分のシチュエーションと合ってその人の経験とかぶる時に、その曲を理解できたりする瞬間が好きですから。
――最初に作った時と完成形ではかなり変わるんですか?
磯部:どうしても2、3行が見えないとか、どうしてこの曲はサビっていう展開をしたくないのかとか悩む時もあります。そういう時は考えすぎてもしょうがないんで、風にまかせてってカンジですね。気候が変わると気分も変わりますから、そういう時にブワーっと言葉が出てきたりしますね。“あ、見つかった”っていうような。
――このアルバムを通して聴いていると、4曲目の「Just a beginning」でちょっとホッとするんですよね。意味が分かる歌詞なんで。
磯部:僕の計算通りです(笑)。これは平林君の曲ですが、僕の作る曲のようにウニャウニャしてないし、僕が作ったら説得力がありすぎるから印象が霞んじゃうんですよ。だからもっと流れてホッとするようなカンジを出そうと。ああ、やっとまともな曲が来た、みたいな。
平林:曲順とかは別になかったです。ただ日本語の曲を作りたかっただけで。
磯部:おかしい曲で挟んでますもんね。8曲目の「カナリア」のところに入れたら、真面目なのが続いちゃうからイカンなぁと。
――磯部さんの作る歌詞は自動筆記ではなく組み立てがあるんですね。「煙で奴論」の歌詞は英語っぽい。
磯部:僕、英語の方がいいんです。英語の方がメロディに乗っかりやすいし歌う時に威圧感がない。今回もそういう曲があった方がいいかなと。最初はめちゃくちゃ歌ってて、それに無理やり言葉をはめていくのが面白いかなと。じっくり作っちゃうと“手裏剣底尽きすぐさまオーダー”って歌詞にはならないんです。デモを何回も聴いて言葉を当てはめていったんです。どんどん忍者になっていくから、もう忍者に絞って作ろうと思って。
――アレンジは緻密ですね。このギターを弾きながら歌うのって、かなりタイヘンだと思いますが。
磯部:ですよね。この歌とギターのバラバラ感は自分でも挑戦なんですけど、ギターを弾きながら自分の歌のクセで作ってますから、バラバラに弾くのは簡単なんですよ。自分の手クセみたいなものがあったり、自分で考えたコード感が好きなんで、人に教えるとすごく難しいんですが、僕は何度も練習を重ねて自分のものにしちゃってますから。
平林:前のアルバムのレコーディングの時に相当練習しましたね。彼の弾くようにはすぐには弾けないんです。自分の中に全然ないフレーズだったんで。でもできたものを聴いてみるとすごく面白い。普通じゃないっていうか。
――ライヴで演奏を聴くのが楽しみです。
磯部:ライヴでは全然弾いてなかったりしてね。全部パワーコードだけになってたりして。
平林:チョー簡単になってたりね。
磯部:せこー! 取材・文●森本智